2016
12.16

「あの日のように抱きしめて」

あの日のように

1945年、ベルリン。
強制収容所から奇跡的に生きのびたネリーは、しかし、顔に大きな傷を負ってしまう。
再生手術を受け、必死に夫ジョニーを探し出そうとする彼女は、ついに彼と再会を果たすのだが・・・。

彼は自分の妻ネリーだとは気づかず、
そればかりか、収容所で亡くなった妻になりまして遺産をせしめようと持ち掛けるのだった・・・。

クリスティアン・ペッツォルト監督とニーナ・ホス&ロナルト・ツェアフェルト出演作品
『東ベルリンから来た女』も良かったけれど、本作も観終わった後もいろいろ考えてしまう・・・・後引く作品でした。

収容所での耐えがたい日々をなんとか生き抜き、
ようやく再会した夫は、(手術後の)彼女が妻であると気づかない!!
以前の彼女の顔は写真での横顔くらいしか映らないので、どのくらい元の顔に戻っているのか想像するしかないのですが、
いくらなんでも・・・声とか、姿、立ち振る舞い、「もしかして?」って思わないだろうか。
いったい、二人はどのくらいの月日結婚してたの
しかも、似てるからと言って提案してきたのが元妻に化けて、(彼女の財産を)もらおうということだなんて!!
けれどネリーはそんな夫の提案を受け入れ“自分本人に成りすます”ことに。

こうやって言葉で書くとものすごーーく無理があるように思える(そりゃないよーーって)この設定、
意外なほど私は気になりませんでした。
術後のネリーの痛々しい姿、しばらくは口をきくこともできなかったし、あのおどおどとした歩き方!(ジョニーも歩き方が違うって言ってましたよね)
華やかだっただろう戦前の彼女の容姿を想像すると、別人のようになっていたかもしれない。
ジョニーにしてみれば(彼女自身が)言い出さないので、妻だとは思わなかっただろうと思うし、
戦争は終わったけれど、いまだ荒れた街の様子、他人のことなど気にしてはいられない・・・・そんなムードも感じられました。

でも、徐々に二人の距離が縮まり、彼女がネリーの筆跡を見事に真似できたことや(本人ですから!)
華やかな服を着、パリで買った靴を履いた彼女の姿に、「彼、気づくのでは?」とか、「いつ、彼女は打ち明けるんだろうか」
と、ドキドキし、
その一方、夫ジョニーは本当に彼女を裏切っていたのだろうか、愛してはいなかったんだろうか・・・、と、それがもう気になって、気になって。
ジョニー役のロナルト・ツェアフェルト、
『東ベルリンから来た女』の時も思ったけれどイイ人オーラのある男優さんなので(しかも私は男に甘い!)悪いヤツに思えない~。
何か理由があったのでは?とか、いや、彼女のメモや靴を取っておいてあるくらいだもの!愛していたに違いない・・・などといろいろ想像するのですが、ほとんど語らぬ彼の心のうち・・・、読み切れない。
救うことができなかった妻への苦い気持ち、過去にしてしまいたいという思いから・・・生きていることを信じたくない思いだった?
それとも・・・、あぁ~、どこまでも想像がまわる


夫に(妻だと気づいてもらえず)しかも、聞きたくもなかった企ての共犯者になってしまった・・・ネリーの心中の複雑さ。
心のうちはわからないけれど、それでも彼のそばにいたい、
もしかしたら(妻だと気づいてもらえなくても)今の自分に惹かれて欲しい・・・そんな想いも芽生えていたのでは?と彼女の心中もいろいろ思うばかり。


戦争の悲惨なシーンや、収容所の恐ろしい日々が、はっきりと描かれることはありませんでしたが、
収容所での出来事を話した時のネリーの表情、死者を忘れることができず生きる道を見失ってしまった友人レネ、
そして、なにより、戻ってはこないネリーと夫との日々。
愛し合っていたはずの二人が、裏切りや後悔に震え、悲しさに耐えながら生きていかなくてはならない・・・、戦争の痛みを強く感じました。

ラストシーンの“スピーク ロウ”
歌い上げるネリーの姿が目に焼きついています。呆然としたジョニーの表情も・・・・。

愛する夫との日々を夢見て(新しい顔を選ばずに)自分自身であることを選んだネリーが、最後にひとり出てゆくシーンは寂しいはずなのに・・・・・。
毅然とした彼女の表情に力強いものを感じました
原題の『Phoenix』不死鳥のように。

ニーナ・ホス、冷たく見える表情の下に、熱くて強いものを感じさせる素晴らしい女優さんです。
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アウシュヴィッツから生還した妻と, 変貌した妻に気づかない夫。 奇しくも再会を果たしたふたりは, 再び愛を取り戻すことができるのか――。 これは,めっちゃ好きな設定の物語・・・・。ということでDVDリリースとともに鑑賞。 1945年6月ベルリン。顔に大怪我を負いながらも,強制収容所から奇跡的な生還を
あの日のように抱きしめて dot 虎猫の気まぐれシネマ日記dot 2016.12.18 22:08
コメント
瞳さん、こんにちは!
瞳さんは、違和感あまり感じずに見れたのね。
私は、ちょっぴり気になっちゃったかも。

でも、そうそう、あの男優さんが、良い人オーラが出てて、悪人に見えないってのがミソだよね。
これが別の俳優さんだったら、印象違っていたかもしれない。

wowwowの感想も見せて頂きましたよ^^
ブリッジ~ 放映されたのね。
そうそう、すっごく寒い雰囲気が画面から感じられたわ。

>ソ連のスパイを演じたマーク・ライアンスが素晴らしい!!
私も思ったー。いかにも本当に実在したスパイさんって感じがしました。
latifadot 2016.12.17 16:11 | 編集
こんばんは!

これ,なんともいえない味わいで何度も見返した作品です。
DVD買ったので・・・・

そうですね・・・収容所の体験や顔を潰されるほどの恐怖を味わうと
雰囲気や仕草は別人になってしまう・・・ということ確かにあるかもしれませんね。
夫役の俳優さんは目じりが優しそうで見るからに善人顔なので
本当に妻を裏切ったのかしらと最後まで気になってしまいましたが
やはり鬼畜な裏切りぶり・・・・あの時代に生き抜くためには
ある程度は仕方なかったのでしょうか・・・それにしても。

いろんな切り口からホロコーストを描いてくれる作品が毎年出ますが
この作品もとても印象に残りました。
ななdot 2016.12.18 22:07 | 編集
こんばんは。
実は私もlatifaさんと同じく、違和感あったんですよ。
今、自分のブログ見たら、「どうよ、この夫のボケぶり?」とか、かなりひどいこと書いてます(汗)

でも瞳さんの感想を読んで、確かに戦争によって、人格も破壊されて別人のようになってしまうことってあるかも、と納得しました。
日本の戦争映画だと、だいたい夫婦愛は美しいですが、現実にはそんな綺麗事ではすまなかったと思えます。

wowowの感想も見ました。
「ブリッジ オブ スパイ」のトム・ハンクスの奥さんの50年代ファッションも素敵でした。
ブロンソン、なつかし〜。
私の世代だとやっぱり「う〜ん、マンダム」ですね(笑)

tontondot 2016.12.19 18:45 | 編集
>latifaさん

こんばんは。
私ね、映画の雰囲気に弱いので・・・気にならなかったのかも(笑)

>これが別の俳優さんだったら、印象違っていたかもしれない
アルアル~!!
もっとクセのある男優さんだったらね、全然別の印象を受けたかもしれないよね。

「ブリッジ・オブ・スパイ」
トムさんが立派なコート取り上げられちゃって・・・寒そうでしたね(>_<)
風邪ひくぞーーって思いながら見てました(苦笑)

マーク・ライアンズさんの存在感、全然派手でも主張するタイプでもなく、淡々としてたけど・・・リアリティありましたよね。
dot 2016.12.19 20:42 | 編集
>ななさん

こんばんは。
DVD買ったんですね~~♪
私も検討中です。
最後の「スピーク・ロウ」が素晴らしくて・・・また観たいです。
再見したらもっと細かい部分とかも見えてくるかしらとも思うし。

>あの時代に生き抜くためには
ある程度は仕方なかったのでしょうか・

自分の身を守るために裏切りもやむを得なかった・・のかもしれませんよね。
悲しすぎるけど(>_<)

二人の距離がだんだんと縮まっていく・・・こういうシーンの見せ方もミステリアスで、とても惹きつけられました。

直接、はっきりと戦争シーンがあるわけではないけれど、しみじみ痛みが伝わってくる・・・作品でしたね。
dot 2016.12.19 21:05 | 編集
>tontonさん

>「どうよ、この夫のボケぶり?」とか、かなりひどいこと書いてます(汗)

おお、ご覧になってたんですね。
速攻そちらに行って感想読んできましたよ~♪
男脳・・!なるほど~!!って思いました。

>現実にはそんな綺麗事ではすまなかったと思えます。

そうなんでしょうね、きっと(>_<)
裏切ったり、裏切られたり・・。
保身のためにいろいろなことが行われた・・んだと思いますね。

>「ブリッジ オブ スパイ」のトム・ハンクスの奥さんの50年代ファッションも

あらっ・・・私ったら、そこはチェックできてませんでしたよ。
奥さんのためのマーマレード、どこで買うんだろう?って思いましたけど(笑)

ブロンソン、懐かしいですよね~。
そうそう、絶対「マンダム~」です(笑)男子はみんなやってましたよね!(^^)!
dot 2016.12.19 21:12 | 編集
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