2013
09.11

「愛 アムール」

愛アムール


「今夜の君は、きれいだったよ」
夫は妻に、いつものように語りかけた。

夫ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティ二ャン)と妻アンヌ(エマニュエル・リヴァ)。パリ都心部の風格あるアパルトマンに暮らす彼らは、ともに音楽家の老夫妻。その日、ふたりはアンヌの愛弟子のピアニスト、アレクサンドル(アレクサンドル・タロー)の演奏会へ赴き、満ちたりた一夜を過ごしたのだった。

翌日、いつものように朝食を摂っている最中、アンヌに小さな異変が起こる。突然、人形のように動きを止めた彼女の症状は、病による発作であることが判明。手術を受けるも失敗に終わり、アンヌの体は不自由に。医者嫌いの彼女が発した「二度と病院に戻さないで」との切なる願いを聞き入れ、車椅子生活となった妻と、夫は自宅でともに暮らすことを決意する。             

                             オフィシャルサイトより


演奏会、客席に座る人々の映像から始まった本作、
これだけ大勢の人々が映った映像の中から、決して派手でも目立っていたわけでもない、ジョルジュ、アンヌ夫妻の姿を目がすんなりと捕えてしまう不思議さ。

ともに音楽家であり、愛し合い、満ち足りた生活を送る二人。
だが、妻アンヌが突然病に倒れ、病院に戻されることを恐れる妻のために、ジョルジュは自分の手で介護をすることを決意する・・・。


突然


突然、何の声にも呼びかけにも全く反応しなくなったアンヌわけも分からず、必死で呼びかけるジョルジュ。
このシーン、なんて怖かったことでしょう。

この時のアンヌの表情が、重度の認知症を患っている義母ととてもよく似ていて
あまりにショックだったので、このあとの展開に自分自身の体験や感情が入り乱れてしまいました。

自分自身も高齢の身、時折足を引きづるような様子を見せるジョルジュの姿に、老いた身で妻の介護をする難しさを感じましたが、
それ以上に感じたのは、娘すらも拒絶するかのような・・・、妻への想い、
それはもしかしたら自分たち2人だけの生活を脅かされたくないという思いだったのでしょうか・・。

どんどんと病気が進んでいく妻の姿をほかの者には見せない(妻はそれを望んでいないはず)
自分だけがそれを受け止めていけばいい・・、そういう思いなのでしょうか。

冒頭、音楽会から戻ったジョルジュは、妻に「今夜の君はきれいだったよ」と声をかけましたね。
そこには、まるでいまだに一人の女性として妻を愛する男性の想いを感じました。
失礼ながらこのくらいのお年になって・・・ずっと一緒に暮らして来たら、夫と妻というよりも・・互いに家族のひとり、子どもの父親、母親、そういった関係になっていることが多いと思うのですが・・・、2人は違っていたのでしょう。

アンヌのつぶやきに答えてジョルジュが歌いかける「アビニヨンの橋の上で」や
昔むかしの思い出話・・・、

全編ほぼアパートの中だけが舞台、そこで紡がれてゆく・・・、一種強烈な愛の物語だと感じました。

ですが、その愛が時折あまりにも利己的にも感じられて・・娘さんが会いにきても鍵をかけてしまうとか、
あまりにもすべて自分で背負っていこうとするところとか・・・不安で息苦しくて
ジョルジュがアンヌにとったあの行為も、あまりにも突然で茫然としてしまいました。


そんなショックを与えておきながら、最後はあんなに穏やかな(「コートは着ていかないの?」の言葉に思わず涙が・・・)二人の姿を描いて見せる監督、ずるい~


「素晴らしいわ」
「何が?」
「人生よ、かくも長きー」

食卓の上で、まだ食事をしていたジョルジュをせかしてアルバムを持ってこさせたアンヌが、
つぶやいたこの言葉。
こんな言葉を、あんな場面で(あまりにもさりげなく)見せてしまう監督、やっぱり、やっぱり、ズルイ

なにかを暗示しているのかしら?といろいろ思わせる、あの鳩の存在も・・・気になる~



感想を書きながらも・・いったいどう書いたらいいのか、今の想いを言葉にする難しさをしみじみ感じる作品でした。
でもとにかくこれだけは言えますね。
主演のお二人の演技、あまりにも素晴らしかった~



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