2013
04.24

「ブラックブレッド」

ブラック・ブレッド [DVD]ブラック・ブレッド [DVD]
(2012/12/08)
フランセスク・クルメ、マリナ・コマス 他

商品詳細を見る


1940年代、内戦の混乱がいまだ残るスペイン。
小さな村カタルーニャの山中で、ある日、11歳の少年アンドレウ(フランセスク・クルメ)は崖から落下した馬車を発見する。

父の親友ディオニスとその息子クレットの無残な姿・・・、
警察は殺人と断定し、以前から政治的な活動で目をつけていたアンドレウの父ファリオルに容疑をかける。

ファリオルは姿を隠し、アンドレウは祖母の家に身を寄せることになるのだが・・・。


スペインの映画界で最も栄誉とされるゴヤ賞において、作品賞をはじめ計9部門受賞し、
第84回アカデミー賞外国語映画賞スペイン代表作品となった作品

予習を全くしていなかったので舞台や、その当時の状況が掴めないままの鑑賞だったのですが、
まず、ビックリさせられたのが冒頭の崖から落下する馬車のシーン

残酷に殺される男の様子や、あまりに高い崖から落ちてゆく馬と馬車・・・あぁ・・子どもが乗ってるのに~~~
映画であるはずなのに、このリアルな怖さに驚きました。

この事件をきっかけにして村から追われるように姿を消した父ファリオル、そして祖母の家で暮らすことになったアンドレウ。
共和派を支持したために町長や警察からも弾圧される父親と、そんな父を愛しながらも家族の生活のために政治信条を捨てて欲しいと思う母。
なにやら不穏な気配が漂う中、それでもアンドレウは理想を語る父の言葉に素直に頷き、優しい母を愛する素直な少年で、祖母の家での暮らしも奔放な従妹ヌリアに驚かされながらも少年らしい毎日を送っていたのに・・・。


過去に起こったマルセルへの残虐な仕打ち、そしてあの馬車の殺人、
少年が知ってしまった事実、見てしまった出来事の数々・・・それはまだ11歳の彼が背負うにはあまりにも重すぎるもの

ショックのあまり、父親と一緒に世話をした鳥たちに手をかけるシーンが悲しい。
でもそれ以上に辛いのが、ラスト、自分に会いに来た母親について彼が友達に言った言葉でした

理想を熱く語った父親が、生活のためとはいえ・・・あんなことをしてしまうなんて
アンドレウのお父さん、素敵なイケメンさんだったのでよけい、私もショックーーー、信じられませんでした。

それでも自分の身は捨て、息子だけは救おうとした・・・・家族を守ろうとした・・、
この時代、こんな状況でなかったら、きっと理想を掲げたまま生きていけたのかしら・・そう思うとやりきれません。


ブラックブレッド

アンドレウを誘惑しちゃう従妹のヌリア。
大人の嘘を見抜き、学校の先生とも関係を持ち、まるで自分なんてどうなってもいいんだ・・、そんな彼女のキャラクターも強烈でした。
焼けてしまった自分の手首を持っての・・あのシーンにひぇ~~。

演じるマリナ・コマスちゃん、大人びた美女ですね。将来が楽しみです。


アンドレウが森で見かけた裸の青年、イケメン好きとしては彼も気になりました
後半どんどんと悲しい出来事が起こる中、アンドレウと青年のシーンがオアシス的な存在でした。

青年に抱きつき別れを告げたアンドレウ、自分はもう(青年のような)翼を持つことは諦めたんだ・・・そんな風に感じられました

タイトルの「ブラックブレッド」
貧しい人々が食べるパンは精製された小麦で作った白パンではない、混じりものが多い、固くて黒いパン。

警察署でパンを振る舞われたアンドレウが白パンに手を伸ばそうとすると「そっちじゃない、こっち!」と黒パンを与えられていましたね。
裕福なマヌベンス夫人の家で、美味しそうなオヤツが並んだテーブルに驚くアンドレウの表情も印象的でした。
ココアに白いパン、ケーキ。

ブラックブレッドが象徴する家族を捨て、柔らかく白いパンの並ぶ生活を選んだアンドレウ、
どんなに硬くてもボソボソしていても、本来の彼ならばブラックブレッドの生活を選んだはずなのに・・・。


父親に理想を見、家族の愛情を受け、少年らしく目を輝かしていた少年の未来を変えてしまった、内戦の傷と大人たちが哀しい。

アンドレウは、いったいこれからどんな風に成長してゆくのでしょう

いつか大人になった時、嘘を塗り固めなくてはならなかった、汚い仕事に手を染めながらも心のどこかで理想を語らずにはいられなかった・・・そんな父親の苦い想いに気づく時はあるのでしょうか。

トラックバックURL
http://teapleasebook.blog26.fc2.com/tb.php/599-3fe1e45c
トラックバック
ブラック・ブレッド [DVD]2010年 スペイン・フランス 監督:アウグスティ・ビリャロンガ 出演:フランセスク・コロメール    マリナ・コマス    ノラ・ナバス    ロジェ ...
ブラック・ブレッド dot 菫色映画dot 2013.04.28 22:43
ブラック・ブレッド  (2010   スペイン・フランス) PA NEGRE BLACK BREAD 監督: アグスティ・ビリャロンガ 原作: エミリ・テシドール 脚本: アグスティ・ビリャ...
ブラック・ブレッド dot ちょっとお話dot 2013.05.02 16:20
コメント
もう何度も何度も何度も何度も書いており、瞳さんにはボケ老人の繰言かと思われるかもしれませんが、やっぱり瞳さんの文章は、その時観た映画の情景を思い起こさせる力があると思います。
細かい部分を忘れていましたが、瞳さんのレビューでけっこう思い出しました。
そうそう、主人公の行く末を案じずにはいられないラストでしたね。
あの病気の青年とのふれあいの儚さと美しさが、あの辛い現実の中では夢のようでした。それさえもなくなってしまって。

>父親に理想を見、家族の愛情を受け、少年らしく目を輝かしていた少年の未来を変えてしまった、内戦の傷と大人たちが哀しい。

まったくその通りですね。
残酷すぎる少年期との訣別でした。
リュカdot 2013.04.28 22:41 | 編集
>リュカさん

こんばんは~。
>やっぱり瞳さんの文章は、その時観た映画の情景を思い起こさせる力があると思います。

わぁ~、感激!!前もそうおっしゃってくださったけれど、何度言われても嬉しいです(笑)
たぶん、自分もその情景を思い出しつつ・・・レビュー書いてるからかも(忘れように・・笑)

白いパンを食べれる生活にはなったけれど、彼が失ったものの大きさを思うと悲しいですね。
「子どもはただ楽しくしていればいいんだ・・」というお父さんの言葉がありましたよね。
そんな子ども時代への別れがあまりにも急すぎて、あまりにも残酷でした。
dot 2013.04.30 22:25 | 編集
お邪魔します~~
私もリュカさん同様、感想拝見しながら
いろいろな情景思い起こしましたよ☆
父親の過去の行動・・・衝撃的でしたものね。
私もイケメンパパだったから、余計ショックだったわ。
いとこの彼女のキャラクターみながら
やっぱり女の子の方が成長度合いが早いんだな・・って
思っちゃいました。男の子の方が純粋かな・・笑
父親の思いに気付くことが彼にも訪れる日がくるでしょうね
大人になって生活するのって
やっぱり、いろいろあるものね~~
わ~~紹介された地味映画もうチェックされているのね。
癒されにまたお邪魔しますね♪
ではでは、残り楽しい休日を。
みみこdot 2013.05.02 16:14 | 編集
>みみこさん

こんにちは。
大変そうなのに、コメント入れてくださってありがとう♪

お父さんのやってしまったこと!驚きだったわ。
うんうん、清潔そうでいい感じのイケメンさんでしたよね。
息子に対する態度も素敵だったし・・だからよけいショックでした。

従妹の彼女は、事故のこととか、父親のこととか、彼女も衝撃的な出来事にあってきたからよけい、そうなのかな。
でもあのくらいの年だと、やっぱり女の子の方が早熟かな。

アンドレウのこれからがとっても気になるラストでしたよ。
だけど、きっとこれから大きくなった時、両親の思いにも気づくんじゃないかしら・・って思います。自分に子供ができたらよけい・・ね。

みぬぅさんのご紹介地味映画、良かったですよ~。
美少年が出てるの!みみこさんにみてもらいたいな。

みみこさん、なんだかとっても大変そうなので(勝手にいろいろ想像しちゃったり)心配~。
無理なさらないでね。体が一番だものね。
dot 2013.05.05 18:05 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top