2013
02.20

「幻の薔薇」

幻の薔薇 [DVD]幻の薔薇 [DVD]
(2013/01/11)
レア・セドゥ、グレゴワール・ルプランス=ヤランゲ 他

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マージョリーヌ(レア・セドゥ)は、バラ栽培者の息子ダニエルと結婚、理想の結婚生活を始める。

憧れのパリのアパルトマン、高価な家電や家具、高級車。
完璧な生活を求め続ける彼女の物欲はどんどん膨れ上がっていく。やがて・・。





↓ ストーリー展開、ネタバレしている部分がありますので、ご注意くださいね。


タイトルやこのDVDのパッケージから、ゴシックロマン風な物語?と想像していたら、これがまったく違っていました。

幸せな結婚生活を送るはずの新妻が、身分不相応なリッチな暮らしを夢見、物欲から身を滅ぼしていく・・っていうお話・・・なのですが、
こう書いてしまうとなんだかとても生活感?溢れたお話のようですよね。

でもこれがまたそうではなく。


登場人物に多くは語らせず、短いシーンを繋げていく(そして暗転前のカットの印象的なこと!)演出方法、時には全く台詞のないシーンも多くて。
実にいろんなことを想像させられる不思議な魅力を持った作品でした。


ヒロイン、マージョリーヌを演じるレア・セドゥー。
ハンサムな夫ダニエルとの結婚、晴れやかな式でのその笑顔、夫とのアツアツの新婚生活は一見幸せそうに思えるのに、
それ以上にどこか満たされない、メランコリックな表情の多いこと!

レア・セドゥってそういう物憂げな表情があまりにも似合うので、
物語が始まってから、どんどん・・・そうした彼女の表情から不穏な空気が


彼女の言葉からは一度も、そういう買い物欲に囚われた理由が語られないので、想像するしかないのだけれど、
実家での不満そうな満たされない様子や、ダニエルが言う「完璧主義者」であるマージョリーヌ・・などから

彼女にとっての幸せな結婚というものが、頭の中に描かれていて、
そこには都会的でリッチなマンション、美しい家具やインテリア、家電に囲まれた自分というものが見えていたのかしら。


ぼくが太ったり、剥げたりしても愛してくれる?なんていうダニエルの問いかけ。
新婚の妻ならだれでも「もちろん!」と答えるに違いない甘いシーンのはずが・・・、彼女の答えは・・・無言。
この沈黙がこわい~。

そうそう、印象的な台詞がありましたっけ。
「本は読まないの?」とダニエルに聞かれた彼女は「自分の物語を紡ぐのに精いっぱいだから」と答えました。
本を読んで物語の人物たちに共感したり想いを抱く時間は彼女には必要ないのですね。
自分が美しく、そして自分の回りもすべて美しく完璧でなければならない、理想の生活を紡いでいくのが彼女にとって何より大事。


原題の「ROSES」や邦題から、どこに薔薇が出てくるのかしらと不思議に思っていたのですが、
夫ダニエルの実家が代々バラ栽培をしていて、彼もその道に進みたいと思っていることがしだいにわかってきます。

祖父が住んでいたという田舎の家をマージョリーヌに見せてここに住みたいというダニエル。
でも、美しい薔薇の温室も彼女にとっては全く何の意味もないもの。

愛する人から自分の名前をつけた薔薇(マージョリーヌ)を作りたいと言われたら、私だったらトキメクけど~!!ロマンティックですもの。

だけど彼女にとっては、自分以外の薔薇には何の興味もない。
日々、時間をかけて体を磨き(手や足のお手入れのシーンも多かったわ)、髪型もファッションもいつも完璧。

下着姿で念入りに身体のお手入れをしたり、裸のシーンもあるのだけれど、
そういうシーンがいやらしくなく、不思議に品よく見えてしまうのはレアの硬質な美しさのせいかしら。

レアという薔薇を美しく見せる監督の手腕もあるのでしょうね。
映像の光の加減も美しい



どんどんと積み重なってゆく借金、信頼されていたサロンも(裏でお客をとっていたせいで)首になり、
ついにはダニエルとも破局を迎えてしまうマージョリーヌ。


大戦後、復興を遂げようとするフランスの、どんどんと生活水準を高めようとする風潮(ラジオが上手く使われていました)
月賦、ローンで買えますよ~の甘い囁き、カタログの魅力。

ちょっと分かるような気もするわ。買い物は確かに楽しいし、
身分不相応だと思ってもこのくらいなら大丈夫!なんとか出来る・・なんて思ってしまったり。そこが危険なところなのよねぇ。




映画のラストでパリの街を歩いていくマージョリーヌ。
いったいどこへ向かうのでしょう。


自分自身の物語を紡いでいくために、お金で買えるものだけではないものが必要なのだということに、いつか彼女は気づくかしら。
幻の薔薇のまま、枯れてしまわないように・・・。


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