2012
08.28

「ルルドの泉で」

ルルドの泉で [DVD]ルルドの泉で [DVD]
(2012/08/03)
シルヴィー・テステュー、レア・セドゥ 他

商品詳細を見る



ルルドの泉とは?

 フランス南西部、スペインとの国境であるピレネー山脈の山麓にあるカトリックの聖地ルルド。
 1858年この小さな村に住むベルナデット・スビルーという少女が、聖母マリアのお告げにしたがって村はずれの洞窟の土を手で掘ると、そこから泉が湧き出し、その水を飲んだ人の病気が癒されるという奇跡が起こりました。

以来、この泉には病気をいやす力があるという評判が広がり、今では年間500万人の巡礼者がこの地を訪れます。





↓最後のシーンもネタバレしています、未見の方はご注意くださいね。

カトリックの信者ではなくても、ルルドの泉は有名ですよね。
私が初めてその名前を知ったのは、中学生の時、フランスの詩人フランシス・ジャムの小説『三人の少女』を読んで。
足の悪い少女ポム・ダニスがルルドに巡礼に訪れる場面は、敬虔で怖いくらいの神秘的な雰囲気に満ちていて・・・
以来、ずっとそういうイメージを持ち続けてきたのですが・・・、


この映画を観て、そういった神秘的、宗教的な聖地としての顔以上に、一大観光地としてのルルドの姿を垣間見て驚きを覚えました。


ルルドの泉で6

まるでディズニーランドのシンデレラ城のように見えちゃったお城や、自然ぽさがあまり感じられない洞窟、
神父様たちも休憩時間にはカードをしていたり、
巡礼ツアー客のスケジュールについては、
グループを組んでの団体行動、記念写真、フリータイムは懺悔か水浴、記念登山にお別れ会・・。結構忙しい~
ツアーのメンバーも毎年、今年こそは!との思いで参加している人を始め一縷の望みをかけて訪れる人、信心深い人、好奇心から訪れる人・・とさまざまなんですね。


映画は、そんなツアー客のひとり、多発性硬化症を患い車いす生活を強いられている若い女性クリスチーヌに起こった奇跡が周囲にもたらした波紋をそれはもう、現実的に、客観的に、淡々と描いていきます。


ルルドの泉で4

クリスティーヌと付き添いボランティアのマリア。
聖母と同じ名前がついたこの若きマリア、最初は一生懸命やってたのですが、ボランティアの中にイイ男を見つけるとどんどんとクリスティーヌのお世話はおざなりに・・。


ルルドの泉で3

こーんな笑顔で写真に写っていますが、この写真を撮る前の瞬間までクリスティーヌをほっぽらかしていたんですよねぇおいおい・・・。

(彼女に比べて精根詰めてみなのお世話をしていた介護人のリーダー、セシル、気の毒でしたね。彼女も奇跡を望む一人だったのですね。)


しかし、当のクリスティーヌもそんなマリアを非難するわけでもなく、かといって、いなくなった彼女に代わってお世話を焼いてくれる(マリアの隣に映っている)老婦人にお礼を言うわけでもなく・・。

彼女の感情も実に淡々としているように見えて掴みどころがありませんでした。こういう事態に慣れている?ってことなのでしょうか。


クリスティーヌに起こった奇跡も、どんな劇的に!?と思っていたら全くそうではなく、あら?手が動く?ベッドで眠っていたら起き上がれる!?・・といった具合にあっさりと描かれていてちょっと拍子抜けしてしまうくらい。

しかしまぁ、彼女に起こった奇跡が巻き起こした周囲の人々の反応・・。
良かったわねと言いながらも「なぜ、他の人ではなくて彼女が?」と思ってしまうのも
なぜうちの子に奇跡が起こらなかったの・・と熱心に祈っていた母親が羨望とも恨みとも思える目で彼女を見つめるのも
それほど彼女に注意を払っていなかった神父が急に彼女に寄り添ってきたのも

どれも・・(悲しいけど)すっごく頷けちゃう


祝福してあげなきゃ・と思うけど、いままで自分たちと同じ立場だったものの中から一人だけ「選ばれた人」が登場すると・・やっぱり複雑な思いになるでしょう。
クリスティーヌがそれほど信仰心が篤くないし、巡礼ツアーもほかの旅行とかは出来ないからという理由で参加しているので・・なおさらそう思ってしまう。
このまわりの人々の視線、思い、一言一言がね・・時にはとても辛辣なほどリアルでした。

(噂話の好きなおばさま方、言いたいこと言ってましたね・・)



でも、身体が動くようになったからといって・・・奇跡として認められるのはそれ相当のチェックというか、お医者様の認定が必要とは!
何かで読みましたが、正式に認められるにはCTとかまで撮って医学的な根拠を示さなければならないとか・・。
神様の奇跡を医学的に証明する・・・なんだか複雑


歩けるようになったクリスティーヌは、本当ならば参加することが出来なかった登山にも急きょ参加!これはちょっと無理し過ぎでは?
そればかりではなく、素敵な男性ボランティア、クノとの山の上でのアバンチュール(古っ!)には正直大胆~!!と思いましたが、長年体を動かすことが出来なかった彼女にとってはこの時を逃したくないという思いもわかる気がします。


驚いたのは、そんな彼女を追いかけて山の道を必死で登って行く老婦人。
最初は単純にとてもお世話好きの(信仰心も篤そう)イイ人なんだなって思っていたのですが、そこまで?とビックリしてしまったし、思い返すといろいろなシーンで結構強引なところもありましたね。


ルルドの泉で5

ツアー最後の夜のお別れ会。クノとダンスを踊り幸せの絶頂にいたクリスティーヌ。

ところが・・・。
ダンスの途中でクリスティーヌは突然倒れこんでしまう。

「あ、やっぱり」
「奇跡じゃなかった・・」
「いや、まだわからないよ」

この瞬間の周囲の人々の表情と反応、ザワザワといや~な空気が流れ込んでくる。

「すぐ戻るから」そう言ってそばを離れるクノ。
やれやれ・・・少し苦い顔の神父。

壁の横でじっと立っているクリスティーヌ。
すかさず彼女に車いすを持ってくる老婦人(やっぱり怖いかも)。
2人立っているこのシーンの長さときたらーーーーー。

え?どうなるの?もしや、元に戻ってしまう?
いたたまれないまでにこのシーンが長い。

やがて静かに、クリスティーヌは車いすに腰掛けます。
結局彼女に起こったのは本当の奇跡なのか、それとも一時的な回復だったのか、明らかにはされませんでしたが、

車いすに座るクリスティーヌの淡々と見えるその表情、
私には「しょうがないかな」とも「ちょっと分かっていたわ」とも見えて・・・複雑な思いが最後まで渦巻く作品でした。



ルルドの泉で

ツアーで被っていた赤い帽子が印象的でした

トラックバックURL
http://teapleasebook.blog26.fc2.com/tb.php/532-527a031a
トラックバック
ルルドの泉で [DVD]2009年 オーストリア/フランス/ドイツ 監督:ジェシカ・ハウスナー 出演:シルヴィー・テステュー    レア・セドゥ    ブリュノ・トデスキーニ    エ ...
ルルドの泉で dot 菫色映画dot 2012.08.29 14:49
コメント
本当に淡々とした作風でした。
でも描かれていることは、奇跡が起こった主人公に対する表面上の祝福と、わずかな悪意と嫉妬ともの珍しさという人間らしい感情に塗れていて。
その色々な反応がリアルでしたね。
噂好きのおばちゃんたち、ああいう人たち、国が違ってもどこにでもいるんだな~と思いました。
まあ自分ももしかしたら同じようなものかもしれませんが……。
客観的に見ると恥ずかしいものですね。

ラストの瞳さんの解釈、頷けました。
あそこで主人公は特に落胆もせず、取り乱しもせず、少しだけ淋しそうに前を見据えて、何を考えているのかなと観た当初は掴みかねましたが、瞳さんの記述がぴったりはまりました。
それも哀しいですが……。
リュカdot 2012.08.29 14:48 | 編集
>リュカさん

こんばんは。
お昼はお互いにおじゃましあってたみたいですね(笑)

お話の中心になるクリスティーヌの感情でさえ掴みきれないほど、淡々と客観的に描かれた作品でしたね。
巡礼ツアーに参加しているからといって、悟りの境地になれるとは・・限りませんよねぇ。

そうそう、あのおばちゃんたち、奇跡が起こったという人のビデオでも厳しく突っ込んでましたよね(苦笑)
私も似たようなことしちゃうこと、あるように思います。

ラストは、あのながーい沈黙のシーンに耐えかねましたよ(汗)
居心地が悪いったら。
不思議な表情を浮かべてましたね。これまでにも気持ちが掴みにくい彼女でしたが、この時の寂しげでありながら、どこか冷めているような、達観してるかのような表情が哀しいですね。

リュカさん、いつもTBありがとうございます。
今回も何度もチャレンジしてみましたが・・こちらからは何故か反映されず・・・。残念です。
dot 2012.08.29 19:28 | 編集
瞳さん今回はここに書きます!
この映画新潟のミニシアターで公開されてるのす。
ところがDVDも出てるということで驚いてました・・・
<巡礼地をユーモラスに>なる地方紙の紹介があったのが27日でした。
ヴェネチア映画祭の5部門受賞してるのとクリスティーヌを演じるシルヴィー・テステューの演技もいいと書かれてました。観てから詳しく読ませてもらいます?

映画は「善き人」と「ミラノ、愛に生きる」を見ました。
後者はアカデミー賞女優のティルダ・スウィントンが監督のルカ・ グァダニーノと11年にわたって企画を温め、全編イタリア語の台詞で主演した渾身の 一作。好きな女優の一人ですが愛のシーンはもっと少なくていいのでは! それにしても魅力的でした。
やまさんdot 2012.08.29 21:43 | 編集
>やまさん

こんばんは♪
「ルルドの泉で」公開中なのですね。
香川もそうですが、地方だとミニシアター公開とDVDがほぼ・・同時期で驚いてしまうことありますね。

カトリックの聖地としてとても有名なルルドの、観光地としての一面がしっかり見れました。
撮影許可取るの、大変だったでしょうね。
シルヴィー・テス、淡々とした表情が逆にとても印象的でした。
やまさんもぜひご覧になって欲しいな。

「善き人」予告で見て気になってます。
「ミラノ・愛に生きる」おお、イタリア語なんですか!すごい。
私も彼女、好きな女優さんです。
ふふ、情熱のイタリア、愛のシーンも多かったのですね。
こちらも観てみたいです。




dot 2012.08.30 20:59 | 編集
瞳さん、こんにちは。
この間言ってたのはコレなんですよ~。
でも、てっきり「悲しみのミルク」と一緒に地味映画としてオススメ頂いてたと思ってたんだけど、
そうじゃなくて、これはその時ただ一緒に話題に出てただけだったみたいですね?
でも、瞳さんからのお話がなかったら、きっとまだ見てなかったと思うので、話題にして貰えて良かったです。

と言うのも、これ、すごく好みな作品だったので!
最初のワンカットから、ずっと引き込まれてました。
自分がルルドと言う所がある事を知ったのは、幼い頃に買って貰った「カトリックかるた」
(多分「る」の札で)だったんだけど(笑)
そこが地理上どこで、実際はどう言う所なのかを知ったのは、もっともっと後でした。
なので、瞳さんの持つ「三人の少女」(情けない事に未見です;;)からのイメージよりも
もっと漠然と不思議な別世界~ってイメージで見始めたんですけど・・
そうそう~、しっかり観光地、でしたよね。シンデレラ城~(笑)確かに~!
ちゃんと昔からの儀式はやってるみたいだけど、なんとなく流れ作業的でもあったよね。
新米介護人の名前がマリアなのもシニカルでしたね;;
あと、やっぱり、介護長のセシルと、謎の地味おばさんが気になりました。
でも、いつも淡々としてるクリスティーヌもだし、車椅子の娘を持つ美人母とか、
思い出すと、みんな其々に・・何考えてるのか気になる・・そんな人達ばっかりでした。
最後は・・どうだったんでしょう?色々と心配になる終わり方で・・。
周囲の人達の態度で、彼女の心まで傷つかないといいな・・って思いました。
つるばらdot 2014.05.14 12:57 | 編集
> つるばらさん

こんばんは~。
先日の作品ってコレだったのね~!!
あ、そうでした、あの時、両方地味映画でお薦めしようか、どうしようか、悩んだんでしたっけ。
これも地味だけど、すごく印象的な作品だったので。

おお~!!つるばらさん、好みでしたかi-190それは良かったですーー。

「カトリックかるた」の「る」、ほぉ~~!
子どもの頃のそういうのって結構覚えてますよね。
もっとね、開かれていないというか、辺鄙(?)な感じのところかなあって勝手に思っていたので、観光地みたいに集合写真撮ったり、ツアーみたいに次はこっち、それから・・みたいな部分に驚きましたよね。

新米介護人の名前がマリア!
そうそう、皮肉っぽかったわ。レア・セドゥ、ちょっとぽっちゃりして見えましたよね。垢抜けない感じでこの役柄にぴったりで。

>介護長のセシルと、謎の地味おばさんが気になりました。
でも、いつも淡々としてるクリスティーヌもだし、車椅子の娘を持つ美人母とか

そうなんですよ~!!
主人公もそうだし、まわりの人々も、みんな考えていることや思っていることが、いまひとつ掴めないところがなおさら気になって・・、観終わってだいぶ経つけど、いまだにこれ印象的な作品です。

最後も・・気になる終わりでしたよね。
あの「間」が・・・・あぁ、なんともいえない~。

つるばらさんの感想、あとで読みに伺いますね。楽しみです。
dot 2014.05.15 21:32 | 編集
瞳さん、こんにちは(^^)/
おおー瞳さんも見てたのねー!
地味だけど味わい深い?人間の良くも悪くも 心理が
面白いのよね 
あの面倒見のよいおばさま、山に登ってったのは驚いたわ

フランシス・ジャムの小説『三人の少女』っていう
作品は全然知らなかったわー
興味湧いてきちゃった
latifadot 2016.08.31 17:31 | 編集
>Latifaさん

おはようございます~。
そうなの!
これ、地味だけどすごくいろいろ考えさせられて印象深い作品でした。
主人公の気持ちは意外に淡々としているように思えましたよね。
周囲の人々の視線、言葉、心理状態、自分だったら・・・とか考えちゃいました。
あのオバサマ、ちょっと盲目的な感じも受けていい人なんだろうけれどコワイ感じも受けましたよ。

フランシス・ジャムは、19世紀のフランスの詩人です。
牧歌的で素朴で、でもとっても情熱的なところもある詩人さん。『三人の少女』はその昔~、私がまだ10代の若くてピカピカだったとき(笑)の懐かしい愛読書です。


dot 2016.09.01 11:47 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top