2012
08.25

「悲しみのミルク」

悲しみのミルク 第59回ベルリン国際映画祭 金熊賞受賞作品 [DVD]悲しみのミルク 第59回ベルリン国際映画祭 金熊賞受賞作品 [DVD]
(2012/05/03)
マガリ・ソリエル

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南米ペルーの貧しい街。
ベッドで一人の老女が歌っている。若き日に彼女が受けたあまりにも残酷な仕打ちを・・・。
やがて老女は亡くなり、残された娘が一人。

母親の苦しみを母乳から受け継いだと信じる娘は、恐怖から抜け出すことが出来ない。
息をしていないかのようにひっそりと生き、一人で道を歩くこともできないファウスタ。

しかし、母を故郷の村で葬りたいと願う彼女はその費用を稼ぐため、街の裕福な女性ピアニストの屋敷でメイドの仕事につくことを決心する・・・。



真っ赤な花を銜えた少女があまりにも印象的だったのでネットレンタルで予約した作品でした。


ペルー映画!初めて。
2009年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞に輝いた作品だそうです。


「悲しみのミルク」というタイトルも気になりました。
ペルーに吹き荒れたテロの時代、ファウスタの母親は夫を殺され自身も乱暴されるという(その様子を謳った冒頭の母親の歌・・衝撃です)恐ろしい経験をしました。

母の苦しみは母乳から受け継がれる(恐乳病と村人たちは呼んでいます)と信じられていて、タイトルの「悲しみのミルク」もここから付けられているんですね。

他人と決して目をあわさず、まるで息をしていないかのようにひっそりと生きている娘。
一人では外を歩くことも出来ない彼女が、レイプから自分を守る盾にしているのが「じゃがいも」!!
冒頭の母親の歌も衝撃でしたが、彼女の盾(じゃがいも)も衝撃でした!
(伸びてきたじゃがいもの芽をハサミで切るシーンも・・・!)


常に目を伏せ、他人を見るとからだをこわばらせ、緊張感に溢れたファウスタの表情、動き、観ているこちらにまで彼女の震えが伝わってくるかのよう。

主演のマガリ・ソリエル、ちょっとしばらく忘れられそうにありません。



そんな悲しみと恐怖に縛られたファウスタの心をしだいしだいに・・ほぐしていったもの。

それは物静かで穏やかな庭師との時間であり(すごーーく普通のおじさんっぽい容貌なのが逆に良かったデス)
母から受けついだもうひとつのもの「歌」を屋敷の主人に聞かせること。
(もちろん初めは頑なに歌わなかったファウスタですが・・)


このお屋敷でファウスタが扉を開けるシーンもとても印象的でしたっけ。
庭師が来たら開けるようにと言われたファウスタが開き戸をあける・・、すると一枚の戸の向こうにはなんとも賑やかな市場の様子が見え人々で賑わっている。

ひっそりと静かなお屋敷とにぎやかな外の世界が・・たった一つの扉で隔たっている!
まるで舞台の帳が開くように・・。


そう、こんな風にこの作品(これほど悲劇的な題材を扱いながら)どこか寓話的な、おとぎ話のような雰囲気をもった作品なんですね。
ずーーと以前に観た「ビハインド・ザ・サン」をちょっと思い出しました。



屋敷の主人が投げ出したピアノ、散らばった破片、1つ歌を聞かせるたびに一粒の真珠、
長い長い階段のような坂を登って帰る家路、


ちょっとコミカルにも見える結婚式の様子や(花嫁のベールについた風船~)。
真っ赤な花を銜えて開き戸の向こうに庭師を待つファウスタも。

1つ1つのシーンが絵のように、鮮やかで・・・魅力的で



怯えや恐怖を感じるファウスタの姿は時に滑稽なほどでもあるのだけれど、それがなお哀しく。
でも哀しいだけじゃない、底には強さや生きようとする力も感じる作品でもありました。

ブルーのドレスを着てひとり必死で屋敷に向かうファウスタ。
庭師に抱えられながら、「私の中から取って!」と訴えるその声。


ラストシーンで彼女に送られてきたじゃがいもの花。(そっと置いて帰るところがニクイ!)
もしかしてこのじゃがいもは彼女の盾なのかしら!?

白い素朴なその花に顔を寄せて・・・微笑みを見せるファウスタが綺麗

悲しみのミルクは少しづつ、少しづつ薄まってゆく・・。
盾を捨て「息をし」人生を受け入れ始めたファウスタの一歩が嬉しい。


広い空、乾いた大地、壮大なペルーの風景も印象的でした。
なにより、全編に漂うこの不思議な雰囲気、寓話的な描き方がとっても好きです。
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悲しみのミルク  (2008  ペルー) LA TETA ASUSTADA THE MILK OF SORROW 監督: クラウディア・リョサ 製作: アントニオ・チャバリアス ホセ・マリア・モラレス クラウ
悲しみのミルク   dot ちょっとお話dot 2012.10.26 17:51
全く期待せず見ましたが、思いがけず面白かった!4つ☆半~5つ☆
「悲しみのミルク」感想 dot ポコアポコヤ 映画倉庫dot 2013.05.17 15:06
コメント
瞳さん、こんにちは~。
9月になっても、まだまだ日中は暑いですね^^;
夕方に吹く風に秋の気配があって、ちょっと嬉しい・・。

お薦めの映画、早速観ました(*^^)v
内容は「素敵~~」などと、呑気に言えないものだったけれど、徐々に寓話かも・・と気付き始めてからは気がラクになり、展開にも溶け込めるようになりました。
それからは、地味映画の真骨頂を観ているようで、若干気分も高揚!?^^;
こういう映画、掘り起こすのは楽しいですよね。
瞳さん、さすが!!(^^ゞ

ヒロインの女性、綺麗な目をした人でしたね。
私も、別の意味で「ビハイン・ド・サン」を思い浮かべていたの。
彼女、女性版ロドリゴ・サントロだわぁ~って♪
でも、確かに映画の中の空気は「ビハイン・・」にソックリでしたね。
そして、彼女の心を徐々に溶かしていった植木屋さんのオジサン、よかったですよね。
彼が、イケメンだったら、確かにちょっと違う気がしますものね。^^;
そしてラストのジャガイモの花、私も同じ事を考えましたけど、それもリアルな気がして、さりなげく受け止める事にしましたよ(笑)
彼女以外の周囲の人間は、実にリアルに人間臭いのも、彼女が寓話の象徴という意味付けをアピールしていた気がしました。
本当に、またまた良い作品を紹介して下さってありがとうございました。
またお薦め、お待ちしていますね♪

カウリスマキ、凄い、3年も!?
本当に忘れた頃にやってきた・・ですね(*^^)v
「過去のない男」で、カンヌだったか受賞した時に、一時ハマって観ましたが、本当に独特の無表情映画!?(笑) 私、結構好きです。
過剰な演技が無くても、泣ける時は泣けるのよね。

ではでは、残暑が過ぎるまで、もう少しの辛抱ですね。
お体大切にお過ごし下さいね(^^)/
みぬぅdot 2012.09.10 12:27 | 編集
>みぬぅさん

こんばんは。
お返事遅くなってごめんなさい~i-237

朝晩はとっても涼しくなりましたね。でもまだまだお昼は暑いーー。
買い物に出かけた時に、前を行く若い女性がバッチリ秋ファッションで決めていたんだけど「暑いーー」って連発してました(汗)

わぁ!早速観てくださったのね。
嬉しいわ♪
そうなんです!すごく辛い題材なんだけど描き方が寓話的なので・・ソフトタッチというか・・気持ち落ち着いて見る事ができました。

おお、みぬぅさんも思いました?「ビハインド・ザ・サン」と空気似てましたよね。
彼女、目を伏せるシーンも多いんだけど、瞳がとてもきれいで印象的でしたね。

でしょーー、あのおじさんが若くてイケメンだったら、また違ったものになるんだけど、そうじゃないのがまた良かったわi-175
倒れた彼女を一生懸命抱きかかえて走る姿もね、余裕だよ~っていうんじゃないところがかえって心打たれました。
>彼女が寓話の象徴という意味付けをアピールしていた気がしました。
素敵~♪
みぬぅさんの解釈。

感想ご報告いただいてありがとうございました。

カウリスマキ、ネットレンタルを始めてすぐに1位設定してたんだけど(そのページの情報見たら1位に設定してる人がすでに何百人もいたのね)だからこれはとうてい無理だろうなあって思ってたんですヨ。
そしたら、意外や意外~、あら!来た!って感じでした(笑)

独特ですよねぇ。
あの登場人物たちの無表情さ!!
以前エッセイを読んだとき、フィンランドの人たちがとてもナイーブであまり感情を見せない(でも親しくなると全然違ってた)みたいなことを書いてあったのを思い出しましたが・・そういうお国柄をもっと誇張して描いて見せているのかしら。

うんうん、そうですね、過剰な表現、演技が無くても・・・心に沁みますねぇ。
どちらも胸がいっぱいになりました。

夏の疲れ出る頃ですよね。
みぬぅさんもご自愛くださいね。


dot 2012.09.12 19:51 | 編集
こちらにも。
報告遅くなってごめんね。
題名からは想像できない物語でしたよ。
最初、歌から始まったのでミュージカルかと思ったら
ものすごく悲惨な内容(歌)で・・・びっくり。
<以前に観た「ビハインド・ザ・サン」>
あ・・そういうば、あの映画も寓話的な要素ありましたよね。
<1つ1つのシーンが絵のように、鮮やかで・・・>
うんうん・・・歌も印象的でしたが
映像も印象的。ジャガイモの使い方も心に残るし。
いろんな意味でインパクト大でした。
お勧めしてもらえなかったら知らなかった作品なので
すっごく感謝。
私も負けないくらい地味な映画探しますね~~笑


みみこdot 2012.10.26 17:50 | 編集
>みみこさん

こちらにもコメントありがとう♪

タイトルからだと想像できないですよね、この内容。
いったい何のミルク?って思っちゃった。

そうそう、あの臨終のお母さんの歌・・あまりに悲惨で固まっちゃいましたよ。

「ビハインド・ザ・サン」も悲劇的な家族のお話でしたけど、寓話的な描き方でしたよね。

じゃがいもの使い方・・・これね、乙女の私たちにははっきり言葉で書けないよねi-229
身体壊しちゃうよ~~って驚きました。

見てくださってありがとう♪
感想お話できて嬉しかったわ。

うんうん、みみこさんも地味映画発見したらまた教えてね。
dot 2012.10.26 18:51 | 編集
瞳さん、こんにちは!
凄くコレ、好みの映画でした!!

そういわれれば、ビハインド~に似てますね。あちらは、完全保存版として、手元にDVDを持ってるほどお気に入りです。(ロドリゴ・サントロがカッコ良かったしw)
でも、こちらもカッコイイ人は出て来ませが、凄く面白かったです。
そうそう、庭師のオッチャンが普通っぽいのが良いですよね。
これで素敵な若い人だったら、あ~2人、くっつくな・・って想像ついちゃうもの。想像つかないような地味なオッチャンなのがミソ^^

で、そうそう。色づかいとか、時々はっとするようなセンスを感じました。
私も赤い花のところとか、おおっと思いました。

昔、ガルシア・マルケスの本が好きだったのですが、南米の変ちくりんな風習?みたいなお話は、大好物です。
latifadot 2013.05.17 15:12 | 編集
> latifaさん

こんばんは~。
わ!latifaさんもご覧になったのね、嬉しい~♪

おお、そしてビハインド~のDVDも持ってるのね、一緒、一緒~♪
私もあの作品、好きなの。ロドリゴ、カッコよかったよねぇ。

こちらもちょっよ寓話的な雰囲気があって似てるなあって思いました。

> そうそう、庭師のオッチャンが普通っぽいのが良いですよね。
> これで素敵な若い人だったら、あ~2人、くっつくな・・って想像ついちゃうもの。想像つかないような地味なオッチャンなのがミソ^^

そうそう、あの地味さにやられた~~i-237 >

> 昔、ガルシア・マルケスの本が好きだったのですが、南米の変ちくりんな風習?みたいなお話は、大好物です。
マルケス、「予告された殺人の記録」と「コレラの時代の愛」しか読んだことないの。でもどちらもとっても印象的だったわ。
お薦めあったら教えてくださいな~。

ふふふ~、変ちくりんな風習、うんうん、世界はまだまだ神秘的だなあ・・って思いますよね。
dot 2013.05.17 22:52 | 編集
瞳さん、こちらにも。
これ実は去年の11月頃に鑑賞したんだけど、
ご報告しなくちゃと思いながら、どうせならブログにUPした時に、とか思いつつ、新作におされて?なかなかUP出来なくて;;つい忘れてしまって~;;
またしても今頃で申し訳ないです・・が、
面白かった!です!
最初の歌はかなり衝撃的で耳をふさぎたくなったり;;
主人公のやってる事はなんだそりゃ?だったけど(笑)いい物語でしたね。
ミルクに込められた母の想いと言うか情念に考えさせられるものは色々で・・
庭師や真珠のくだりや勿論ラストもだけど、あと何気ない風景映像も印象に残るカットが多くてとても好みでした。
オススメ頂いてどうも有難うございました。
ご報告がものすごく遅くなってごめんなさい!
つるばらdot 2017.01.12 11:07 | 編集
>つるばらさん

おおっ!ご覧になったのね~♪
いえいえ、全然気にしないでくださいな~。
ご報告ありがとうございます。

つるばらさんにご報告いただいて、私もこの作品の自分の感想を読み直しました。
そうそう、これ、すっごく印象的な作品でした!
最初の歌からして、衝撃的でね!
主人公も不思議、ビックリなんだけど、映画から漂う雰囲気とか、映像とかも良くって。
じゃがいも・・・もビックリでしたよね。
1シーン、1シーンがとっても魅力的な作品でした。

再見したくなりましたよ~♪
dot 2017.01.13 11:25 | 編集
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