2012
05.15

「灼熱の魂」

灼熱の魂 [DVD]灼熱の魂 [DVD]
(2012/05/02)
ルブナ・アザバル

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中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)。
謎めいた遺言と二通の手紙を双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)に残して彼女はこの世を去った。

死んだと聞かされていた父親と、その存在さえも知らずにいた兄への手紙に・・・姉弟は戸惑うばかり。
どこか普通とは違っていた母親に死後も振り回されることを怒る弟シモンに対し、
姉ジャンヌは母のルーツを探して祖国へと足を踏み入れるのだが・・・。



地味映画推進委員会の会員さんからご紹介いただいた作品です。
アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされていたんですね(ちなみに受賞作品は先日鑑賞した『未来に生きる君たちへ』でした)

ほとんど予備知識もないままの鑑賞でした。『灼熱の魂』ってタイトル、凄いなあって思うくらいで。



衝撃~~~~!!


できるならばもっと、もっと最大級の大文字にしたいくらい

驚きました、打ちのめされました。
まさか、まさか、これほどの事実が待ちうけているなんて・・。

観終わってから数日経った今でも、感想の言葉が上手く見つからない、いまだ呆然としているような状態です。



宗教上の対立から恋人を失い、生まれたばかりの息子を手放さなくてはならなかった若き日のナワル、
家名を汚したとして射殺されかけたシーンからして、私にはショックな出来事、まさかそこまでされなくてはならないほどのものなの?・・と。

勉強不足の私などの想像も及ばない、そこには民族間、宗教の違いからくる根深くて、終わることのない争いがあった(いえ、過去形ではありませんね!)のですね。

そんな暴力の連鎖に巻き込まれたしまったナワル。
十字架を隠し、スカーフを巻いてイスラム教徒と偽って乗り込んだバスでの銃撃事件もまたショッキングなものでした。
煙の上がるバスの傍らで呆然とした表情で膝をつく彼女の表情が忘れられません。


けれどもナワルの数奇な人生は、ここからますます激しさを増していくのです。

母の故郷を訪ねたジャンヌが知ってゆく、あまりにも辛くて悲しい事実。
「世の中には知らないことがいいこともある」
刑務所での母を知っていた男性がジャンヌに忠告したこの言葉に思わず深く頷いてしまうほど・・。

恐ろしい事実が待っているのではないか、そうひしひしと感じてしまうのです。


暴力の連鎖に巻き込まれたナワルが、その連鎖の一端を自ら担ってしまう、この時彼女はどんな思いでこの選択をしたのでしょう?
失ってしまった恋人への思い?会えずにいる(もう会えないかもしれない)息子と交わした約束をかなえることが出来ない苦しみ・・。

しかし・・その選択が彼女に与えた15年間は・・・




ジャンヌの後を追い、イヤイヤながらも母の国へと渡ってきた弟シモン。
彼が知った驚愕の事実はいったい誰が予想できたでしょう、想像できたでしょう・・。いえ、きっと誰も。

「1+1は2ではないのか」
姉に呆然自失の状態で問いかけるシモン。
こんなことがあってもいいのでしょうか、ここまで非情な辛い出会いが起こり得るなんて。

ここで映し出されるのが、あのナワルが茫然自若となったプールサイドでの出来事です。何年もの時を経て、偶然の再会から知ってしまったこの事実・・。

どんな日々も生き抜いてきたナワルの魂が焼き尽くされてしまうほどの真実・・。


正直、子どもたちにここまでの真実を知らせてしまうのは・・あまりにも重荷では?と思ってしまうのですが、
だからこそ、生前何も語らず、謎めいた遺言を残した・・、知りたいとそう願った者だけがその事実に向き合うように・・。

そんな母の思いだったのかしら?とも想像したのでした。

それにしても双子で良かった・・、やはり一人で背負うには重すぎます。



父と兄に宛てられた母の手紙には、そこにいるだけでいい・・と存在を肯定し、愛情を込めた母ナワルの思いが溢れていました。
父と兄に宛てた手紙はまた、ジャンヌとシモンに宛てた手紙でもあったように思います。

2人はようやく、初めて母の心に触れることができたのではないかしら。



命を肯定し、どこまでも家族を愛するその強さが、どれほどの辛い事実をも包み込んでゆく。

『灼熱の魂』観る前は大袈裟では?と思ったこのタイトル、まさにぴったりだったわぁ・・としみじみ感じています。



ジャンヌとシモンが母の過去を紐解くのに一役買ったお茶のシーン、
Tea&Cinemaにも挙げています♪



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コメント
こんにちは♪
これは本当に、大きな文字で、衝撃~~と表現したい
内容でしたね。ミステリー系の、どんでん返しとは、また違った
複雑な心境で受け止めてしまう結末でしたよね。
復讐の連鎖とか、憎しみの連鎖とか、この間の未来に生きる~~
でもテーマとしてはあったけど、なかなか抑えきるのって難しいですよね。この作品には、根底に母親の愛情というものがあってそういうところで、同じ女性として感動する部分があったかな~~。
そうそう・・・灼熱の魂って題、ちょっと凄いですよね。
私も最初・・題に負けちゃうんじゃない・・って思ったけど
全然そんなことなかったですよね・・・。
お茶のシーン拝見しました。楽しいお茶会ばかりじゃあないのよね・・・。私は楽しいお茶会が良いです・・・♪
みみこdot 2012.05.28 16:24 | 編集
>みみこさん、

おはようございます。
これはもう「衝撃ーーーー!」でしたよねぇ。
まさか、まさか・・・そんなことがあろうとは、決して誰も思いませんよねぇ。

>復讐の連鎖とか、憎しみの連鎖とか、この間の未来に生きる~~
うんうん、私も「未来に生きる君たちへ」を思い出しました。
この作品の母親も、自らが暴力の連鎖の一環を担ってしまうわけですもんね。

冒頭に登場した少年のまなざしも強烈でしたよね。
後々、彼がだれか判明していく・・そういう見せ方もね・・。

このスゴイタイトルに全然負けていない・・あと引く作品でしたね。
お茶のシーン、読んでくださってありがとう♪

私も楽しいお茶会がいいわ~~i-236

同じ監督さんの作品「渦」をつるばらさんところで拝見して、気になってので観てみたの。
こちらもまた強烈な作品でしたよ!!
dot 2012.05.29 10:09 | 編集
お茶受け・・のblogの方の、フルーティーなお茶ばなしから、こちらへ・・。
う~ん、この映画のお茶のシーンは、みみこさんもおっしゃってるけど、本当に楽しくな~い!ですね。(-_-;)

私も鑑賞後、どんよりした日々を送っていました。
皆さんがご覧になっているのを知っていたけど、お邪魔してお話する気力も無くて(苦笑)
そのどんよりした気分に、みみこさんが風穴を開けて下さったので、ようやく皆さんとお話出来るかなぁあ~と^^;

それにしても、過去に近親●●を描いた作品を結構観ているけど、懐かしいところでは「アポロンの地獄」、一時パゾリーニにハマって観た映画ですが、ギリシャ悲劇がモチーフだと言う事で、現実味がないでしょう?
だから、凄い内容には違い無いのに、普通に観てしまえる作品なんですよね。
ルイ・マルの「好奇心」なんて、えぇー!と思いながらもクスっと笑って終わっちゃったし。
でも、この作品は違います、衝撃度が!!
瞳さんの太字の大文字で叫びたい気持ち、凄く分かる~~^^;
うちで頂いたコメントで、最後の彼女の墓碑に刻まれた生年月日が、私たちとそんなに変わらない・・という言葉に、更に私は衝撃を受けました。
今でも、世界のどこかで起きているかもしれない現実だと言う事ですよね、、、

上にエントリーされている「渦」、私も当時VHSで観ました^^;
友人に薦められて観たんだけど、こちらも掴みにくい映画だったなぁ~と思います。
瞳さんの感想を拝見して、記憶が蘇って来たけど、この監督は10年以上経って、さらに「不条理」を描く才能がパワーアップした印象ですね。
この先の彼の作品、気にはなるけど、安易に手出し出来ない気もします・・、軟弱な私故に^^;^^;
みぬぅdot 2012.06.06 16:04 | 編集
>みぬぅさん

こんにちは。
こちらにもコメントありがとうございます。

鑑賞後、どんより・・・・わかります~~(涙)
私もすごく考え込んでしまうというか、言葉にならなくて感想なかなか書けませんでした。

ものすごい激動の人生を歩んできた母・・、民族や宗教間の争いについても私には計り知れない部分が多くて。
彼女がああいう暴力の連鎖に自ら身を置いてしまった・・あの部分もね、なぜ?と思ってしまうところもありました。

カナダに移り住んでも、子どもたちに心を心を開いていなかった・・・ここも辛いですよね。
せめて子どもにだけは・・・もっと開いて欲しかったなあと思ってしまうのは甘いのかな。ああいう形で生まれてきた子どもたちだったから・・仕方なかったのかしら。

あまりにも辛い事実を知らなければならなかった双子の姉弟の気持ちを思うとまたまた辛くなってしまったし。
お茶のシーンも厳しいものがありましたよね。

おお、「アポロンの地獄」、すごいタイトルだわ。
パゾリーニですか!
ギリシャ悲劇だと思うと、かえって別の世界のことのようでそこまでリアルに感じませんよね。
でも・・・この作品だと・・i-193

「渦」みぬぅさんもご覧になっていたんですね~!!

寓話的なものを感じる分、「灼熱の魂」のような辛さは無かったけれど・・・、こちらもまた不思議な感覚を覚えましたよ。
この先、いったいどんな作品を作られるんでしょうね。
気になるけど、確かにちょっと勇気もいりそう。
dot 2012.06.07 16:51 | 編集
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