2012
04.08

「ラビット・ホール」

ラビット・ホール [Blu-ray]ラビット・ホール [Blu-ray]
(2012/04/06)
ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート 他

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4歳になる最愛の息子ダニーを突然の事故で失ったハウイーとベッカ夫婦。

8か月経った今でも、忘れられない息子の面影、思い出に苦しむ二人だが、互いの悲しみ、辛さは・・彼らの心にしだいに溝を作っていく・・・。


愛する者を失った悲しみ。
ましてやそれが幼い子どもで・・・しかも突然の出来事だったなら。
もちろん覚悟なんてできているはずもない、受け入れられない辛さ。

親として想像してみるのも辛い出来事です
そんな悲しみに見舞われた夫婦の、事故から8か月経った日常を描いた物語。

そう、どんなに辛い出来事が起こっても、また朝は来て・・一日は始まる。
妻はガーデニングを再開し、夫は友人とスカッシュに出かける。

事故のシーンは描かれない(後半に事故を目にしたベッカの痛ましい表情は映るけれど
静かに、穏やかにさえ見える・・その日常の中で、
でも決して亡くなることのないその痛み、辛さに向かう気持ち。
それはたとえ夫婦であっても同じ苦しみを体験しても・・・悲しみの受け止め方ってひとりひとり違うもの。
そのことをこの映画で改めて感じました。

毎夜、携帯に撮った息子の動画を見て涙する夫。
家に残る息子の面影、気配にすがりつく彼が、冷蔵庫に貼られていた息子の絵がはがされているのを見たときのあの表情!


「あなたはいいわ、仕事があって」
息子の面影がありすぎる家でひとり、料理やお菓子を作り・・ガーデニングをする妻。
逃げ場のない彼女には、息子の気配が苦しすぎる。
絵やオモチャを整理し、洋服を処分する・・息が出来ない悲しみから逃れるために。

彼女は夫が薦めるセラピーにはなじめないし、2人目を提案する夫の言葉も受け入れることができない。


同じ悲しみを経験しながらも・・けっして人は同じようには悲しめない。


同じように息子を失ったベッカの母親が、彼女の痛みに寄り添おうとしても・・ジャンキーの兄の死と自分の幼い息子の死を同列に扱わないで!とベッカは言い放ってしまう。
奔放な妹の妊娠を喜びながらも・・複雑な思いのベッカの言動、その姿の痛々しさ。

母や妹とのシーンでは、身内だからかな、より一層、彼女の抱える痛みがトゲのように現れて・・、それがとてもリアルで辛いシーンでした。


専業主婦のベッカが、ある日、スーツに身を包んで出かけるシーンがあります。
このスーツ姿がとっても素敵~、お洒落ですよねぇ、ニコール、綺麗です

彼女が訊ねたのはかっての職場・・、でも、そこでも同僚はすでに無く、またしても行き場の無い自分を噛みしめた彼女は、バスの中にあの日の事故の加害者である少年ジェイソンを見かけます。

夫とも実の母とも、悲しみを共有できないベッカが、加害者の少年と過ごす時間。
不思議なことのようだけれど、(あとで知ったハウィーの驚き、怒りは当然かもしれません)、この静かな触れ合いは、私にとっても映画の中で癒しの時間となったような気がします。

幼い少年を轢いてしまった若者の苦しみも決して消えることはないのだから。


決して恨み言も泣き言も若者にぶつけることなどなかったベッカが、でもフロムに出かける彼の晴れの姿を見て、思わず泣き出してしまう。
未来ある若者の輝きが眩しくて?、それとも自分の息子には訪れない日々を思って?
あぁ・・・この噴き出すような痛み。


ラビットホールというのは、ジェイソンが書いたコミックのタイトル。
冒頭からところどころ登場するラッパのような絵がとってもユニークでしたね。

この宇宙に無限に存在するパラレルワールドには、また別の人生を歩んでいる自分たちが存在する。

「そこにはしあわせな私がいるのね・・」
ベッカの表情がなんともいえない。


「悲しみはいつか消える?」そう問いかけたベッカの言葉に答えた母親の言葉も忘れられません。

「悲しみは消えない。
でも軽くなるの、大きな岩だったものが・・・やがてポケットの中の小石に変わる。
時々忘れそうになるけれど・・それはけっしてなくなることはなくて、そこにあることを思い出してまた悲しくなる。
でもそれは息子が残してくれたものだから。」

娘を気遣いながらも、自分も無くならない悲しみを抱えて生きる母親の悲しみ、優しさが滲み出て・・・思わず涙してしまいました。
ダイアン・ウィーストいいですね~。


美しさと痛々しさ、抑えた表情の中に触れてはいけないような爆弾をかかえたベッカを演じたニコール・キッドマンも素晴らしかったのだけれど
そんな妻を労わりながら、自分もまた痛む心を抱え・・、共有できない悲しみを持て余す夫を演じたアーロン・エッカートも良かった!!

セラピーで知り合った女性とあわや?・・というところまでいった彼が、でも最後には踏みとどまってベッカのもとに戻るシーンに安堵しました。



まだまだ・・悲しみは消えることはないでしょう。
日常のふとしたことでそれは噴き出し、他人の子どもの姿を見てはまた傷ついていく。

でもそれでも、ポケットの中の悲しみを確認しながらも・・・いつかまた、別のポケットには喜びの石も生まれる日が来るかもしれない。
別の世界の、ラビットホールの彼らが羨むような喜びを手にする日がくるかもしれない。

寄り添うような二人の姿にそう願わずにはいられないのでした。
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