2012
04.09

「未来を生きる君たちへ」

未来を生きる君たちへ [Blu-ray]未来を生きる君たちへ [Blu-ray]
(2012/03/02)
ミカエル・パーシュブラント、トリーネ・ディアホルム 他

商品詳細を見る


アフリカの地に赴任し、現地の人々の治療を行う医師のアントン(ミカエル・パーシュブラント)。
ある日、惨たらしい姿で運ばれてきた妊婦を見てアントンはショックを覚える。悪党“ビッグマン”の犠牲者だ。

一方、デンマークに家を持つ彼の息子エリアス(マークス・リーゴード)は、毎日学校で執拗なイジメにあっていた。
やり返すこともできないエリアス。
母を亡くしこの学校へ転校してきたクリスチャンはそんなエリアスを庇い、自分もいじめっ子ソフスの被害に会う。だが、彼は泣き寝入りなどするつもりは無かった。

翌日ソフスを叩きのめし報復を果たしたクリスチャンだが、ソフスの怪我が表沙汰となり、エリアスとともに呼び出されてしまう・・・・。

呼び出されたクリスチャンの父クラウス(ウルリッヒ・トムセン)は、報復にはきりがないと息子を諭すのだが・・・・。



2010年度アカデミー賞とゴールデングローブ賞の外国語映画大賞をダブル受賞した本作、
レンタルを楽しみにしていました。

舞台はアフリカとデンマーク。
一見全く異なる世界のようですが、どちらの社会にも暴力は確かに存在する。
大人の世界だけではなく、子どもの世界でも。

そうした暴力に人はどんな風に向かい合ったらいいのか。
そしてまた暴力という社会的な問題についてだけではなく、2組の家族の姿を通して夫婦間の問題、両親の不和に心を痛める子ども、母親を亡くした痛みと父に対する思い・・。
親として、家庭を持つ者として・・・彼らの姿に色々な思いが渦巻く作品でもありました。



学校でイジメにあう少年、エリアス。
転校してきたクリスチャンは彼を庇い、いじめっ子に報復するのですが、一見おとなしそうで秀才タイプに見える彼のその過激な報復にはビックリ!

殴られたから殴った・・そう答えたクリスチャンに父親は「それではきりがない・・戦争になってしまう」と諭します。
もちろん、暴力には暴力を・・では何も解決することはできないと思うのですが、では学校という特殊な場で自分を守るためにはどうすればいいのか・・というと、これはとても難しい。

転校が多かったらしいクリスチャンにとっては「やり返さなけれはずっといじめられたまま」だということは、
身をもって体験してきたのかもしれません。


だからこそ、エリアスの父親アントンが見知らぬ男に殴られたまま・・やりかえしもしない、警察にも届けようとしないことが、クリスチャンには納得することができないんですね。

わざわざ子どもたちを連れ再度男を訪ねたアントンは、男の暴力など何も怖くないということを身をもって示して見せるのですが
いや、でもねぇ・・アントンのこのシーン。
口先だけではなく実際に態度で見せるのってなかなか出来ないことだわとは思うのですが、
でも私が息子だったら・・やっぱり父親が殴られっぱなしなのを見るのはとっても嫌だし、怖い。
一発やり返して欲しい~!!って思っちゃうんだけど


しかし、そんなアントンもアフリカの地で、医師として一度は治療を引き受けたビッグマンを後には、(ビッグマンの言動に怒りを覚え)報復を待つ人々の前に放り出してしまいます。
放りだせばリンチされるのを分かっていながら・・・。

子どもには暴力を否定しておきながら、自分もまたそれに加担してしまった・・・この時のアントンの表情、なんともいえません。



でもやはり、この映画、二人の少年がとても印象的でした。


年齢よりも幼く見えるエリアスの笑顔、父親が大好きで尊敬していて・・でも母との別居が少年には悲しくて。
そんなエリアスに出来たたったひとりの友達。

クリスチャンは一見、とても落ちついていてしっかりした少年なんだけど(将来が楽しみなハンサム君!)
父親に向けるそっけない態度、決して涙を見せないその様子がかえって・・心に抱える闇の深さを感じてしまう。

なぜ彼が父親に対してそうした態度を取るのか、
(アントンの復讐と称して)危ないまでの報復に走ろうとするのは何故なのか、
その訳は終盤明らかになりました。

末期の癌で激痛に苦しむ妻を見かね、痛みから解放してやりたいと願った父親は、最後には彼女の死を望んでいた・・そのことがクリスチャンには許せなかったんですね。

これは父親の気持ちわかるよねぇ・・って思うんだけど、でも。
父親はクリスチャンにずっと言ってきたわけですよね。「ママはきっと良くなる」って。

その言葉を信じてきた彼にとっては父のその想いは裏切りのように思えたんじゃないかしら。
そして今もまだ、母の死を受け入れられない彼にとっては父を憎むことで自分を支えてきたのかもしれないなぁと思いました。


そう思うと、あの屋上のシーンでアントンの「エリアスは大丈夫だ」という言葉に
「信じていいんだね」と必死の瞳を見せるクリスチャンの顔、思わずうんうん、今度は本当に信じていいんだよって言ってあげたくなりました



アフリカとデンマーク、2つの地での出来事や登場人物の見せ方がとても自然でいて、なおかつ、効果的だなあと思った本作、
物語の初め、クリスチャンが母の葬儀で暗誦したのがアンデルセンの「皇帝とナイチンゲール」だというところが、また心憎いですね。


歌声を忘れられ、国を追われたナイチンゲールは、でも皇帝の病気を知りその死の床へとやってきて・・・再び美しい歌声を響かせる。
ナイチンゲールは恨んだりしなかった、忘れたりしなかった。
自分の歌声に感動し涙した皇帝の姿を、その時の喜びを。

自分が受けた痛みを痛みで返したりしなかった。


暴力には暴力で返すのか?
その答えは、この童話の中にちゃんと示されているのだけれど・・、

答えは分かってはいても、人はナイチンゲールのようにはなかなか生きられない。
報復は決していいものを生むはずがないと分かってはいても、自分の受けた痛みを同じように返さずにはいられない。

理想どおりにはいかないものだけれど・・でも努力することを忘れたら、赦しあうことを忘れたら、よりよい世界はやってこない。

響きましたヨ、考えましたヨ、普段は能天気な私が


いつか、息子と一緒に観てみたい。どう感じるかな、未来を生きる君は。
トラックバックURL
http://teapleasebook.blog26.fc2.com/tb.php/495-d2876f15
トラックバック
未来を生きる君たちへ  (2010  デンマーク・スウェーデン) HAEVNEN IN A BETTER WORLD 監督: スサンネ・ビア 製作: シセ・グラム・ヨルゲンセン 原案: スサンネ・ビア ...
未来を生きる君たちへ dot ちょっとお話dot 2012.04.20 15:01
コメント
お邪魔します~~
考えさせられる題材でしたよね。
私はクリスチャンと父親の、母親の死を巡っての葛藤を
もっと描いてもらいと思ったわ。説明だけでなく・・・。
って、盛りだくさんになっちゃうか・・・笑
アントンが身を持って、暴力のむなしさを教えるシーンも
こんなの子どもに見せて大丈夫かい・・と心配しちゃいましたよ。
なにもわざわざ、訪れなくっても・・・って。
でもいろいろ思うことができるっていうのも、この映画の
魅力の一つですよね。
ナイチンゲール・・え!!そんな意味合いがあるのね。
知っていたらもっと深い感動もあったかも。
やっぱり、暴力は嫌だわ・・・・泣。
子どもにもみせたいけど、バランスとるために、ロマンチック映画も
同時にみせないとね・・・・笑
みみこdot 2012.04.20 15:00 | 編集
>みみこさん、
おはようございます。

そうでしたね~、観終わってもいろいろ考えてなかなか感想が書けませんでした。
うんうん、クリスチャンのお母さんのことね、ここはもっと観たかったですよね。
お父さんとのことも・・あれほどまでに思う気持ちがね、想像するだけでしたもんね。

>なにもわざわざ、訪れなくっても・・・って
でしょう、でしょう~、私も思いました。
弟君はよけい怖がっているようだったし、ああいう相手でしたもんね。
私なんて見ていて・・「もう一発やっちゃいなヨ」って思っちゃいました。

>でもいろいろ思うことができるっていうのも、この映画の
魅力の一つですよね。
うんうん、まさにそのとおりだと思います。

ええ~っとナイチンゲールは、昔読んだので・・たぶんそういう意味合いかな・・と想像してみました。
アンデルセンの童話って、よくない行いをした人には罰を・・みたいな戒め的な部分がほかの童話より少ないというか、もっと深~い哀しみや美しさが感じられますよね(ってこれも私が思っているだけだけど)

重いのをみた後は、やっぱりロマンティックだよね~(笑)
dot 2012.04.23 09:38 | 編集
瞳さん、すごーい!!
ナイチンゲールの件、こちらで始めて知りました。
深い意味があったんだね・・・。
知ることができて、とても良かったです。
ありがとうー!!
latifadot 2012.04.26 15:05 | 編集
> latifa さん

こちらにもコメントありがとう♪

あの童話を暗誦する少年の瞳がとっても印象的でしたよねぇ。
どんな風に思いながら暗誦していたんだろうって思うと。

私はこんな風に捉えたんだけど、
もしかしたら・・監督さんはもっともっと深い意味も込めて使っていたのかも。

アンデルセンの童話って悲しみや痛みをすごく感じますよね~。
dot 2012.04.27 17:12 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top