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Slow Dream

縁あって・・・本や映画と巡りあう。




「シンパシー・フォー・デリシャス」 :: 2011/07/30(Sat)



かっては・・DJとして前途洋々たる未来が開けていたデリシャスDこと、ディーン・オドワイヤー。
しかし、事故による体の麻痺で車いす生活を送らなければならない身となったディーンは、
今やロサンゼルスのスラム街で、車上生活を強いられる毎日を送っていた・・・。

そんなある日、彼は自分が人を治癒する能力を秘めていることに気付く。
しかし、その能力で自分自身を治すことは出来ない。

突然天から与えられたギフトに戸惑う彼は、やがて神父ジョーの言葉を無視し、新たな力を富と名声を得るために使おうと決心する。

ベーシストのアリエルに誘われ、カリスマ的なリーダー、ステイン率いるロックバンドに加わったディーン。
ステージでのディーンの癒しパフォーマンスは、しだいに大きな話題を呼んでいくのだが・・・・。





スラム街に泊めてある車の中で、ディーン・オドワイヤーが目を覚ます。

こわばる身体を起こしながら、車いすに乗り移る彼が見上げる空・・・。
冒頭から、このカメラワークがとても印象的♪


そんなディーンにある日突然与えられた、他人を治癒することが出来る能力。
ディーン自身は全く気付いていないその力に、最初に気づいたのはスラム街で貧しい人々に救済の手を差し伸べている神父ジョーでした。

ディーンの力で、病める弱者たちを救いたい。
情熱的な神父ジョーの姿には心打たれるのですが、ディーンにしたら自分を癒すこともできない力をなぜ授けられたのか。

彼自身も癒しを求めているのに・・・。

そして与えられたのなら、自分もその力を利用して・・もう一度地位や名声を得たい。
思ってしまいますよねぇ。


ディーンだけではありません。

彼の力を目の当たりにした神父ジョーもまた、貧しい人々のための施設を造りたいという夢のためだとはいえ、
先走って・・裕福な男性の娘をディーンに治療させる代わりに大金を寄付してもらおうと約束したりしてしまう。


ディーンに与えられた「ギフト」は、ディーン自身だけでなく、彼のまわりの人々、神父ジョーを含め、ディーンが加わることになるロックバンドのメンバーやマネージャーを巻き込んでいく。


力はたくさんの人々を呼び寄せ、その心を揺らせてゆく・・・。




夢をかなえる力を失ったとき、どうやって人はそれに耐えていけばいいのか、
信仰の力が与えてくれるものは?
そして、自分に必要な癒しとは・・・。


シンプルなストーリーですが、その内側には深いテーマを含んだ作品だと思います。



主演のクリストファー・ソーントンは、彫の深い顔立ちに目力もあるし(ステージ用のメイクをしてもらってどんどんとスター然としていくシーンが印象的!)
監督も務めるマーク・ラファロも神父ジョー役でしっかりと落ち着いた演技。

バンドのマネージャーはローラ・リニー!


いいキャストを揃えましたよねぇ。

それだけに、登場人物たちの心の深い部分をもっと感じさせてくれたら・・・。


特に、アリエルを演じるジュリエット・ルイス
とっても魅力的なキャラだっだけに、彼女のバンドに対する思いや、情熱、なにより彼女自身の気持ちをもっともっと強く感じたかった。

そうすれば、後の彼女に関する悲劇の印象が・・・もっと強いものになったような気がして。





自らも事故による背中の大けがで車いす生活を強いられることになったクリストファー・ソーントンが書いた脚本を、友人である俳優マーク・ラファロが監督。
ソーントンをメインキャストに自らが監督することを決意しながらも、車いすに乗った無名の俳優の物語が映画になるには10年の月日を要したとか・・・。


登場人物たちの心中が少々捉えにくい部分や
中盤から後半にかけて、特に裁判のシーンは物足りなさも残ったのだけれど


作り手側の熱意がしっかりと伝わってきたし、
なにより、ラストの奇跡が素晴らしくて。

少々物足りない想いは、このラストで吹っ飛んでしまいました。




立ち寄ったスーパーで、同じように車いすの生活を送る、レネの姿を見つけたディーン。

決して声をかけようとはせず、隠れるようにしながら・・でもじっとレネを見つめるディーン。
正直、この時ディーンがどんな行動にでようとしているのか、どんな気持ちでいるのか、想像することが出来ませんでした。

でも、どこか緊迫した空気を感じてスクリーンから目を離すことができません。
やがて・・彼が1枚のセーターを掴んだ時・・・ディーンのやろうとしていることは!そう間違いありません。

その行為に思わず胸が熱くなってしまう。

引き込まれるシーンです、ここの描き方いいですね!



ただ純粋に、その人を治したい、癒したい。
見返りを求めたりしない・・その行為が、傷つきボロボロになったディーン自身への癒しとなって帰ってくる。

新たな人生を始める一歩となって・・。



お金はいらないよ、そう言われて手にしたカセットの音楽を聴きながら、車いすに乗りひとり道をゆくディーン。
顔に浮かんだ清々しい笑顔が嬉しい。


あぁ、素敵なラストでしたねぇ。




さぁ、そして私が感想書くんですから、もちろんオーランドのこともバッチリ!ね。


パンフレットもチラシも、どどーんんと中心に映っているオーランド演じるカリスマロッカー、ステイン。

だけど、そんなに出番はないよねぇ・・と心して見に行っただけに(心しながらも大阪まで行くんだけどね 笑)
意外と出てきたそのシーンに「おお!また登場したわ~」と心で小躍り。



ロッカーらしく上半身もしっかりと披露、はい、まばたきなんてしてられませんね。
自分に自信たっぷりな、バンドのリーダーぶりをちゃ~んと魅せてくれました。

歌も2曲~!おお~~、歌ってるではありませんか~

唯一ちゃんと服を着ていた(笑)裁判のシーンのスーツ姿には、汚い言葉で罵るステインを見ながらうっとりしてしまった始末ですヨ、私。

いや、でもこの感情あらわなシーンのオーランド、とっても良かったと思います。




2010年サンダンス映画祭 審査員特別賞受賞作品。


でも、まさか日本で劇場公開があるとは思いもよりませんでした。これも奇跡のような気がする~。

夏の大阪での劇場鑑賞。
素敵なギフトをもらいました忘れられない1本です。






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