2011
05.25

「シングルマン」

シングルマン コレクターズ・エディション [Blu-ray]シングルマン コレクターズ・エディション [Blu-ray]
(2011/03/04)
コリン・ファース、ジュリアン・ムーア 他

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16年間ともに暮らしてきた最愛のパートナー、ジムを交通事故で失ってから8か月。

ジョージの悲しみは癒えることなく、日常のほんの些細なことからも彼との日々を思い出しては・・・心を痛めていた。

しかし、そんな苦しみも今日で最後。
この喪失感に満ちた苦しい日々と別れ、ジムの元へと旅立つことにしよう!
そう決心したジョージは、大学のデスクを片づけ、銀行の貸金庫の中身をカラにし、新しい銃弾を用意する。

静かに、淡々と準備を勧めるジョージだったが、今日が最後の1日・・そう思って眺めると・・いつもと同じ風景もどこか輝きを帯びているかのように映るのだった・・。


コリン・ファース
「英国王のスピーチ」も良かったけれど、こちらの静けさに満ちた悲しみの中に身を置く大学教授役も素晴らしかった~


大きな黒メガネにスーツ姿、去年観た「81/2」 のマストロヤンニを思い出してしまう。


台詞もそんなに多いわけでもないし、自分の心をさらけ出すようなことを語ることはないんだけれど
ほとんど変わらないように見えるその表情の中の・・何かが

彼を取り巻く空気をほんの少しづつ震わせて・・・やがて、小さな波となってその痛みや哀しみがこちらに押し寄せてくる・・・。




自ら命を絶つことを決意した男の最後の1日を追うカメラは、男の視線そのままに彼が見る風景を追い、目にする人物たちに注がれます。

驚くのは、ジョージの表情は物静かで穏やかで、出会った人々との間に少し距離を置いているかのように感じられるのに
その注がれる視線は、無骨なほどにあからさまに彼らを捉えていること。


大学で、教え子と抱き合う女子学生を見つめるまなざし。その官能的な唇を捉え・・。

たまたま出会ったスペイン人の青年をじっと見つめ、彼の美しさを賛美する。
そして、ジョージの講義に感銘を受けて近づいてくる教え子ケニーに注がれるその視線。


まるで、観ている私までが彼らに熱い視線を注いでいるかのような気持ちを覚えて・・ドギマギしてしまう。


ジムを失って心は痛んでいるけれども、メガネの奥の瞳は、美しいもの、好ましいものを見つめる心を失ってはいない。
そんな風に感じちゃったのですけど・・、これってジョージの視線と言うより、もしかしたら監督さんの視線なのかしら



そして、そんな1日の出来事の中にも、ふとしたことから・・またジムとの思い出に浸ってしまうジョージ。
思い出せば、また失ったことを実感してしまうのに・・。

思い出から現実に帰った時の・・ジョージの表情の痛ましさ。



そんな彼が、唯一少し心を解放させて見えるのが、かっての恋人であり、今は親友となっているチャーリーとの時間。


ともに未熟で若かった青春時代を語り、笑いあい、ダンスをする二人。

奔放で自由な彼女にもまたジョージとは違った孤独がある。
ジュリアン・ムーア、彼女の演技もまた・・なんて心が揺さぶられるんだろう。


あぁ、でも、一番驚いたのは、やはり教え子ケニーを演じたニコラス・ホルト君。
『アバウト・ア・ボーイ』のあの毛糸の帽子をかぶった・・もっちゃりとした少年だよね~~。
あの少年が、こんな美少年に成長していたとは~!!

嬉しい限りではありませんか!
ジョージの目が捕える彼の綺麗な目、小さな唇・・そして海での奔放な裸身・・・ドキドキものです



いやいや、しかし、コリンもとっても綺麗な体でしたね。
「マンマ・ミーア」の時は正直、ぽっちゃり?って思いましたけど、すごく体を絞って、スリムになっていて。
スーツ姿も、海で漂う裸身も綺麗でした。


世界的なファッション・デザイナーであるトム・フォードの初監督作品。

映像や色彩に見える、そのセンス、美意識。

ちょっとセピア色がかった映像にノスタルジーと憂いを感じ。
トムとの思い出のシーンは、美しい「白」をちりばめて・・・。


ジョージの住んでいる家がまた素敵~♪
こんな瀟洒で落ち着いたセンスのいい家に住んでいても、愛する人を失ったら・・・癒されないのね~。

家具や自動車、ファッションに至るまで、磨かれたセンスが感じられる作品でした。
そうでした、音楽も。

ジョージがこの世に別れを告げようとするときに、部屋でかけたオペラ。
アリア『私は遠くへ行きましょう』でしたっけ?
なんとも心憎いばかり。






※ネタバレしていますので、未見の方はご注意くださいね。




だけど、未練はないはずなのに、拳銃を口に押し当てながら・・枕の位置を治したり、シーツの汚れが気になって寝袋を出したり。

ケニーに誘われて飛び込んだ夜の海、海中漂うジョージの姿にやがて降り注ぐ光にも・・どこか再生を感じたり

まるで自分を守るかのように(拳銃を抱きしめて)眠るケニーの姿に、光を見出したかのような、満ち足りた表情まで浮かべたジョージを見て
てっきり、このまま希望を感じるラストへ~と向かうのかと思いましたが、
運命ってなんて皮肉なものなのでしょう。


発作に胸を抑えるジョージ・・・彼を迎えにきたのは(ケニーではなく)愛しいジムでした。
優しいキスを受けながら眠りにつくジョージの顔の安らかなこと。


このラストもまた、監督さんの美学、もしかしたら理想の姿を描いているのではないかしら・・・そんな風に感じました。
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