2011
03.21

「扉をたたく人」

扉をたたく人 [DVD]扉をたたく人 [DVD]
(2009/11/20)
リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス 他

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コネチカットで大学教授をしているウォルターは、妻を亡くして以来、仕事にも意欲が出ず、孤独な毎日を送っていた。
ニューヨークでの学会出席も学長からの命とあってしぶしぶながら出席することにしたのだが、長らく使っていなかったアパートに向かうと、そこには見ず知らずのカップルが。

(そこがウォルターのものとも知らず)騙されて暮らしていた若い二人を見かねたウォルターは、宿が決まるまでの間、部屋を貸すことを申し出る。
シリア出身の移民青年タレクとセネガル出身の恋人ゼイナブ、若い二人とウォルターのの奇妙な同居生活が始まった。

やがて、タレクの叩くジャンベの音に魅せられたウォルターと若者の間には友情が生まれてゆくのだが・・・。


昨年、その評判の良さを聞いて、これは見なくては!と思いつつ、未見だった本作、
地味映画推進委員会のメンバーさんにご紹介いただいての鑑賞となりました。


主人公は妻を亡くした大学教授。
授業にも身が入らず、学生にもそっけない対応をしてしまう。せめて・・妻のようにピアノでも弾けたらと何人もの先生に来てもらうのだが、長続きしない。

ニューヨークでの学会も仕方なく参加したもの、でもそこで彼は、閉ざされた自身の心の扉をノックする・・・そんな人々に出会うことになるのです。

青年タレクの人懐っこい笑顔。思わずこちらも引き込まれて笑ってしまいそうになる、いい笑顔ですねぇ。

反対にちょっとシャイで内気な女の子ゼイナブの気持ちも分かるような気がします。
年も離れた、しかも全然境遇も違う年長の男性と・・・一緒にいたって何を話したらいいのかわからないっていうの、もっともだと思います。



タレクにジャンベを習い、誘われて公園でデビューを果たすウォルター。
夢中で叩くウォルターにタレクが笑いかける・・・・、この中盤のシーンが本当に素敵。

そのあと起こる、思いがけない出来事を思うとここでの二人の笑顔がたまらなく愛おしく思えてきます。


誤解にも関わらず、地下鉄での無賃乗車の容疑で逮捕されてしまったタレクは(不法滞在を咎められ)入国管理局の留置所へ送られてしまったのでした。

あの119事件の後、これまでとは全く違う風に、厳しくなったアメリカの移民への事情、これも確かに仕方がないことなのでしょう。
不法滞在を取り締まるということも当然のことでしょう。


しかし、その人間のこれまでの事情も学歴も全く、何一つも考慮されることもできないほどなのか・・・。
「ただここにいて、音楽をやりたいだけなのに・・・」
そう涙するタレクの姿に・・・なんとも言えない気持ちになってきます。


収容施設の壁に貼られた「移民は力だ!」のポスターが、それはもう・・空々しく、虚しく目に飛び込んできました。



後半、ウォルターの心のドアをノックする、もうひとりの人物が登場します。
心配して訪ねてきたタレクの母モーナ。
ヒアム・アッバスさんって、他にもいろいろな映画に出ている方なのだそうですが、一目見たら忘れられない女優さんです。

芯が強く、凛としていて、悲しみの中にも包容力を秘めていて・・・なんて素敵な女性なのでしょう。


タレクと出会い、ジャンベに夢中になり、モーナを知って。

登場した時には、どこにでもいる大学教授、いつも同じ表情。
そんなウォルターが、その眼鏡の奥の瞳を思わず覗き込んでみたくなるような、とってもチャーミングな表情を見せてくれるようになるのです。


アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされたリチャード・ジェンキンス、味のある、素晴らしい演技でした。



ジャンベの音も、この映画の主役のひとつでしたね。
陽気で力強くて・・・聞いていてからだも動き出してしまう。


静かでしっとりとしたピアノのメロディーが間で印象的に使われることによって、より際立ったような気がします。






ラストシーン、ウォルターは、地下鉄のベンチに座り、一心不乱にジャンベを叩きます!

友達を失った悲しみ、愛する人を失った辛さを込めて。
遠く離れてしまった友に届け!とばかりに。

でも、ただ後ろを向いてばかりは生きないゾ!と、熱い思いは失われていないゾ!と。

そんな思いもしっかりと伝わってきました。





この映画を薦めてくださったお友達は、先日の地震で今、節電生活や、物のない不自由な生活を送られています。
被災地の方々もどれほど大変な毎日を送られていることでしょう。


「ガンバレ」「みんなガンバレ~!!」
ウォルターの叩くジャンベの音に、いつのまにかそんな思いまで込めてしまった私でした。

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コメント
瞳さん、こんばんは。
無沙汰してしまいました・・。
こちらは、まだ余震や物資の不足、そして原発事故のことなど、不安定な日常ですが、それでも被災地の皆さんのがんばられている姿を観ると、とても落ち込んでいる場合ではないし、なんとか心を立て直しながら過ごしています。
というわけで、シネコンも閉鎖されたままで、いったいいつ再開するのか分かりません。
予想外に波紋は大きく広がっていたようです(涙

この映画、観て下さってありがとうございました。
瞳さんの感想を、とても楽しみにしていたんですよ~~、ホント!!(^^ゞ
タレクを演じた俳優さん、とてもチャーミングな人でしたね。
笑顔が人柄を表すというか、爽やかで素敵でした。
ジェンキンス演じる教授とタレクの出逢いが、不法侵入のような形だったので、最初はどうなるのかと思いましたが、タレクの外見からは想像も出来ない誠実そうな人柄が、教授の心を穏やかにした感じでしたね。
でも、物語の展開は徐々に厳しくなっていく中、教授がシャンベのリズムに乗って、どんどんポジティブになっていく様子がうれしかったです~。
タレクの恋人も、そして美しいお母さんも・・、皆良い人!
911が、そんな人々の居場所を狭め、交流も阻んでしまった事が本当に悲しいですね。
あのお母さんと教授の関係も素敵でした・・。
ラストシーンもね、ちょっとうるっと来るような感じでした。

瞳さんの感想の最後の5行で、私、号泣です(苦笑)
ありがとうございます!!
そして、そうです! みんな、がんばれ!!ですよね。
私も、前を向いて、気持ちも盛り上げて行こうと思います。
とても素敵な感想をありがとうございました。(^^ゞ
みぬぅdot 2011.04.03 00:23 | 編集
>みぬぅさん
おはようございます。

まだまだ余震があるようで、昨夜も地震速報を見て辛くなりました。
原発のことも・・・本当に心配ですよね。

そちらのシネコン!!閉鎖されたままなんですか・・・・。
計画停電とかあるので、上映とか難しいのでしょうか。それにしても、地震の爪痕の大きさ、驚いてしまいますね。


ブログを覗きにきてくださってありがとう♪
はい、この映画、本当に心に響く作品でしたね。

俳優さんたちの魅力的だったこと。
>ジェンキンス演じる教授とタレクの出逢いが、不法侵入のような形だったので、最初はどうなるのかと思いましたが

そうでしたね、ハラハラしました。
でもタレクの笑顔は本当に爽やかで、2人が公園で笑いあいながらジャンベを叩くシーンなんてね・・・嬉しくなってしまいましたよね。

> 911が、そんな人々の居場所を狭め、交流も阻んでしまった事が本当に悲しいですね。
厳しくなってしまうのも、仕方ないことかなとは思いながらも、ああいう風に一人の人間の居場所が奪われていくのには、心が痛みますよね、
どうにかできないものなのか・・って。

> 瞳さんの感想の最後の5行で、私、号泣です(苦笑)
> ありがとうございます!!
あぁ、そんなことを言ってもらえると・・・もらい泣きしそう。
こちらこそ~!こんな素敵な作品をご紹介いただいて、ありがとうございました。

> そして、そうです! みんな、がんばれ!!ですよね。
> 私も、前を向いて、気持ちも盛り上げて行こうと思います。

どんどんと大きく、力強くなるジャンベの音!勇気をもらえるラストでしたね。
日本もがんばれ~!と思わずそう願いながら見つめてしまいました。

これはもう、忘れられない作品ですね♪
dot 2011.04.04 11:52 | 編集
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