2010
09.29

「ずっとあなたを愛してる」

ずっとあなたを愛してる [DVD]ずっとあなたを愛してる [DVD]
(2010/09/09)
クリスティン・スコット・トーマスエルザ・ジルベルスタイン

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15年の服役を終えて出所したジュリエットは妹レアの家に身を寄せることになる。

出所した彼女を自分たちの家庭に迎えたレアの夫は複雑な思いだが、レアはずっと胸にしまってあった姉への気持ちを忘れることはなかった・・精一杯の思いを込めて彼女を支えようとするのだが・・。





たとえどんな罪を背負っていても、消えることのない哀しみを抱えていても・・・・いつか、またいつか、人は少しづつ歩き出すことが出来る。

再生への道を描いた作品は少なくないと思うのだけれど、この作品はこれまで見てきた作品とはどこか違う印象を覚えた・・・。

何故だろう・・・と考えてひとつ思ったのは、この作品が全く過去のシーンや回想に頼らずにただただ・・・出所したジュリエットと彼女を迎えた人々の、現在進行形で物語が描かれていた・・というところ。


15年もの空白の時間があるのだから、普通だと、たとえば父や母との思い出のシーンだとか、息子との回想シーンだとか、そういう過去のシーンが登場して、ジュリエットの心のうちやレアの思いをアピールしてもいい題材だと思うのに・・。

まるで頑なに閉ざしたジュリエットの心のように、そういうシーンは描かれなかった。

反対に、今現在の(認知症として入院している)母親との面会のシーンを描いて、たびたび訪ねているのにレアを知らない人と追い返す母親が、15年ぶりのジュリエットに駆け寄り抱擁する姿を見せる。

エリート医師だったジュリエットはたぶん自慢の娘、その長女が犯した罪をどうしても許すことが出来なかった母親。
一切縁を切ってしまった母親が、記憶を無くした今は娘を認めるという・・皮肉さ。
(ただ、私には自分の娘がたとえどんな罪を犯しても縁を切るなどということは考えられないんだけれど・・)


ジュリエットを迎えたレアの家族や友人たちの反応・・、
聞きたがり屋の(レアの)養女プチリスの質問攻めや
突然現れたジュリエットの過去を知りたがる友人たち、子どもをジュリエットに預けて留守にすることに激怒するレアの夫・・。

そして2週間に一度の警察官との面会や再就職の様子・・それらのシーンがとても丁寧に、じっくりと・・自然な姿で描かれていく。



自分の犯した罪を、たぶん世界中のだれよりも一番厳しく罰していたジュリエット、心を閉ざし、殻に閉じこもっていた彼女が、レアに訪ねたあの言葉。
「私があっちの世界にいた時にあなたは(私のことなど)すっかり忘れていたでしょう」

自分などいなくても世界は普段通り、だれも気にすることなどない・・。


ところがレアは姉に日記帳を見せる。
たとえ、1日の何分かだけでも姉の名前を書きしるし、忘れることなどなかったと。

世界は普段通りでも、誰かがほんの少しでも・・ずっと自分を思っていてくれる。


戻ってきた世界に、怯えや恐怖も感じていたかもしれないジュリエット(出所前が一番怖かったという言葉)が、少しづつ踏み出していける一歩になったのは、やはり妹レアのこの言葉じゃないかなぁ。


可愛いプチ・リスとのやりとりや、言葉は出せないけれど優しい瞳で彼女を見つめてくれるレアの義父との時間、
やがてジュリエットを信じ子どもたちを任せれくれるレアの夫リュックの信頼も彼女の心を和ませてくれるもの。


ジュリエットを理解し、彼女を想うミシェルとの静かなシーンもいいな。
二人が階段の上からなにか美術品を見ながら話しているシーンがあるのだけれど、画像の左手前に天使の像が見えて。
何故だろう、このシーンがとても優しくて思わず泣きそうになってしまった。



もしかしたら、ジュリエットの犯した事件については、最後まで明かされないまま終わってしまうのかしらと思ったのですが、
終盤にはその理由は明らかにされます。
そのシーンのジュリエットの激情!!これまで抑え込んでいた感情が一気に爆発したかのようでした。


きっと何かどうしようもない理由があってのこと・・と思っていたジュリエットの罪は予想どおりでしたが、
彼女がただひとりで息子の辛い状況に立ち向かわなけれなならなかったという事実にも驚かされてしまいます。

いや、でも彼女はそんな辛さ、悲しさをほかの誰にも味わせたりしたくなかったのかもしれません・・が。





ラストシーン、
階下から呼びかけるミシェルに「私はここにいるわ」・・と、そうはっきりと答えたジュリエットの表情は、穏やかさに満ちていました。



クリスティン・スコット・トーマスの演技は、圧倒されるほど素晴らしかった
刻まれた皺、どこか怖いようなジュリエットの表情が、いつのまにか、まったく自然に・・とても美しくて

レア役のエルザ・ジルベルスタインも良かった♪


出来ればこういう作品こそ、劇場で観たいのですが・・・香川では未公開でした。残念です。

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