2010
04.09

「未知への飛行」

未知への飛行 フェイル・セイフ [DVD]未知への飛行 フェイル・セイフ [DVD]
(2007/07/25)
ヘンリー・フォンダダン・オハーリヒー

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米ソ冷戦の時代、核爆弾を搭載したアメリカ軍の爆撃機が巡回中、機器の故障によって誤ったソ連爆撃命令を受信してしまう!
進行制限地点(フェイルセイフ・ポイント)を超えてしまったら、もう爆撃機はどんな帰還命令も受け付けない。

合衆国大統領は、ホットラインで直接ソ連首相と交渉し、核爆弾の発射を食い止めるため爆撃機の撃墜を要請するのだが・・。

システムの故障によって誤った攻撃命令を受けた爆撃機が、刻一刻とソ連上空へ迫ってゆく・・。
あらすじを聞くと、「え!?」あの作品と同じでは・・?と思ってしまう本作。

もちろんそれを意識してでしょう、DVDの特典に「博士の異常な愛情」の予告が付けられていたりして・・。

博士の異常な愛情 / または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか [Blu-ray]博士の異常な愛情 / または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか [Blu-ray]
(2009/08/05)
スターリング・ヘイドンピーター・セラーズ

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3役を演じたピーター・セラーズの怪演ぶりに圧倒されたキューブリック監督の「博士の異常な愛情」、
恐ろしい事態を唖然としてしまうような・・ブラックコメディーに仕上げた作品は、それはもう強烈な印象でした。


かたや、ルメット監督は、こうした一大危機を真正面からとらえ、緊迫したストーリーを盛り込みました。
そして最後には驚くような結末が待っていたのです・・!

私にはこちらの方が衝撃が大きかったですね


刻一刻とソ連へと迫ってゆく爆撃機。
その様子もただレーダー地図?のようなもので描かれるだけで、決してセットもお金がかかっているなんていえないのに・・全然そんなことが気にならない。

一大事に人々が取る行動を克明に描きながら、貴重な時間がどんどんと過ぎてゆくのをそれはもう胃が痛いような思いで見つめてしまう・・。
その緊迫感・・、さすがルメット監督だなあと思います。

密室の中で通訳と二人、大統領がホットラインでソ連首相と交渉するシーンは特に見事。
ルメット監督といえば「十二人の怒れる男たち」も密室劇でしたよねぇ。
沈痛な面持ちながら冷静沈着に交渉を重ねる大統領と・・言葉のニュアンスからソ連側の意向を汲み取ろうと真剣な通訳の青年の表情をカメラが追う。
もうまばたきなんてしていられない。


そしてそんな緊張は、ラストに向けてどんどんと高まってゆくのです。
まさか、まさか・・そんなことにはならない・・はず・・などと(願いつつも)タカをくくっていた私に、大統領の決断は驚きを越えて衝撃でした。
大統領を演じるのが(「十二人の怒れる男」と同じく)ヘンリー・フォンダだから、きっとなんとかしてくれるに違いないって・・。


大統領の握った電話の向こうから聞こえた「キーーーーーーーン!!」という長い長い金属音、
この音に体が冷たくなる思いがしました。
なんとこの映画には音楽が全く無かったのですが・・静かな空気を切り裂くように響いたこの音が、この映画の見事なまでに印象的な、そして辛すぎるBGMだったのでしょうか・・。


過激な政治学者を演じたウォルター・マッソーの憎まれっぷりも徹底しているし
冒頭悪夢にうなされた将軍の最後の一言も心に残ります。


昨日、アメリカのオバマ大統領とロシアのネドベージェフ大統領は、核軍縮条約に調印をしました。
しかし・・・世界中の国々がどれほどの核爆弾を抱えていることか・・。
その恐ろしい事実に、この映画のようなことが決して起こりませんように・・と願わずにはいられません。

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コメント
UPしましたね。
『未知への飛行』と『博士の異常な愛情』は驚くほど似通った映画です。『未知~』は濃厚なサスペンス。『博士~』は風刺のきいたコメディーですが・・・。
日本では、『未知~』は18年も遅れて公開されたので『博士~』のマネだと思われてますが、実は本国では同じ年に公開されました。

私のサイトのREFERENCEのコーナーで紹介している『テレキネシス』という本(漫画)は2作品とも取り上げていませんが、別の作品の紹介で、このような件があります。

「同じ年、2つの国でまったく同じ設定の映画が生まれた。スタッフには何の繋がりも無いが、同じ時代を生きる才能同士は、しばしばそういう偶然が起きるのです」

この場合は『紳士同盟』と『オーシャンと11人の仲間』ですが、『未知~』と『博士~』にも同じ事が云えますね。誰かが「こんな映画を作ろう」と思えば、別のところで何故か同じ考えをする人が居る。名作『タワーリング・インフェルノ』も、元々は別映画会社で別々のスターを使って製作の予定でしたが、双方が同じ様な映画を制作するのを知ってワーナーとフォックスが手を組んだのです。

話がそれましたが、私的には『未知への飛行』に軍配を挙げますね。
監督のルメットは、とにかく徹底してリハーサルをするのが有名で、『狼たちの午後』や『オリエント急行殺人事件』など密室劇の演出はピカイチです。瞳さんも云っていますが、とにかく始まったら目が離せないし、無駄な動きやシーンは一つもない。あとフォンダの堂々たる大統領の演技ですね。彼はよほど大統領の人間像を研究したのでしょう。

実は最近キューブリックの作品を殆ど観直しました。本作の他に『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』『アイズ ワイド シャット』の5作品です。
普通、監督って得意分野があり、作品がヒットすると同じ俳優を使いたがるものですが、驚くのは5作品すべてキャストが違うし、5作品とも同じ様な内容ではないということですね。キューブリックも徹底主義ですし、『博士~』はモノクロですが他のカラー作品は色彩の美しさに圧倒されます。『博士~』の司令部や爆撃機の内部など、何の資料もないのに徹底的にリサーチして想像で本物ソックリのセットを作り上げたそうです。

『未知への飛行』と『博士の異常な愛情』の2作品を同時に見比べるのは、かなり面白いと云えるでしょう。どちらも最後に残るのは“戦争”という名の悲惨ですが・・・。
NARCYdot 2010.04.10 22:18 | 編集
>NARCYさん
早速読んでくださって、丁寧なコメントありがとうございます~♪

本国では同時年の公開、原作についてもいろいろ揉めたと読みました。
(別々の原作で盗作疑惑が出たりしたのですね)
日本では18年も遅れての公開だったのですか~!!
私は教えていただくまでこの作品、全然知りませんでした。

>「同じ年、2つの国でまったく同じ設定の映画が生まれた。スタッフには何の繋がりも無いが、同じ時代を生きる才能同士は、しばしばそういう偶然が起きるのです」
なるほど~!!
そういう偶然が生んだ作品、見比べてみるのって映画ファンにとっては見ごたえあって面白いですよね。

>話がそれましたが、私的には『未知への飛行』に軍配を挙げますね。
はい、私もこちらの作品の方がずっしり、そして心に残りました。
こんなに真正面から捕えていながらも、それがただただ重くなるだけじゃない・・、たとえば悪夢のシーンがあったり、いろんな思惑や行動をとる人間の姿があったり。
でもそういうエピソードもしっかりと無駄なくまとめ上げられていましたよね。
リハーサルも徹底しているのですね、なるほど~。

ええ、ヘンリー・フォンダの演技も素晴らしいですよね。
まさにアメリカの良心的存在の彼が演じる大統領、説得力があったからこそ、あの衝撃の決断に驚いてしまう・・。

すごい~。キューブリック作品も見直されたのですね。
『2001年宇宙の旅』『シャイニング』だけかな、私が2度観たのは。
>すべてキャストが違うし、5作品とも同じ様な内容ではないということですね
あ!そういえばそうですね。
常に新しいものにチャレンジしてそれを見事に描き上げる。どの作品も確かに忘れることができない作品ですよね。
私もこの作品を見て、『博士の異常な愛情』再見してみようと思っています。
今度はあっけにとられてばかりじゃなくって・・セットもチェックしてみますね(笑)

この作品は大学生の息子と一緒に観たのですが、『博士の異常な愛情』も観ていた息子ともいろんな話が出来ました。
ご紹介してくださってありがとうございました。


dot 2010.04.12 07:53 | 編集
そんな大きな息子さんがいらっしゃるんですか!!という事は・・・(計算中・・・計算中・・・計算中・・・)年齢の話は止めましょう(笑)でも、たぶん私と瞳さんの世代は同じですよ。(さらに笑)

では『2001年宇宙の旅』の話を。
最初、高校生の時にTVで初めてこの映画を観ましたが、その時ははっきり云って「何じゃ、こりゃ」と思いました。若さゆえ、SFといえば戦闘機やモンスターを想像しますからね。『惑星ソラリス』と同様に難解だったので。
今観るとかなりゾクッとするシーンが2つあって、まず何と云っても自らの意志をもつコンピューター“HAL9000”の行動ですね。何年か前に、アメリカ人が選ぶ映画の悪役ベスト50があって、“HAL9000”も上位にランクされていました。無機質な赤い目玉が印象的で、何の躊躇も無く乗組員を殺害するところは背筋が凍りました。
あとは、やっぱり音楽です。宇宙ステーションのシーンでリヒャルト・シュトラウスのワルツの名曲『美しく青きドナウ』を選曲したキューブリックのセンスには脱帽で、これ以上の曲はあり得ないと感じました。衣装やメイクなど多少の古さを感じますが、1960年代に出来た映画とは今でも信じられません。

御存知だと思いますが、この映画は『2010年』という続編があります。私のすきな俳優ロイ・シャイダー主演ですが、こちらの“HAL9000”はさらに人間らしい、しかし“悪”ではなく、むしろ“正義”でラストは結構泣けますね。
あとSF映画で『アンドロメダ…』は観ました?これも引き込まれますよ。
未見だったら是非!

『2010年』1984年 アメリカ映画 ピーター・ハイアムズ監督
『アンドロメダ…』1971年 アメリカ映画 ロバート・ワイズ監督
『惑星ソラリス』1971年 ソビエト映画 アンドレイ・タルコフスキー監督
NARCYdot 2010.04.14 14:29 | 編集
>NARCYさん
あはははは~~、計算しましたね~?(笑)
まだもっと上に娘もいたりしますよぉ~(爆)

えへっ、でも、同世代・・ということにしといてくださいね~(笑)

『2001年宇宙の旅』は、結構あとから観たのですが、それでも「何じゃ?これ」って思っちゃいました。
でも、やっぱりHAL9000にはゾクッとしちゃいましたよね。
それまでああいうキャラ?設定を観たことがなかったので。
アメリカ人が選ぶ映画の悪役ベスト50・・あっ、読んだような覚えがあります・・。
HAL9000も選ばれていたのですね。

音楽は、なんていうか、もう(怖さではないですが)ゾクゾク~~♪を背筋を感動が駆け抜けました。
本当に、どうしてあの曲を選んだのでしょう、感性というか、センスに驚かされますよね。

『2010年』、実は最近やっと続編の存在を知ったのですよ~(一般には意外に知られていませんよね?何故かしら)
なのでまだ未見なのですが、NARCYさんのコメントを読んでこれは観なくちゃ~!!て思いましたよ。
こちらの“HAL9000・・・そうなんですね~!!気になりますねぇ。

『アンドロメダ…』も未見ですよ~。
ロバート・ワイズ監督なのですね、こちらもチェック・・と(笑)
あぁ・・なんだかSF作品もいろいろ観たくなってきましたよ~♪
お薦め、いつもありがとうございます。またいろいろ教えてくださいね。






dot 2010.04.16 08:01 | 編集
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