
映画の中にお茶のシーンが登場すると俄然、断然乗り出しちゃう(笑)
紅茶のシーンが印象的な映画をご紹介している本館TeaPleaseのコンテンツ
「Tea&Cinema」も50作品を越えました。
HPの方では鑑賞順に並んだ記事♪
この機会にこちらのブログでは50音順に整理してみようかなぁ・・と気まぐれな思いつき(笑)
あくまでお茶のシーンから見た映画のレビューですが(笑)よろしかったらぜひどうぞ~♪
この映画にもお茶のシーンありましたよ~
そんな情報もいつでもありがたくお待ちしてます。
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こうやって並べると(か行)のお茶のシーンのある映画、なかなか個性的な面々揃いですゾ~(笑)
「ギャングスター№1」
2000年イギリス 監督 ポール・マクギガン
キャスト ポール・ベタニー マルコム・マクダウェル デヴィット・シューリス サフロン・バロウズ60年代、ロンドン。
暗黒界の貴公子と呼ばれた男、フレディ・メイス。
ルビーのカフリンクにタイピン、粋なスーツ姿に女性は見蕩れ、
そのカリスマ性で部下も多い。
フレディの元で働くことになったひとりの若いギャングスター。
ギャングスターには、フレディの姿しか目に入らない。
彼のようになりたい、と願い、やがてその右腕的存在となってのし上ってゆく・・
けれでもフレディがカレンと恋に落ちた時、憧れは、歪んだ愛情となり、ついには憎しみさえ芽生えて、ギャングスターの心を蝕んでゆく・・
「お茶、飲むかい?」
下っ端で臆病なエディは、訪ねてきたギャングスターにお茶を勧めながらも、得体の知れない怖さを隠すことが出来ない。
手に持っているのはなんとも可愛いコゼーをかぶったティーポット。
あまり似合ってないティーポットにちょっと可笑しくなりながらも、きっと心優しい家族と暮らしているんだろうなあって想像していたら、ギャングスターの目の中に見え隠れする狂気が一瞬にして空気を冷たくする。
そこでエディから無理やり聞き出したある驚くべき情報を、ギャングスターは、自分の胸の内だけにしまいこむ。
カレンからフレディとの結婚を知らされるシーンは、彼女が淹れてくれた紅茶を飲んでいる時だった。
ひとりの男として幸せになるフレディの姿は、ギャングスターにとっては、裏切りでしかない。
落ちた偶像と化したフレディにとってかわり、自分こそが、№1になる!
裏切りには裏切りを。
殺人には殺人を。
やがてフレディにかわって組織のボスとなり、ありとありゆる手を使って暗黒界を牛耳る存在となったギャングスター。
ひた走り30年が過ぎたとき、彼の耳に飛び込んできたのは、フレディの出所のニュースだった。
「お茶は?」
果たしてお茶など淹れたことがあるのだろうか?
乱暴に茶葉を放り込んだギャングスターの淹れたお茶をフレディは、なんとも言えない顔で飲む。
かってフレディが座っていたソファに座り、彼を迎えるギャングスター。
けれども彼には、ボスとして慕ってくれる部下も無く、ましてや、お茶を淹れてくれる人もいない。
手にしたものの違いは余りにも大きい。
いまや二人は、どうしようもないほど遠く隔たり、もうお互いの人生が交わることもない。
さすがですよ!イギリス映画。
ギャング映画でもお茶のシーンが!
そういえば「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」でも戦いの前に「お茶が飲みたい」って若者が言うシーンがありましたね。
壮絶なシーンもある、この映画ですが、こんな風にお茶のシーンがいろいろあったり、ギャングスターの背中に炎が渦巻いたり、ちょっと不思議風な映画でもあるんですよね。
ギャングスターの晩年はマルコム・マウダウェルが演じています。
キッチンでものすごい勢いでお茶を入れるギャングスター。できたら、ポール・ベタニーが淹れてる姿も見たかったんですよね(笑)
それにしても、ギャングスターに名前がないのは・・、№1になろうとする、けれでも何にもなりきれない男・・ってことでしょうか。
「俺はスーパーマンだ」「キングコングだ!」と自ら吼えてましたけど。「銀河ヒッチハイクガイド」
2005年アメリカ・イギリス 監督 ガース・ジェニングス
キャスト マーティン・フリーマン サム・ロックウェル モス・デフ ズーイー・デシャネル
ビル・ナイ“紅茶の葉が東インド会社の歴史を知らないように
彼もまたこれから起こる地球の運命を知らなかった・・・”
アーサ・デント、平凡な英国人。
パジャマのままいつものように紅茶を入れた彼の静かな朝は、突然の振動に破られた。
ミルクティーを入れたスポードのカップが、テーブルから落ちてゆく。
道路建設の立ち退き工事のため、彼の家は強制撤去されることに・・・
だが、取り壊されるのは彼の家だけじゃなかった!
宇宙のバイパス工事のため、なんと地球そのものが、12分後に爆破されてしまうとは!!
宇宙人だと告白する友人フォードに救われ、最後の地球人となったアーサー。
フォードが編集する〈銀河ヒッチハイクガイド〉を手に、彼ら二人の宇宙ヒッチハイクの旅が始まったのだった。
しかし!銀河系最大のベストセラー、〈銀河ヒッチハイクガイド〉をもってしても、宇宙のヒッチハイクは楽じゃなかった。
ヴォゴン星人に放り出され、あわや、宇宙の塵に・・・というところで彼らを拾ってくれた宇宙船。
その中には、ふたつの顔を持つ、あやしい、あやしい銀河系大統領と・・もうひとり。
何も知らずに最後の地球人女性となったトリシアは、実はアーサーが昨夜出会った気になる女性。
何か欲しいものは?と彼女に聞かれて「紅茶が飲みたい」と答えるアーサーは、やっぱり典型的な英国人かな?
でも宇宙船のキッチンで入れてくれた紅茶は、紅茶じゃなかったから・・・・
再会を喜びながらも彼女と大統領の仲が気になるアーサー。
けれでも、ゆっくりしている暇はなく!自分を誘拐した罪と、宇宙船を盗んだ罪で副大統領とヴォゴンに追われる大統領。
こうして4人と、宇宙で最も鬱なロボット、マーヴィンは、またまた奇想天外な宇宙の旅を続けることになるのだけれど・・・・
ヒッチハイクの間中、ずっと望んだ美味しい紅茶。
アーサーは、もう飲むことが出来ないのでしょうか、彼の家も、そして地球もすべて無くなった今となっては。
それは、映画を最後まで観て確認してみてくださいね。
スポードのカップにミルクティーが、実は再び登場したりして・・・ね。
※なんともシニカルなユーモア?チクチクと毒も隠れた独特の可笑しさ。日本人には絶対考えられないお話ですよね。
好き嫌いがありそうですけど、私は面白かったです。
イギリスのBBCで放送されたラジオドラマ(後にはテレビドラマ化されたそう)をノベライズ化した小説があるとか!読んでみたいな。
それにしても、あのタオル・・・あれこそ、私には宇宙の謎・・でしたよ(笑)
そして冒頭のイルカのシーン、人間は宇宙で3番目に頭がいい・・2番目はイルカって。じゃあ、一番頭がいいのは・・・何?何~?これもまた宇宙の謎かな(笑)。「薬指の標本」
2005年フランス 監督 ディアーヌ・ベルトラン
キャスト オルガ・キュリレンコ マルク・バルベ スタイブ・エルツェッグ・エディット・スコブ ハンス・ジシュラーイリスの薬指の先端は、レモネードを赤く染めて沈んでゆく・・・
働いている飲料工場で薬指の先を失ってしまったイリス。
新しい仕事先を探して港町へとやってきた彼女は、人々が持ち込む品物を標本にするという、標本室で働くことになる。
港町の小さなホテルの一室を相部屋で借り、毎朝船で職場である、標本室へと向かうイリス。
かって女子寮であったという、古い、眠ったような建物の中。
そこで標本を作るのは建物よりももの静かな、そして引き込まれるような不思議な雰囲気をたたえた標本技術士。
火事で家を失った少女が焼け跡で見つけたキノコ、
別れた恋人から贈られたという楽譜の、その奏でる音。
人々が永遠に遠ざけたいと思う品々が持ち込まれる・・という標本室。
汗ばむ夏の午後、静かに過ぎる時間、そして感じるのは彼の視線・・・
ある朝、ひどい雨に降られびしょぬれになって標本室に飛び込んだイリスに、標本技術士が渡す一杯のお茶。
思わず目を奪われたのは、そのカフェオレボウルのような大きなカップが、美しく透明なガラスであったこと。
湯気のたつ、熱いお茶がこんなにも美しい色をしているなんて。
それを飲み干すイリスの、濡れた喉、髪、そして薄いワンピース。
今はもう使われていない広い浴室で、濡れた洋服を脱ぐイリス。
けれでも彼女の細い足首を飾る、靴の革紐は解かれない・・
それは彼からプレゼントされた靴。あまりにも足に馴染む、赤い靴。
白衣の標本技術士のあの視線。
無垢で若いイリスの、その無防備さが見せる危うさ、美しさ。
ふたりのあいだに流れる空気に、思わず息を止めてしまう・・・
イリスが、ふたつめの標本を頼みに来た少女にお茶を出した時もティーカップは、透明なガラス。
今度は頬に残るやけどを標本にして欲しい。
少女の頬に触れる彼の手を思わず見つめるイリスは、二人が向かう地下室が気になって仕方なくて。
映画に登場するお茶のシーン。
そこにどんなカップが使われているか、いつもとっても興味が湧くのだけれど、この映画の、このガラスのカップ。
これには思わず唸ってしまいました。
無機質で硬い透明なガラス。
けれども、そこに淹れられたお茶が、驚くような美しい水色を見せるように。
標本室で、花開くように美しくなるイリスにドキドキさせられてしまいます。
それになにより、標本室ですから!!ガラスのカップはぴったりですよね。
「君は何を標本にしたい?」
最後に彼女が向かった先、彼女が選んだ場所。
迷うことなく、しっかりと歩いてゆくイリスに私にはかける言葉も無く、ただただその姿を見つめているだけなのでした。
※原作の雰囲気だと、ティーカップは白かなあ・・と勝手に想像していましたが、映画はよりミステリアス!!
ガラスのカフェオレボウルなんて初めて見ましたけど(もしかしたら、カップじゃなくって、何かの食器をああいう風に使ってるのかも)
原作には無いシーンですが、とても印象的で思わずこれは挙げなきゃ!!と思いましたよ(笑)
そういえば、原作ではキノコの少女にはレモネードとピーナッツチョコを出していましたっけ・・「グリーンフィンガーズ」
2000年イギリス
監督 ジョエル・ハーシュマン
キャストクライヴ・オーウェン デヴィッド・ケリー ヘレン・ミレン ナターシャ・リトル罪をおかし、刑務所で暮らすコリン・ブリッグスは、選ばれてエッジフィールド刑務所に移されることになった。
そこは高い塀も鉄条網もない、開放的な環境で囚人を更正させようという画期的な刑務所だった。
入所した囚人達の前にお茶が運ばれてくる。
「お茶とお菓子がきたぞ」驚く彼らに差し出されたティーカップ。
「カモミールがお勧めよ」
一般の刑務所とは違う開放的な雰囲気と自主性を重んじる所長の思いとは別にコリンは、心を開こうとしない。
人生をあきらめた彼は、誰とも交わらず投げやりだ。
だが・・・、クリスマスの夜、同室の老人ファーガスが彼に渡した一袋の花の種。
それがすべての始まりだった。
とうてい咲かないはずの花。紫の“においすみれ”が春に花咲かせた時、所長はある計画を思いつく。
囚人達の新たな労働としてガーデニングを取り入れようと。
誰もが期待をしない彼らの庭、しかし、それは驚くほど美しいものになった!
園芸の本を読み、勉強するコリン、彼にはなぜか園芸の才能があったのだから。
高名なガーデナー、ジョージアは、彼らの才能を買い、刑務所の外でのガーデニングに彼らを借り出す。
庭つくりにはげむ彼らに人の良い屋敷の主人が呼びかける「パイは好きかい?トライフルもある」
やがて聞こえる「ティータイム!」の声。
コリンはジョージアの娘プリムローズに心惹かれる。
「プリムローズ(桜草)」という名の彼女。赤い桜草じゃなくて、白い清楚な桜草を思わせる。
「赤い薔薇の花言葉は、熱愛だ」と彼女に手渡すコリン。
人生を投げて生きてきたコリンが、命を育てる喜びを知り、花たちにやさしく語りかけるシーンには嬉しくなってきます。
「人生は変えられる」そう言ったファーガスの言葉どおり。
やがて、彼らはかの「ハンプトン・コート フラワーショー」に出場することに!
(それは、英国王立園芸協会が開催する美しい宮殿の庭で行われるイギリスでも由緒あるフラワーショーなのです。)
様々な事件や出来事が彼らを襲う中、
コリンたちがフラワーショーで作る庭は、いったいどんな庭なんでしょうか。
人生は、お茶とガーデニング!!
まさにこう言ってもよいのでは!イギリスでは。
「クローサー」
2004年アメリカ 監督マイク・ニコルズ
キャスト ジュリア・ロバーツ ジュード・ロウ ナタリー・ポートマン クライヴ・オーウェンロンドン。たくさんの人が溢れるストリート。
なのに、なんでお互いに目を惹かれたのだろう。
♪僕の目は君に釘付け♪
ダンとアリスは、ロンドンのストリートで出会い、恋をして、一緒に暮らし始めた。
それから1年半後、ダンはアリスをモデルに小説を書き上げる。
本に掲載する写真を撮ってもらうためにスタジオを訪ねたダンは、そこで出会ったフォトグラファーのアンナに一目ぼれをしてしまう。
ダンを追ってスタジオに訪ねてきたアリスにアンナは、「お茶でもいかが」と誘う。
ダンのキスを拒めなかった気まずさを隠しながら。
けれども、お茶の誘いを断ったアリスは、二人の気持ちに気づいていて。
自分も写真を撮って欲しいとアンナに頼んだアリス。
その振り返った頬には、涙が光っている・・
やがて、ダンのいたずらから、アンナと偶然水族館で出会った医師のラリーも含め、4人の愛はからまりあってゆく。
からだと心、嘘と本当。
恋はどうやって始まって、どんな風に終わるのか。
クローサー、
お互いにもっと近づくこと・・・
けれでも近づこうとすればするほど、
手に入れようとすればするほど
愛するものを傷つけ、
本当のことを知ろうとすればするほど、
お互いの心が離れてゆく・・・
二組の男女の破局のシーンには、なぜかお茶のシーンが用意されている。
アンナと結婚し、幸せだったはずのラリー。
出張から帰ったある夜、お茶を入れようとするアンナの横で彼はある予感を感じている。
アリスは、ダンからはっきりとアンナへの気持ちを告げられる。
泣きながら、「お茶を入れて」とダンに頼むアリス。
とまどいながらもお茶を用意しようとしたダンの前から、彼女は姿を消してしまう・・
お茶を入れるシーンはあるけれど、お茶を飲むシーンはこの映画にはない。
恥ずかしいほど赤裸々な言葉が飛び交いながら、ベッドシーンは無いように。
愛の始まりと終わりを見せながら、愛し合う日々が描かれないように。
せめて、一緒にお茶を飲むシーンがあれば、
彼らの語る「愛している」の言葉が、
もっと暖かく、優しく、本当のように聞こえたかもしれないのに。
※う~ん、大人の恋愛なの?これは。
ないものねだりと、(男同士の)見栄と、狭い心しか感じられなかったよぉ(汗)
こんなのいや~って思ってしまうのは、俳優さんたちが上手すぎるからかもしれないですね~「ケース39」
2009年アメリカ 監督 クリスチャン・アルバート
キャスト レニー・ゼルウィガー ジョデル・フェルランド ブラッドリー・クーパー児童専門の社会福祉士エミリー。
熱意を持って仕事にあたる彼女は38件のケースを抱えてすでに手一杯の日々を送っていたが、
虐待の可能性があるかもしれない・・と報告を受けた39件目のケースも放ってはおくことは出来なかった。
10歳の少女リリーの自宅を訪問したエミリーは、両親の態度に不信感を抱く。
怯えながらも、父親の目を気にして言葉を発しようとはしないリリーの姿に、エミリーは、そっと自宅の電話番号を渡す。
そんなある夜、リリーからの助けを求める電話を受け、友人の刑事とともに家に向かったエミリーが見たものは、なんと両親が娘をオーブンで焼き殺そうとしている!!という驚愕のシーンだった。
危ういところを救い出されたリリー。
あなたと暮らしたい・・と望むリリーに心を打たれたエミリーは、里親が見つかるまでの間一緒に住むことに。
傷を負ったリリーの心を癒し、優しい眠りが訪れるようにとカモミールティーを淹れるエミリー。
髪を梳き、笑顔を交し合う二人の姿に、こちらまでほっと温かいお茶を飲んだような・・そんな気持ちになってくる。
しかし・・しかし・・・・!!?
物語はここから、思いがけない展開を見せてゆく。
エミリーの周囲の人々を襲う、恐怖の出来事。
疑惑が、エミリーの笑顔を固く、硬く・・強張らせてゆく時、あどけなく聡明な少女の瞳には何が映っているのだろうか。
ついにある決心をしたエミリーは、少女のためにもう一度カモミールティーを用意する。
あの時とは全く違う・・震える指先で。
お茶を飲み干すリリーの喉元をじっと見つめてしまうのは、エミリーだけではなく、私たちも同じこと。
温かいお茶のシーンが、こんなにもゾクゾクと冷たい空気を運んでくるなんて。
さあ、どうなってしまうのでしょう。
エミリーを襲う恐怖の展開に最後の最後まで目が離せませんよ~~(汗)
※カモミールティーといえば、お腹をこわしたピーターラビットにお母さんが飲ませてくれたお茶ですよね。
疲労回復、リラックス作用、風邪にもいいという、とっても嬉しいハーブティー。
私もよく飲むお茶なのですけど、ちょっと当分は飲みたくないかも~~(汗)2回登場するカモミールティーのシーン、最初は愛情だけの、2度目は、恐怖と苦い決意のこもった・・。
さて、どんな味だったことでしょう。「ゴスフォードパーク」
2001年アメリカ
監督 ロバート・アルトマン
キャスト マギー・スミス ヘレン・ミレン アラン・ベイツ クリスティン・スコット・トーマス ジェレミー・ノーザム ライアン・フィリップ 他他1932年イギリス。
ウィリアム・マッコードル卿のカントリーハウス「ゴスフォードパーク」には、大勢の招待客が訪れていた。
それぞれのメイドや付き人を従えて、たくさんの荷物が運び込まれる。
招待客たちが、美しいティーカップで午後のお茶をいただいているうちに彼らの付き人たちは屋敷の使用人たちのいる階下へと降りてゆく。
やがて、晩餐が始まった。
見事な食器や美しいグラスに注がれるワイン。執事のジェイソンと女中頭のミセス・ウィルソンの手腕だろうか、晩餐は華やかに進んでゆく。
しかし、招待客達はみんなそれぞれ思惑を持っていて、彼らの関心の多くはマッコードル卿からどのくらいの支援が得られるかということなのだから。
さりげない会話の中の毒・・・
階下では使用人たちが忙しく働いている。
銀製品を磨いたり、アイロンをかけたり、忙しい中でも彼ら(というより、彼女らかな、もっぱら)は、ゲストたちの品定めやゴシップに余念がないのがおかしい。
全編嬉しいほどのお茶のシーンが多いこの映画、中でも印象的なお茶のシーンを。
翌朝の“アーリーモーニングティー”。メイドたちがそれぞれ銀のトレイに乗せられたお茶を女主人達のところに運んでゆく。
トレンサム伯爵夫人(マギー・スミスが演じるこの夫人は辛らつでなかなか面白い)は、「これが楽しみなのよ」と待ちきれない様子。
トレイの上にはちゃんとお花も飾られてあって。
マーマレードが自家製ではなく市販のものだったのがちょっとお気に召さない夫人だったが、ベッドの上でのこのモーニングティーはうらやましい限り。
(ちなみにこのベッドの上でのモーニングティーは未婚の女性には許されていないのでこれを楽しみたいなら、ぜひ結婚せねば・・ということですね)
もうひとつのお茶のシーンは、後半屋敷の主人マッコードル卿が殺され殺人事件の捜査にやってきた警部(まじめに捜査する気があるんでしょうか?笑)がシルヴィア夫人にお茶を注ぐところ。
夫人に質問しながら紅茶をついであげようとする警部。
「ミルクは先にいれないで」と夫人に言われ、あわてて注ぎなおすのだ。「私はいつも後から入れるんですけど、女房が先にいれるもので」と言い訳しながら。
「Milk in First」か「 Milk in After」か。
永遠の議論の可笑しさと夫が殺されたというのにお茶のミルクにこだわるこの夫人。愛情のなさが現れるシーンでした。
迷ってしまいそうに広い「ゴスフォードパーク」
こんなに大きなお屋敷を仕切る使用人たちの様子が実に丁寧に描かれていて飽きることがありませんでした。
洗濯部屋、台所・・・陶器のボウルにずらりと並んだ手作りのジャム。そして、なぜこんなにあるのか?「poison(毒)」の瓶。
彼らも、もちろん仕事の合間にはお茶している様子が見えます。主人たちの美しい華やかなティーカップとは違った、グリーンの落ち着いた柄のティーカップ。
夜、それぞれの仕事がほぼ片付いたのでしょう・・大きなテーブルにのったお茶とビスケットが見えます。
使用人には自分の人生はないと言う女中頭のミセス・ジェニングス。
「私は完璧な使用人だから」と言った彼女の最後の涙に心打たれました。
やがてやってくる華やかな貴族の時代の終わり。
見事なまでの舞台と俳優たちで楽しませてくれる映画です。
何度も観て堪能したい。
「ゴッドアンドモンスター」
1998年アメリカ 監督 ビル コンドン
キャスト イアン・マッケラン ブレイダン・フレイザー リン・レッドグレーブ ロリータ・ダヴィドヴィッチ「フランケンシュタイン」「透明人間」などの作品を世に送り出したジェームズ・ホエール監督の晩年をめぐる物語。
映画界を引退し、一人で暮らすホエール。
今日は久しぶりに彼にインタビューをしたいと客がやってくると言う。
プールサイドでインタビューを受けるホエールのもとにハンナが冷たい紅茶を運んでくる。
ゆらゆらと青く揺れるプールの水。
氷の浮かんだ大きなピッチャーにたっぷりと入れられたアイスティー。
冷たく冷えた紅茶には、もちろんレモンが浮かんでいて。
しかし、グラスに紅茶を注ぐハンナの視線は、ホエールに冷たい。
ハンナは、15年も彼に仕えてきたのだが、ホエールの同性愛には我慢ができずいつかは彼がその罪で地獄へ落ちるのでは・・と恐れているのだ。
紅茶を飲みながらのインタビューは、ホエールが最近悩まされる頭痛によって、中断される。
脳卒中の発作以来、ホエールの頭には過去の記憶が奇妙に浮かんでは、彼を苦しめるのだった。
そんなある日、ホエールは新しい庭師クレイトンを見かけ彼に興味を抱く。
お茶を飲まないかと彼を誘うホエール。
またしても・・と苦い思いでアイスティーを運ぶハンナ。
クレイトンは、ホエールから絵のモデルになって欲しいと頼まれ、有名な映画監督からの頼みと引き受けれのだが、ハンナから彼が同性愛者だと聞かされ反発する。
記憶の映像が頻繁にホエールを襲う・・・
貧乏だった子どものころの自分。
戦争で無くした愛する戦友の姿。
彼が生み出した怪物「フランケンシュタイン」
映画の世界では、創造主(神)として君臨したホエール。
しかし、現実の世界は、受け入れがたい試練を彼に与えてきたのかもしれない。
彼が創造した「怪物」は、現実の世界に相容れない自らの姿だったのだろうか。
「怪物はここにいる」
そうつぶやくホエール。
でも、反発しながらもクレイトンは、彼を分かろうとしてくれた。
あの嵐の夜。
彼の苦悩を垣間見たから・・・
ラストシーンは、クレイトンのそんな気持ちが表れた、暖かい優しいシーンです。
映画に登場する「フランケンシュタイン」の映像に、なんだか観てみたくなりました。
(子どもの頃は、たまらなく怖かった記憶しかないのですが。)
アイスティーを用意して。
- お茶のシーンのある映画(Tea&Cinema)
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