2010
03.26

「野いちご」

野いちご [DVD]野いちご [DVD]
(2001/07/25)
ヴィクトル・シェストレムイングリッド・チューリン

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医学の道に貢献したとして名誉博士の称号を受けることになったイサク老人。
78歳の老境を迎えた今、友も持たず孤独な思いを噛みしめる彼は、受賞日の前夜悪夢にうなされてしまう。

翌朝、予定を変更し義嫁マリアンと車で受賞会場ルンドへと向かった彼は、途中若き日に過ごした旧宅に立ち寄る。
思い出にまどろむイサクの脳裏に鮮やかに浮かび上がるのは、野いちごを摘む・・かっての婚約者サラの姿だった。



名作と名高いベルイマン監督作品。
いつか観てみたい・・と思っていた作品がBSで放映されていました。今月のBSっていいのが多い~♪


学問の道に没頭し、老境を迎えた一人の老人。
気づくとすぐそばにいるのは家政婦の老女だけ。
孤独を感じつつ、眠りについた彼が冒頭に観る夢は印象的です。

人気の全くない冷たい街かど・・音もないその世界。針の無い時計が刻むその音だけが響く。
やってきた馬車が棺桶を落としていってしまうのだけれど、その中から手を伸ばし彼を掴む遺体の顔は・・彼自身。


悪夢を振り切るようにルンドへの旅に出たイサクは、道中若者たちや一組の夫婦と出会い彼らの姿にさまざまな感情を揺り動かされ・・・車中まどろめば今度は若き日のいろいろな出来事が夢となってあらわれてくる。


存在だけで眩しいような若者たちの姿、醜く喧嘩を繰り広げる夫婦の虚しさ・・、
現実のそうした姿が、またイサク自身の戻ってこない青春時代や、結婚生活に重なってゆく。
過去と現在、そして現実と夢が混じりあいながら紡がれてゆく物語なのですが、私も決して若いとはいえない身。
イサク老人が自分のこれまでの人生を振り返り、苦い思いをかみしめるシーン、なんだかねぇ・・しみじみと感じる部分がありました。



婚約者を弟に奪われても、感情をあらわにせず、不倫をした妻を責めもせず・・。
他人からは優しい人と言われながらも、それは感情をあらわにして面倒になることを恐れ、誰かと深くかかわることを避けてきた。
自分の内にこもり人の感情を思いやることをしなかった・・そんな人生の空虚さを夢の中で暴かれた彼には、夢の中に現れる婚約者のサラの美しさが懐かしく、現実の世界の女学生サラ(二人のサラは同じ女優さんが演じています!)の無邪気さが眩しい。


そしてこの道中、イサクはまた初めて自分の生き方が息子にも影響を与え、息子と嫁の中にも影を及ぼしてしまっている・・という事実を知るのです。
う~ん、このイサクの息子、まだ若いだけにイサクよりも心配だったりして(汗)
義嫁のマリアンヌに思わず肩入れしちゃいます。



もっと思うままに素直に愛情を表現していたら・・、面倒や傷つくことを恐れずに愛したり悲しんだりしていたら。
人生はもっと豊かになっていたのだろうか・・。
そんなイサクの悔いを、それでも決して責めるばかりではなく

同じ時間を過ごしたマリアンとの仲が少し修復した姿を見せたり
若者たちから名誉教授のお祝いの歌を捧げられる微笑ましいシーンがあったり。
ベルイマン監督ってこんな優しい映画も撮るんだ・・っていう嬉しい驚きがあったのでした(あまり観ていないくせに難解っていう印象ばかりあったのでした)


女学生サラの「今日も明日も・・イサクが好きよ」
いかにも若者らしいストレートな表現も可愛いのだけれど


「長年の付き合いだから、名前で呼んでもらえないか」と家政婦に提案したイサクに
「とんでもない、先生は先生です。つつしみは大事です」
と彼女はすげなく断りながら
「鍵はかけないでおきますね、ご用の時はいつでも呼んでください」って言うシーン。

このシーンが好きです♪じんわ~~り。



そしてその夜夢の中でイサクはまた若き日のサラに出会う。
「野いちごはもう無いの・・」


野いちごはもう無いの・・
時は過ぎてしまった・・もう戻らない。


けれどもサラが案内した場所には、ゆったりと釣り糸を垂れる父親の姿と、そのそばで手を振る母の姿があって。
悪夢で始まった物語は、小さな幸福を感じさせる優しい夢で終わる。
いろいろあっても癒しや許しも訪れてくれるのかなぁ・・、甘い私にはその優しい余韻がとても嬉しいのでした。

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