先日の「家の鍵」に続いて・・親子ものの鑑賞。
「家の鍵」もさまざまな事情のある親子のお話でしたが、こちらは、状況的にはさらに複雑な展開です。
パリやベルサイユ・・あこがれのフランス~~♪なんてお気楽な気持ちを持っている私には、かなりの衝撃。
あのフランス王朝の栄華を象徴するかのような・・かのベルサイユ宮殿の森で、失業者がテントを張って暮らしている・・というこの事実。
驚きました。
私よりはずっと社会情勢に目を開いている息子から、ヨーロッパの失業状態について話を聞いてはいたのですが、フランスもこんなに厳しい状態なのですね。
物語は、夜の街を歩く・・母と息子の姿から始まります。
職がなく、毎夜泊る場所を探して歩き回る若い母親ニーナと息子エンゾ。
ついには福祉局に保護された親子ですが、母ニーナはこれまでにも問われてきた(らしい)数々の質問に答えることにうんざり・・。
そんな時、拾った新聞に載せられていた介護施設での求人募集を読んだ彼女は、望みをかけて施設へと向かうことにするのですが、日も暮れかけたベルサイユの森で迷ってしまいます。
そこで出会ったのは、森で暮らすひとりの男ダミアン。
反発しながらも一夜を共にした二人、しかし翌朝ニーナの姿は消え、幼いエンゾはひとりダミアンの元に残されてしまうのです。
子どもを置いていかれたことに怒るダミアンでしたが、放っておかれたエンゾを捨てるわけにもいかず・・二人はともに森で暮らすことに。
このあたり、先日の「家の鍵」とは全く逆の展開!なんだか不思議な気持ちがしながら見ました。
一匹狼の男と母に置いて行かれた少年、全く血のつながりもない二人がともに暮らすうちにしだいに心を通わせてゆく様子が、なんともいえません。
本を読み、知性も感じられるのに・・社会に属することを拒否するダミアン。演じるのはこの作品が遺作となってしまったギョーム・ドパルデュー。
「ランジェ侯爵夫人」の一本気な将軍役も印象的でしたが、この作品のギョーム!
言葉少ないながらもエンゾにさまざまなことを教えてゆく優しさ。
森の小屋で生活する彼の・・、炎に照らされたその表情には思わず引き込まれてしまうオーラが輝いていました。
そして、このエンゾ役の少年。
この幼い少年の、大きく見開いた愛らしい瞳を目にしたら・・。言葉を失ってしまうのです。
まだ幼すぎるからなのか、母に去られても泣くこともせずただ黙ってそこにいる・・そんな少年が、唯一願ったのは、眠るときに手をつないで欲しいということ(涙)
風邪で倒れてしまったダミアンのために、エンゾが走りに走り・・ベルサイユ宮殿の飛びこんでゆくシーンも印象的でした。
巨大な城の何段も何段もある階段を駆け上がってゆく少年の姿。
そして退院するまでじっと彼を待っているエンゾの健気さ・・あぁ、たまらないものがあります。
誰からも認められず自信を持つこともできなかったニーナや、父親との確執(ギョーム自身の姿ともダブってしまいます)や社会への反発からひとり生きることを選んだダミアン・・。大人たちの姿にもそれぞれ孤独や悲しみを感じるのですが
まだ何も分からないまま、厳しい境遇に生まれ、大人たちの都合に翻弄される子どもの姿には、やっぱり胸が痛くなってしまいます。
エンゾの大きな瞳が、あまりに澄んでいて健気なだけに・・よけいにねぇ・・。
でも、映画の中に登場した支援団体のパトロールや福祉局の様子。
出生届がなくても親子として認知される・・というシーン。こういうことって日本では可能かしら?
その柔軟性?にもお国柄の違いを感じてしまいます。
憧れのベルサイユ宮殿。一度は訪れてみたい場所ですが、これまでとはちょっと違う・・複雑な気持ちも芽生えました。
そして、やはり!何より、残念なのは・・ギョーム・ドパルデュー。
きっと、これからますます素敵な姿をスクリーンで魅せてくれたに違いない・・彼の、早すぎる死が悼まれます。
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