2010
01.15

リュカとクラウス

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)
(2001/11)
アゴタ クリストフ

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こんなに続きが気になって、気になって仕方がなかった小説は何年ぶりでしょう!

お正月に読んだ「悪童日記」の衝撃!!
続編「ふたりの証拠」と「第三の嘘」も読み終わりました。

読み終わりました・・が。
これはいったい、どう感想を書いたらいいのでしょうか。
最後のページをめくってしまった後も、唖然とした思いで・・再び戻って読み返したあとも。
まだまだ言葉が出てこない。

こんな3部作は・・初めてです。




うまく言葉を選んで感想を書けそうにないのでネタバレ的な部分があると思います。未読の方はご注意ください。


1作目の「悪童日記」で
それまでまるでひとりの人間のように、一心同体であったぼくらが、あまりにもあっけなく、きっぱりと別れてしまったあの衝撃のラスト。

2作目、3作目では、当然別れたふたごのその後が、それぞれ描かれるのだろうなあ・・と思いながらページをめくったのですが、
「ふたりの証拠」では、クラウスと別れたあと、おばあちゃんの家にひとり残ったリュカの物語が展開し、
最後の最後にクラウスが登場しますが、クラウスが登場するとともに、リュカの姿はまるで煙のように消えてしまいます。

そして「第3の嘘」
ふたごがそれぞれ登場し、「わたし」となって語るこの完結編にいたっては、謎がすべて溶けたどころか、
これまで登場した(ふたごのまわりの)人々までもが、ここではまた違う姿、違う人物となって語られる・・という。


こんな物語を誰が予想したでしょうか・・。
「悪童日記」も衝撃的でしたが、そのあとに続く物語に、なおいっそう唖然としてしまう。



いったい、「ぼくら」は本当にふたりだったのか?
「ふたりの証拠」のラストでは、同一人物?であったかのように示唆された「ぼくら」が、
「第3の嘘」では、また別々の人物として登場し・・しかし登場しながらもやはりどこか、互いが互いの影であり、作りだした人物であるかのようで。

言葉遊びのようにLUCASはCLAUSで、クラウスはリュカなのか。
語られる過去の、どこからどこまでが嘘でどれが真実なのか・・。


けれど、どれが真実で、どれが嘘であっても。
謎解きがどうであれ、この物語に潜む、深い喪失感にはなんら変わることはありません。
戦争が終わっても体制に支配される街で、愛を求めては失ってゆく。
どこまでもひたひたと追ってくる孤独感。

亡命とはひとりの人間が二つに引き裂かれるようなもの
21歳のときに望まずして難民となってしまった著者アゴタ・クリストフはこう語ったと言います。

半身?と別れてしまった「ぼくら」が(互いに探し求めていると言いながらも・・)再会を喜び合うこともなく、拒絶しあい、再び別れてしまうのは、
引き裂かれたひとりの人間は、もう元には戻ることができない・・という著者の思いなのでしょうか。


母国を失い、使っていた言葉を無くし・・。
自分がどこにいればいいのか分からなくなってしまう。
そうした孤独感や哀しみはぼくらだけではなく、ぼくらをとりまく人々の中にもしっかりと描かれていたように思います。
そういう意味では、登場するすべての人々が・・著者の分身なのかもしれません。

さまざまなものを失いながらも(3部作の)最初から最後まで、書くことだけはやめなかったぼくらの姿や、生涯にひとつ小説を書くことを夢見る本屋の主人の姿も、著者にだぶるような気がします。





哀しいシーンも辛いシーンも多く(マティアスのことも)、
若く美しかったぼくらの老いた姿も悲しかったりするのに・・一度読み終えたこの物語を終わったものとして・・本棚に飾ってしまうことがいまだできません。
唖然としながらも、まだまだリュカとクラウスに会いに行きたくなってしまう。

本当に不思議な・・魅力をもった3部作です。

感想はまったくもってまとまりませんでしたが(汗)、この3部作に出会えてよかった!それだけは間違いなく断言できるのでした。



第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)
(2006/06)
アゴタ・クリストフ

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コメント
瞳さ~ん、瞳さんの感想を拝見して、何だか安堵する事が出来ました~!
3部作を読み終えて、頭を抱えたまま今日まで来ているから(苦笑)
アゴタさんの 「シリーズとして読まれても、そえぞれが独立した作品と理解しても構わない」というコメントだけが救いだったので、瞳さんの明快な感想に、そういった趣旨があったので、ほっとしたんですよ。
素敵な感想をありがとうございました。
本当に著者の精神的体験が色濃く反映された作品なんですね。
もうリュカでもクラウスでも、どちらでもいいわ!(暴言)
彼らの苦悩や孤独を理解することが 一番重要だったのかもしれませんね。
「昨日」を少しずつ読んでいますが、こちらも映画を思い出しつつ、また不思議な気分に浸っています。(^^ゞ
みぬぅdot 2010.01.21 13:11 | 編集
>みぬぅさん、
そうなの、そうなの・・読み終わって唖然としてしまいますよね。
うう~ん、いったいどうなんだ・・って、私も頭を抱えちゃいましたよ。
>シリーズとして読まれても、それぞれが独立した作品と理解しても構わない
なるほど~!!そうですよね。
いろんな風にとれるし、作風?もそれぞれ違ってて・・。
どういう風に感想書いたらいいんだろう・・って正直思いました。
えへへ・・素敵だなんて~(照れ)。ありがとうございます。

>もうリュカでもクラウスでも、どちらでもいいわ!(暴言)
あはは~!!みぬぅさん・・私も実は読みながら最後にはそう呟いてました。
いっしょ~(笑)

「昨日」もいろんなとり方が出来る作品ですよね。
母国を失った著者の想いや、体験が、もっとリアルに出ているかもしれない・・って思いました。
映画のシーンも浮かびますよね。
そして・・最後のふたりの結末に・・映画のあの新天地でのシーンはもしや・・もしや○○・・と思ったのですが。
またこちらのお話もしたいですね~。
dot 2010.01.22 17:12 | 編集
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