2009
09.30

「風の痛み」

風の痛み [DVD]風の痛み [DVD]
(2005/04/06)
イヴァン・フラネクバルバラ・ルクソヴァ

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東欧のある国、小さな村に生まれたトビアシュ。
父親を知らない娼婦の息子として育った彼だが、15歳のある日、自分を教えてくれた学校の教師が父親であることを知り、彼を刺してそのまま家を飛び出してしまう。

やがてスイスに亡命した彼は、名前を変え、昼は時計工場で働き、夜は作家を夢見てペンを走らせる毎日。
恋人もいるが、彼の心の中は常に運命の女性「リヌ」を探し求める想いで満ちていた。
彼が求める「リヌ」とは誰なのか。

そして、彼はついに職場へ向かうバスの中に運命の女性の姿を発見したのだった・・・。


トビアシュが、「リヌ」に巡り合ったのが運命なら、私がこの作品を鑑賞出来たのも運命だ・・なぁんて。
「ペッピーノの百歩」をレンタル出来なければ、忘れられて仕舞いこまれていた、イタリア映画祭傑作選のパンフを出すこともなかったし、パンフを読まなければこの「風の痛み」に出会うこともなかったし。

めぐりめぐって出会ったこの作品には、なんだか特別なもの感じちゃうなぁ(笑)

その運命の作品。
これが、また強烈な印象を残す作品でした。
何が強烈かって・・そう、トビアシュ。
その眼光の鋭さ、高い鼻、彫りの深さ。
容貌もそうですが、その思い込みの強さ、のめり込むさま。
大切でないことは全く眼中にない、冷たい印象もある彼の、運命の女性に対する想いの強さには、圧倒されてしまいました。

自転車で彼女の乗ったバスを追い、自宅までつけ、双眼鏡でのぞきこむ。
ストーカーですよ、全く!!
その行為に・・こ・・こわ・・と思い、
ヨランダだって素敵な女性なのになんて冷たいんだと思いながらも、突き放してしまえずに、彼から目が離せないのは、やはりそのおいたちや、何かを求め続けているかのような満たされない彼の瞳でしょうか。
こういう瞳をした男に・・弱いのだ~~(苦笑)



あの必死さに、何か失ってしまったものを埋めようとしている。
ぽっかりと空いている心の隙間、痛みを埋めてくれるものを探そうとしている・・。そんなことを感じました。
捨ててきた国、母、そしてカロリーヌ。


風が吹きわたる・・その音に彼は何を思っていたのでしょう。
胸の中にも同じように常に風が吹きぬけている喪失感と・・それを埋めるために突き進まなくてはいられない。
自分が犯した罪をつぐないたい気持ちや、懐かしさ、捨ててきたものに対するさまざまな想いがもしかしたら、すべて彼女に向けられたのかもしれません。

突き進んでくる彼に、初めは戸惑いながらも、やがて想いを受け入れていくカロリーヌ。
二人の思いが溢れんばかりのラブシーンに、こちらまで気持ちが高まって。
トビアシュの熱が見ている私にまで移ってきていたのかしら・・あの瞳の力ですからねぇ。



最後の、(今度は)二人で新天地へと向かう・・ラストシーンは、これまでの少し暗い、抒情的な色調の映像とは打って変わってなんだか夢?みたいにとれるような、そんなシーンでした。



原作は、アゴタ・クリストフの「昨日」。
ハンガリーから西側に逃れてきた時、生後4か月の赤ん坊を抱えた名もなき、若き女性に過ぎなかったという・・著者。
工場での作業の合間に詩を書き続けたという彼女の姿が、トビアシュに、そしてカロリーヌにも・・投影されているようです。
彼らだけでない、トビアシュたちのまわりの、生きるために国を出て働く人々のさまざまな姿。

作品の中の、森に・・そして村に吹きわたる風のうなりに流れてゆくものの痛みさえ感じてしまう・・、詩情あふれる映像も見事な作品だと思います。


そして・・トビアシュ。やっぱりしばらく忘れられない・・、後引く容貌だ~~。
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コメント
こちらにもお邪魔します♪
「イタリア傑作選」の中の1本でしたが、他の2本がロカーショ主演で、これだけその後を引く容貌の彼?が主役でしたね。
それにしても、これも重たい内容でしたよね~。
トビアシュの思い込みの激しさなんかね、本当に凄いですよね。
目的の為なら、手段を選ばないんですものね。(オーノー!笑)
でも観終わってみると、どことなくファンタジックな香りもしたりして・・。
そして、瞳さんの感想のお陰で、原作がアゴタ・クリストフだと初めて知りました。
というか、たまたま今、彼女のデビュー3部作を読んでいて、もう何という感性の持ち主なんだろう!!と感動しているところだったのです。
そう思うと、この作品も「なるほど~~」と妙に感心しちゃいました。
この原作も読んでみようと思います、情報をありがとうございました。(^^ゞ
カポdot 2009.10.01 00:07 | 編集
瞳さん、またお邪魔してすみませーん^^;
実は、上で書いたアゴタの3部作を今日読み終えて、あとがきを読んでいたら・・、この続きで4部作目に当たるのが、この映画の原作「昨日」だと書いてあり、びっくり!!
そういえば、トビアシュとリヌ(共に名前は前作と違いますが・・)のような関係が前作にあり、今映画を思い出すと、その部分は確かに引き継がれているな・・と思いました。
早速「昨日」を購入しました、楽しみです♪
瞳さんとパンフレット、私と原作、何か因縁めいていますね!?(笑)
これも瞳さんの情報のお陰ですよ~、本当にありがとうございました。(^^ゞ
カポdot 2009.10.02 19:25 | 編集
>カポさん
こちらにもコメントありがとうございます。
レス遅れてごめんなさいね~♪

パンフのおかげでこの作品にも巡り合えて良かったです。
しかし・・トビアシュの思いこみ、すごかったですね。
そうそう、心の中でオーノー!!って叫んでました(苦笑)
>どことなくファンタジックな香りもしたりして・・。
そうでしたね、風のふく音にトビアシュが遠くを見つめたり、森をさまよったり、最後のイタリア?の風景もなんだか夢・・のようでしたもんね。


>瞳さんの感想のお陰で、原作がアゴタ・クリストフだと初めて知りました。
あぁっ・・そうだったの!?カポさん。
私カポさんが、彼女の作品を読んで感想を挙げていらっしゃったので、てっきりご存知で読まれたのかしらって思ってたの。
そして3部作、もう読まれたんですね!すごーい。
その続きが、この「昨日」なんですね。

パンフにも彼女の作品「悪童日記」などについても書かれてて、私も俄然興味が湧いているところなんです。
ぜひ読んでみたいと思います。

>瞳さんとパンフレット、私と原作、何か因縁めいていますね!?(笑)
これはもう運命ですね(笑)
う~ん、こうなったら私もカポさんもトビアシュのように突き進むしかありませんよ~(なぁんて 笑)
ふふ~、でもこういう因縁って大歓迎♪

原作読んだら、またお話できますね~、嬉しい。
楽しみにしています~♪
dot 2009.10.03 17:03 | 編集
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