2009
08.25

「12人の怒れる男」

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(2009/01/23)
ニキータ・ミハルコフセルゲイ・マコヴェツキイ

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モスクワで起きた元将校殺人事件。
殺人の罪に問われるのは、被害者の養子であるチェチェンの少年だった。
少年の運命を握る12人の陪審員たちの審議が始まる・・。
圧倒的な有罪の評決により、審議はあっという間に終わるかに思えたのだが・・・・・。

もちろん、オリジナルはあの名作「十二人の怒れる男」


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(2006/11/24)
ヘンリー・フォンダリー・J・コッブ

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私も本館のFavorite映画に入れているこの名作。
この作品のリメイクを作るなんて!なんて勇気があるのかしら・・。


オリジナルの「十二人の怒れる男」
設定は蒸し暑い夏のさなかだったでしょうか。
狭い陪審員室という密室の中、偏見などに囚われていた陪審員たちをヘンリー・フォンダ演じるひとりの陪審員が、静かに、力強く動かしてゆく。

見落とされていたというより・・見ようとしていなかった事実に気づかされ、しだいに真実が明らかにされてゆく様は何度見ても総快感を覚える・・まさに名作映画ですよね。


このリメイクも設定はほとんど同じ。
息を飲みつつ見つめる、緊迫感あふれる展開と、見事な演出。
でも、こちら。見終わったあとの思いには、とても複雑なものがありました。


季節は冬のロシア。
集まってきた12人の陪審員たちは、(こちらのリメイク版も)だれもみな、とても個性的。




その中でまず、
無罪の口火を切った陪審員も(中心になって話を進めましたが、決してヘンリー・フォンダ的な役回りでも無くて)少年の無罪に自信があるわけではなく。
でも「こんなに簡単にひとりの少年の人生を決めてしまっていいのか」という、、とても率直な思いを口にして。
以前オリジナルを見た時は、陪審員制度については遠いお話ということであまり実感がわかなかったのですが、日本でもこの制度が取り上げられた今。
この男性の、人間的なこの、素直な戸惑いの気持ち・・・・、あぁ、もし自分も陪審員を勤めなければならなくなったらと。
改めて、しみじみ共感を覚えました。
自分の決断が、ひとりの人間の未来とを決定してしまう、これは考えると本当に怖いことなんですよね。


改装中の陪審員室に代わって、彼らが通されたのが学校の体育館。
この設定も面白いです。
過去の遺物をそのまま残し、きちんとしたした工事もされていない・・、古い体育館は、まるでロシアという国、そのものを象徴しているかのようでした。

その体育館をいろんな風に使いながら、さまざなま角度から映し出される審議の風景。
事件を実際に検証してみる様子にハラハラしたり、男たちの激しい動きに驚いたり。
そんな中で語られる陪審員たちの、エピソードが・・・また、どのお話も、ビックリするほど重くて・・、長~い(汗)


これはもう・・どうしたらいいのか・・。
目も離せず彼らの言葉に耳を傾けると正直、ぐったりと疲れる思いがしました。

オリジナルでは登場しなかった、裁かれる少年の姿や、少年が体験してきた悲惨な体験。
何度も何度も映し出されるその辛い映像も、重くしっかりと心にのしかかってくるのです。



そして、やっとのことで、12人すべてが無罪を確信したかと思った・・その時。
リメイク版は、ここからがますます気が抜けない、驚くべき展開を迎えるのでした。


これまで静かに話をまとめてきた議長の発した言葉・・。
この言葉に驚きながらも、あまりに真実味を帯びたその説得に、また改めて心が揺らいでくるのです。
(このシーンで、21歳の若い恋人に熱中する墓守り人のセリフにも、別の意味で唖然としましたが 苦笑)


さて・・さて。どうなるのか、どうするのか。
こんなに最後の最後まで、悩まされるとは思いませんでしたよ~。
恐るべし、ミハルコフ監督。



いつの時からか、陪審員室に迷い込んでいた一羽の鳥が、ラストシーン。雪が舞う寒空に飛び立ってゆきます・・、その姿に思わず、被告人の少年を重ね合わせてしまいました。

(議長の言葉から想像するに)無罪となっても、少年の未来は決して楽なものではないのだろうけれど。

「法は力強いけれども、人間の慈悲はもっと強い」


「ニコライおじさんと呼んでくれ。」
少年に語りかける議長の言葉に、法よりも強い慈悲を信じ、そうであって欲しいと願う、監督のメッセージが感じられました。


評決が出て、審議が終わってもそこですべてが終わるわけではない。
人生はまたそこから始まってゆく・・。
それを強く感じさせてくれた・・この部分は、オリジナルを超えているのではないでしょうか。


こんなに強烈なリメイク版は見たことがありません。
素晴らしい1作でした。
ただ・・う~ん。
オリジナル版は(これまでに)5回ほど見返している私ですが、このリメイク版は正直見返す自信はありません(汗)
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コメント
瞳さん、こんばんは~。

なんと瞳さん、オリジナルを5回もご覧になっていたんですね、驚きました!!
でもその熱意は分かりますよ、本当に優れた作品ですよね。
私は、今回何十年ぶり?に観たのですが、昔は見えなかった大人の心情が、今回はあれこれ見えて、より感動することが出来ました。
そしてミハルコフ版ですが、本当に圧倒されました、そして思いっきり疲れました~~(苦笑)
ロシアの社会事情が根底にしっかり描かれているから、より説得力があって、あの結末を観ながら、少年の未来は有罪無罪に関わらず、安泰ではないところに、この映画の重厚さを感じずにはいられませんでした。
瞳さんが鳥と少年を重ね合わせていらしゃったけど、思わず膝を打ちました(ポン!)
自由な外は凍えるほど寒い、自由のない中は温かい!? うぅ~~ん、素晴らしいです。

ところでベンジャミン、再見されたんですね。
私は、素敵な映画だとは思ったのですが、少し入り込めない部分も正直に言うとあったんです。
でも瞳さんの感想を拝見していて、ちょっと穿った観方をし過ぎて、大事に部分を見落としているかな・・と反省しました。
ところで、例のサンドラーの「エージェント・ゾーハン」ね、お薦めするには、余りにお下品かと思ったのですが、意外と政治的なメッセージをオブラートに包むためのお下品さだったのかと、観終わって思いました。
大笑いしたいなぁ~~という時があれば、無理にはお薦めしませんが、よかったらどうぞ(笑)

涼しくなったら、もうちょっとペースを上げて映画を観たいな・・と思っています。
こちらで情報を仕入れさせてもらって帰りますね~~(^^ゞ
カポdot 2009.08.29 22:16 | 編集
>カポさん
こんばんは~♪
そうなんです、オリジナル版、Favoriteに挙げた時に2度ほど、息子とまた2度ほど・・と初めて見た時を入れると結構見返してるんですよ~。時間も90分くらいでしたもんね。

でも、こちらのリメイク版は長時間の上に、あの重厚さ!
そうでしたね~、エピソードの重さ、長さに圧倒されつつ・・私もぐったりしちゃいました(汗)
カポさんの、オリジナルと比較しながらの感想、すごく興味深く読ませていただきましたよ。
さすがだわ~。

>少年の未来は有罪無罪に関わらず、安泰ではないところに、この映画の重厚さを感じずにはいられませんでした。
全くそのとおりですね!!
この終盤の展開は、オリジナルを超える深さを感じましたね。
ふふ・・膝を叩いてもらっちゃった(笑)
あの鳥のシーンもとても印象深くて。

「ベンジャミン・バトン」なんだかすっかり感想を書くタイミングを逃してしまってて。
>ちょっと穿った観方をし過ぎて、大事に部分を見落としているかな・・と反省しました。
そんなことないですよ~、カポさんの感想、私頷きながら読ませていただきました。
なんでしょう、ベンジャミンにはどこか私たち見ているものに入り込ませない・・そういう部分もあったように思います。数奇な人生に生まれたものの神秘性なのでしょうか。
私の場合、後から原作を読み返したことで(原作は結構シュールというか、ブラックだったので)映画とまた向き合うことが出来たのかなあ・・とも思います。

おお!!私たちのサンドラーv-238情報、ありがとうございます♪
ご覧になったのですね~。
あまりにお下品・・おおっ・・いやいや、きっと私大丈夫かと(爆)

そうそう、カポさん、私たちの(笑)ガンブランのお話もしていいかしら。
「レセ・パセ」カポさん、以前にご覧になってましたよね。(あとでブログに伺っちゃおう)
あの時代のフランス映画界の姿、私の知識では分からない部分も多くありましたが、この映画ではドイツの映画会社の方についても決して悪役にせず、描かれていましたよね。監督の曇りのない目を感じました。
思いがけなく、お茶のシーンもあって(笑)嬉しかったです。


dot 2009.08.30 20:06 | 編集
ヘンリー・フォンダ版は私も結構見返してるほうです。もちろん瞳さんも繰り返し観ているらしいので、今更なんですが・・・。

私はフォンダのこのセリフが印象に残ります。
「偏見を棄てるのはいつも難しい・・・しかし偏見は判断を鈍らせる。私の考えは間違いかもしれない。少年は実際に父親を殺したかもしれない。誰にも判らないんです。しかし疑問の余地があり、これがある限りは私は有罪に投票できないのです」
結局、この映画では少年は有罪か無罪か判らないんです。何故ならば、これは裁判劇ではなく陪審員劇なので。判決は無罪、しかし実際は・・・と云う事ですね。
作者のレジナルド・ローズは自分の陪審員の経験を元にこれを執筆し、最初はTVドラマから始まりました。フォンダがそれを観て映画化権を取ったのですが、製作したのを後悔したらしいです。自分が演じた陪審員8号があまりにも自信満々で立派すぎたので。ちなみにTV版の8号は、そこら辺にいる普通の中年が演じたらしいですよ。

ところで『未知への飛行』は観ましたか?これもルメット監督、フォンダがアメリカ大統領役ですが、これも引き込まれますよ。

『未知への飛行』1964年 アメリカ映画 シドニー・ルメット監督

オムニバス映画ワールド
http://web.me.com/omnibusworld
NARCYdot 2010.03.21 13:15 | 編集
>NARCYさん
NARCYさん、ヘンリー・フォンダ版何度も見られているんですね~。
このセリフ、はっとさせられますよね。(でも、すごい~!よく覚えていらっしゃいますね!)

私がオリジナル版を観た時、怖いなあって思ったのは、無意識の偏見でした。
育った環境や立場から身についてしまった偏見って、自分では偏見と思っていないことが多いということ。
自分も含めてそういうことって多いのではないかしら・・と思うと、このフォンダのセリフははっとさせられますよね。

>ちなみにTV版の8号は、そこら辺にいる普通の中年が演じたらしいですよ。
うわぁ・・それは全く知りませんでした!!
フォンダのカッコよさにしびれてしまったのですが、彼自身はそんな風に思ったのですね。

『未知への飛行』見ていないです~。
ルメット監督でフォンダが大統領!それは面白そうですね。
これもメモしておかなきゃ~(笑)
dot 2010.03.22 20:10 | 編集
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