2009
06.26

「愛を読むひと」

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1958年大戦後のドイツ。
15歳のマイケルは学校の帰りに具合が悪くなったところを通りがかりの女性ハンナに助けられる。
3か月の療養後、お礼を言うためにハンナを訪ねたマイケル。
だが一度限りの訪問だったはずが、彼女を忘れることができないマイケルは翌日もまた家を訪ねてしまう・・。そんなマイケルをハンナは優しく抱きしめ、二人は情熱的に愛しあう・・。

初めて抱いた女性、初めて愛したひと。
毎日放課後を待ちわびてハンナのもとへ急ぐマイケル。
そんなとき、何がきっかけだっただろう・・、ハンナが「本を読んできかせて」と頼んだその日から・・マイケルは彼女の「朗読者」となった。
「オデュッセイア」「チャタレイ夫人の恋人」「タンタンの冒険旅行」
「犬を連れた奥さん」
マイケルの朗読に、時には涙を浮かべ、時には笑って聞き入るハンナ・・。


しかし、ハンナはある日、突然彼の前から姿を消してしまう。

それから8年。
法科に通うマイケルは、実際の裁判を傍聴するという特別授業に参加する。
そこで目にしたのは、思いもよらない衝撃的なシーン。
ナチの戦犯裁判の被告席に座るハンナの姿だった・・。

ベルンハント・シュリンクの「朗読者」は、もう何年前だろう、新潮の文庫になってすぐ手にしたのだけれど、
15歳の少年と(母親ほどの年齢の)年上の女性という関係にはやはり驚き、
ラブストーリーと思いきや、意外な後半の展開の辛さにもショックをうけたのだけれど、それ以上に感じたのはどこか読む者にさえ壁を作っているかのようなハンナとマイケルの姿でした。

かたくなに秘密を守ろうとするハンナ、そしてそんな彼女を見守ったマイケルの心情もまた・・最後まで分からない部分も多くて・・。


そして今回のこの映画化。
原作同様、登場人物の抱える内面の部分をとても大切にしながら、でもそこから少し踏み出した部分も見せてくれた・・とても見ごたえのある作品でした。



若き日のマイケルを演じたデヴィット・クロス(でも15歳よりはもっと年上に見えるけど!)の、恋におぼれる少年の溢れそうな気持ち、年上の女性が見せる感情に戸惑いながらも彼女を求めずにはいられないこころ。

ハンナ役のケイト・ウィンスレット、原作の私のイメージはもっと年を重ねた女性・・というイメージでしたが・・画面に登場したとたん、彼女から目を離すことができませんでした。

隠してきた秘密が暴かれそうになるたびに彼女が見せる恐れの表情、そんな彼女が堰を切ったかのようにマイケルを求める姿・・。


ハンナが裁かれる罪・・、
戦争犯罪については、これはもうどれだけ言葉を重ねても語りきれないほどのいろいろな思いが渦巻きます・・。
加害者とか被害者とか簡単には言えるものだろうか・・とか、
戦争のとき、正しい判断で生きれたものがどれだけいたのだろうか・・とか。
でも、あまりにも率直に、そのままに・・自分自身の行った行為について語るハンナの強さに驚き、その強さを持つ彼女が、けれども自らの秘密の前には行ってもいない罪をかぶってしまう・・そのことがあまりにも悲しい。


ただ、やはり戦争を知らない、まして日本人の私には計り知れないナチやあの時代への思い・・というものがドイツの方々の心のうちにはあるだろうなあ・・とも想像してしまいます。

「あなたならどうしましたか?」
ハンナが裁判長に問いかけた・・あのシーン。彼女のあの言葉に答えられる人がいるのでしょうか。


ハンナの秘密に気づいたマイケルのとった行動。
彼のこの決断についても・・またいろんな思いが湧き上がってきます。
あの聴衆の面前で自分の罪が重くなってもまだ秘密を守ろうとする彼女の決意を思うと・・という気持ちもわかるし、でもやはりマイケルには彼女と会って話をして欲しかった・・という気持ちもあって。



そのマイケルは、再び彼女の朗読者となることを決意して刑務所の彼女に朗読テープを送り続けます。
けれども、彼女がやっとの思いで書きあげた手紙については・・返事を出すことが無かったマイケル。
原作を読んだ時に、何故だろう・・返事のひとつくらい書いてあげても(彼女の秘密を知っていたならなおさら!)と理解できなかった彼のこのあたりの心情については
映画には、(原作にはない)とても印象的なシーンが用意されていました。


出所が近いハンナにやっと会いに行ったマイケルは彼女に
「昔のことを思い出す?」と聞きます。
「わたしたちのこと?」と問い返す彼女に
「戦争のことだよ」
と答えるマイケル。

すれ違う二人の思いに、心が痛むシーンです。
けっして彼女を忘れることもせず、だからといってすべて理解することもできない・・マイケルのこの心の痛み・・。
ケイト・ウィンスレットの演技にも心打たれましたが、レイフ・ファインズの癒されない痛みを称えた表情には、本当に胸が痛くなってきます。素晴らしいですね。

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いろいろな思いや感情が次々に湧き上がってきて、まとめることもできないままの感想になってしまいましたが・・、ゆっくりと、まだまだゆっくりと思い出し、心に残ってゆく作品だと思います。

原作もあれからまた何度も読み返しました。
読むうちにまだ気づいていなかった部分(マイケルと父親のことなども)にもいろいろ思うこともあります。


さて、映画のラストは、こちらもまた原作にはないシーンでした。
これは書かないでおこうかな~、ぜひ見て欲しいから。
優しい余韻が、静かに胸に広がっていく・・素敵なラストシーンです。


迷いなく購入したパンフレット(公式サイトも綺麗です♪こちら
には
マイケルがハンナに朗読した本のリストも載せられていて嬉しい。
フリードリッヒ・シラーの詩も忘れ難いけれど、私が一番印象に残ったのはチェーホフの「犬を連れた奥さん」
いつか読んでみたいですね♪

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コメント
お邪魔します♪
素敵な感想です!瞳さんの原作を読んだときの
思い・・・私も同感!!です。
本当のところどうなの?という疑問が色々
湧いてきましたよね。映画はやっぱり目で見るという
行為になりますから、多少なりとも想像しやすい
部分を感じましたよね。
<レイフ・ファインズの癒されない痛みを称えた表情には、本当に胸が痛くなってきます。素晴らしいですね。>
おお~~この評価、うれしいです。
ハンナの気持ちを考えると、そっけないマイケルの
態度は、なんで~~と思わずにはいられませんが、
どうしようもないことなんでしょうね。
パンフ購入されましたか!!
脚本家の方も色々、考えあって、ああいうオリジナリティ
入れ込んだのね・・というのがわかりますよね。
ラストも含め、いい効果をあげているな~~って
感じました。
<若き日のマイケルを演じたデヴィット・クロス(でも15歳よりはもっと年上に見えるけど>
ふふ~~、ここだけの話ですが、パッとみ、若さピチピチ♪
って感じじゃあないですよね。ちょっとおじさんぽい。。笑
でも、体は若者~~って感じでした・・・笑
犬を連れた奥さん・・いいですよね。気になります。
あとタンタンの冒険旅行←マイケル君の朗読が面白かったので気になる~~。
あ・・・トランスフォーマーは行かれるのかな・
(長文ごめんね・・・)
みみこdot 2009.06.27 18:06 | 編集
>みみこさん
>本当のところどうなの?という疑問が色々・・
そうそう、そうでしたよね、想像してみるんだけどつかみきれない思いっていうのがいろいろありましたよね。
映像だとやはりその人の表情とかで分かりやすい部分もあるしね。
ええ、もう!みみこさんのレイフi-175素敵でしたよね。
ストーリーが彼を軸に現在から過去へ・・そしてまた現在へ・・と戻ってくる・・・その中心にいるレイフのあの表情は素晴らしいものでした。
どうしようもない・・痛みを抱えた表情が内面から出てくるんですよねぇ・・。

パンフは見る前から買うつもりだったの(爆)
装丁も素敵でしたよね。
あのラスト、優しくていいな~♪

>ここだけの話ですが、パッとみ、若さピチピチ♪
って感じじゃあないですよね。ちょっとおじさんぽい。。
そうそう・・そうなの(小声 笑)出てきたときええ~!!とまで思っちゃった(おいおい・・苦笑)当時17歳くらいだったんですよね、彼って。
原作のイメージだと・・もっとずっと子どもっぽい感じだったので。
体は・・あははは~(笑)そうでしたね。
タンタンの冒険旅行、面白そうでしたね!!

「トランスフォーマー」それがね・・前作は先日TVで録画したけどまだ見てないの。
シャイア・ラブーフ君苦手なのだ(小声 笑)
みみこさんは次どれを見に行かれるのかなあ。

また遊びに伺いますね~。
コメントありがとう♪
dot 2009.06.30 07:02 | 編集
瞳さん、こんにちは~!
やっと感想を書き終えたのですが、本当に悶々とした思いが今も残っていて、それをずーっと引きずりそうな作品です、でも大好きですよ~。(笑)

他の方の感想を拝見することで、私には見えなかった2人の気持ちに気付くことが出来るので、瞳さんの素敵な感想も、目から鱗・・の部分も多々ありました、ありがとう~(^^ゞ
特にハンナの人物像ね、映画の中でも原作の中でも 情報が少ないので、その後の彼女のとった行動には とても悩まされました。
それも、あの時代が背景ですから、尚更複雑で難しいですね。

でも、頭に浮かぶ言葉は2人に共通する「贖罪」というところかな・・、なんて思ったり。
人間、だれでも贖罪の気持ちをどこかに持って生きていると思います。
それを、どう自分の中で消化し、前進していくのか・・、あぁ本当に簡単には語れませんね。

みみこさんも言っていらっしゃるけど、若き日のマイケル君、如何でしたか?
確かに、半ズボンはいていても15歳には見えませんでしたね、病弱なのかと思ったのに、ムキムキだったしね(苦笑)

ところで、観ている映画のタイミングが 瞳さんとはいつも一緒で嬉しいなぁ~~
この先も、きっと被りそうな予感がします。
「クリクリ・・」素敵な映画ですよね。
ガンブランは、メジャーじゃないけど、一部では結構熱狂的なファンも多いみたいです。
私もかつて、ガンちゃん祭りをした一人ですよ(笑)
祭りで思い出したけど、サンドラーの新作が2つばかりリリースされるようです、楽しみだわ♪
カポdot 2009.07.16 13:37 | 編集
>カポさん
おはようございます。
カポさんも感想書きあげられたのですね!!あとで読みに伺わなくっちゃ♪
>本当に悶々とした思いが今も残っていて、それをずーっと引きずりそうな作品です、
そうですよね!
感想を書いてからもまだまだいろんな気持ちが湧き上がって・・言葉に上手くできませんでした。
今でも時々、ああだったのかしら、こうかな・・と思いだしたりして。
ハンナの気持ちも一番最初に原作を読んだ時にはさっぱり・・だったのですけど、何度も何度も読み返しているうちに、あのマイケルとの最後の会話のシーンで、彼女が言った「追いかけてくるものを振り払えない」
この言葉がとても印象的でした。
そしてマイケルの隙間に押し込むことで忘れようとする・・というくだりも。
このあたりがカポさんもおっしゃってる「贖罪」に通じるものかしら。

>それを、どう自分の中で消化し、前進していくのか・
本当にこれは難しい・・。
お話しているうちに、この作品の感想をまたいろいろ書きたくなってきちゃった。

若き日のマイケル、私の原作のイメージとは全然違ってて初めはちょっと戸惑ってしまいましたよ。
あ!!そうでしたよね。ムキムキ~(笑)
そっかーー、違和感はそこだったんだ(笑)

>観ている映画のタイミングが 瞳さんとはいつも一緒で嬉しいなぁ~~
えへへへ~、私も嬉しいです♪
そして、カポさんを追いかけて今ルコント作品を見ています。
これまであまり見ていなかったのですけど、カポさんちにいらしている方とカポさんのお話を読んで、とっても興味が湧いちゃって♪

ガンブラン、とっても味のある、素敵な方だわーー。熱狂的なファン!分かる気がします。
おお、カポさんもガンちゃん祭りを!(笑)
私もしたいのですけど・・ガンブランで検索したら(最近店内に検索機ができたのでささーーと出てくるのですよ)、「マドモアゼル」と「クリクリ~」だけでした(涙)

サンドラーも!!
うわーー、嬉しい悲鳴だ!お祭りが間に合わない~(笑)
情報、ありがとうございます♪







dot 2009.07.17 06:53 | 編集
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