「幸せで楽しい暮らしとは、華やかなこと、驚くこと、胸ときめくような事が起こる毎日でなく、さりげない小さな喜びをもたらす一日が、今日、明日と静かに続いていくことじゃないかしら。
まるで真珠が一つ、また一つと糸からすべり出ていくように・・・・」大好きな「赤毛のアン」シリーズの中にこんな言葉があります。
この映画を見て私の胸に浮かんだのは、このアンの言葉でした。
パリで成功を納めた画家が、生まれ故郷カンパーニュへ戻ってきた。
実家の庭は荒れ放題・・。
母親が作っていたような菜園を作りたいと庭師の求人を出したところ、やってきたのは、おさななじみ。
学校でのいたずら話、友達のこと、これまでの暮らしや家族のこと。
互いをキャンバス(画家)とジャルダン(庭師)と呼び合い、
アトリエや庭や・・・、カンパーニュの光溢れる自然の中、語り合い、笑いあい、不思議がる二人の姿。
なんてことのない、会話なのに・・なんとも味わい深く、幸せな気持ちになってくるのはなぜだろう。
実家の薬屋を継がずに芸術の道を歩んだキャンバスと
生まれ故郷を出ることなく、国鉄の仕事を全うした後には、念願の庭師の仕事をするジャルダン。
正反対のような人生を歩んできた二人が、再び親交を深め、日々語り合う。
小さなシーンや、おしゃべりが・・味わい深くていとおしい。
画家が庭師のために紅茶を買った・・お茶のシーン。(フランス映画に登場するカフェオレボウルってどうしてあんなに可愛いんだろう)
二人で鎌を買いに行ったお店で、庭師がためし切りをしてみるシーン。
裸で日光浴をする画家の若いモデルに驚き、照れる庭師の表情。
画家の元に向かう庭師のバイクにじゃれつく子犬・・。
お葬式に参加した先で・・同級生のおかしな名前に二人で笑いをこらえるシーン。
書いてみたら本当にさりげない、こんな小さなシーンの数々が、アンの真珠のように・・心の中にこぼれだしてくる。
エンドロールのモーツアルトの音楽を聞きながら、しみじみと優しい気持ちになったのでした。
自分の気持ちに正直な(結構勝手ですよね・・奥さんとモデルのこととか)ちょっと子どもみたいな、でも友人思いで人間味溢れるダニエル・オートゥイユもいいのだけれど、
やはり、庭師役のジャン=ピエール・ダルッサン。
素朴な笑顔、実直な言葉、奥さんの話をするときの彼のチャーミングなこと。
帽子にチェックのシャツ、サスペンダーに首に巻いたハンカチ・・・庭師ルック?が似合うんですもん♪
互いに互いの仕事を認め合う・・二人のそういう関係もいいですよね。
毎年ニースにバカンスに行くという庭師の話に、とっても素直に感心する画家の表情もほほえましくて。
そのニースのバカンスの様子が・・また!まったく庭師らしいエピソードなのでした。
「庭師が一緒に寝てやると・・野菜が喜ぶ」
彼の作った野菜は、きっと瑞々しくて甘くて美味しいのだろうなあ・・。
心の中にも暖かい光と、美味しい水が沁みこんでくるような・・、日々の小さな事柄を大切にしたいなぁとしみじみと感じた映画でした。
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