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Slow Dream

縁あって・・・本や映画と巡りあう。




「SHE SAID その名を暴け」 :: 2023/04/29(Sat)

シーセッド


ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は、米国映画界の大物プロデューサーとして業界内で非常に大きな影響力を持つワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始める。
被害にあった女性たちは示談に応じており、証言すれば訴えられるため、声をあげられないまま・・・・。
ワインスタインの暴行はもちろん、性加害者を守るような法のシステムに驚愕する二人は、調査を妨害されながらも信念を曲げず、取材を進めるのだった。



映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した2人の女性記者の姿を描く社会派ドラマ。
少し前に観た「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」がとても良かったマリア・シュラーダー監督!本作も素晴らしかった
ロマンティックなSFラブコメ?と想像していた 「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」が、ひとりの女性の生き方やパートナーへの思いをとても真面目に描いたドラマだったように、
本作もいくらでもセンセーショナルに描けた題材を地味に硬派に、心に沁みる勇気ある人間ドラマに仕上げていてとても良かった。
この2作を観てこれから先もこの監督の作品は見続けよう!と決めましたよ。

冒頭のシーン、映画製作にかかわれたことで胸の高まりを抑えきれない一人の若い女性が、次の場面では必死で何かから逃れるように走ってくる・・・。この導入部のなんと印象的なことか!
ワインスタインの女性たちへの犯罪行為、そのシーンは映像として描かれてはいません。
エンタメ的な要素を排して、しっかりと描かれたのは記者たちの粘り強い調査。そして、取材を受けた女性たちが当時のことを語るその表情、言葉。
何年たっても今もなお抱えている傷や、望んでいた人生を進めなかった悔しさ、悲しさを強く感じて、決してそれが過去の1シーンだけでは終わることのないものだということだということをしっかりと伝えてきたように思いました。

記者を演じたキャリー・マリガンとゾーイ・カザンの二人、素晴らしかった!!

シーセッド3

シーセッド2

電話をし、家を訪ね顔を合わせる、時には思いがけないほど遠方まで・・!地に足がしっかりとついた、この昔ながらの取材、調査方法は見ていてとても力が入りますね。
そして、二人がそれぞれ家庭があり、子どもがある。家での光景が織り込まれていることも大きな魅力でした。出産後のミーガンの産後うつの様子、子だくさんのジョデイ。
タイムズの心強い上司たち面々に加えて(パトリシア・クラークソン、ステキだーー)家庭での彼女たちのパートナーの姿にホッとさせられました。

ワインスタインの行為は絶対に許されないことなのですが、それを増長させたのが秘密保持契約・・・、被害者をがんじがらめにするこの法律の存在に驚きました。
これは決して映画界だけのことではないのだろうけれど、権力を握った人間が「ここではこれは当たり前のことだから」という自分の地位を利用した行為の強制は決して許されないし、知っていたけれど口をつぐみ、顔を背けてきた人々の存在も恥ずかしすぎる。
ワインスタインが設立した「ミラマックス」。
社名は彼の父母の名前から付けたと聞いたことがあります。
プロデュースした作品の素晴らしさ、大好きな作品が多いだけになんとも(もちろん作品に何の罪も関係もないのだけれど)複雑な気持ちになってしまうのがよけい腹立たしいワ~~。

実名を出し、出演もしているアシュレイ・ジャッドの勇気には胸が熱くなり、手術を前に決意したローラからの電話に心震えました。


シーセッド原作


原作を読んでみようと思います。
  1. 映画タイトル(さ行)
  2. | trackback:0
  3. | comment:6
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comment

これは年明け早々の傑作でした。
この監督の静かで力強い演出が素晴らしかった。
主役のふたりのプライベートも魅力的で。
映画親父の暴挙は許せません。
  1. 2023/04/30(Sun) 08:34:38 |
  2. URL |
  3. ゾンビマン #-
  4. [ 編集 ]

瞳さん こんにちは。本作、とてもよかったですね。
そう、冒頭の一連のシーンが印象的で、引き込まれました。
真摯に丹念に取材を続けていくミーガンとジョディ
演じるキャリー・マリガンとゾーイ・カザンの
強い信念に勇気づけられました。
(パトリシア・クラークソンかっこよかったですね!!)
テキストや電話のやりとりだけはなく、実際に足を運んで
被害者の心に寄り添う2人の真摯な取材姿勢に心を打たれました。
2人を支える理解ある夫君は、陰の立役者でしたね。
  1. 2023/04/30(Sun) 14:35:08 |
  2. URL |
  3. セレンディピティ #.usTzc9U
  4. [ 編集 ]

>ゾンビマンさん

こんばんは。
奇をてらうこともセンセーショナルに訴えることもない、いい作品でしたね。
前作といい、すっかり監督さんのファンになってしまいました。

主役二人がそれぞれとても魅力的でしたね♡
ジョディ(ゾーイ)の情熱と(ミーガン)の冷静さと、二人のバディっぷりも良かったな~♪
  1. 2023/04/30(Sun) 20:16:49 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

>セレンディピティさん

こんばんは。
まさに良作!!でしたね。
監督、女性たちの表情をとらえるの、とても上手いな~と思いました。
キャリー・マリガンとゾーイ・カザン、そしてパトリシア・クラークソン、最高でしたね。
そうでしたね!!あんなに遠くまで足を運んで・・・そして決して無理強いはしない。寄り添っていましたね。
夫たち・・・私ったら心配性なのでドキドキしてしまいましたよ。家庭内でも揉めたらどうしようか・・なんて(笑)
全然心配いりませんでしたね!(^^)!

原作のことも、また別記事で挙げようと思っています。
  1. 2023/04/30(Sun) 20:22:58 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

こんにちは

こんにちは。

本作は、ジャーナリストの女性たちがきちんと家庭や子供を持ち、その上で仕事に真面目に向き合っている部分が、華美にではなく現実的に描かれている所に大変好感を持てました。

そしてそんな真面目な感想とは裏腹に、黒い私が心の中で「ワインスタイン、地獄に堕ちろ」と思ってしまうのでした。
  1. 2023/05/15(Mon) 15:56:56 |
  2. URL |
  3. ここなつ #/qX1gsKM
  4. [ 編集 ]

>ここなつさん

こちらにもコメントありがとうございます。

そうでしたね~!彼女たちの家庭での様子、支えてくれるパートナーたちの姿も良かったなぁ。
現実的でしたね!リアルでしたね。あのアジア系の女性のご主人に話してしまうシーンとか、大丈夫か!?ってハラハラしました。(原作でもそのことに触れていました、正直どうなるか・・と思ったそうです)

>真面目な感想とは裏腹に、黒い私が心の中で
大丈夫です!!私も心の中で思いました。
あんなことを何年も何人にもやっていたんですからねぇ!!
  1. 2023/05/15(Mon) 20:32:23 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

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