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Slow Dream

縁あって・・・本や映画と巡りあう。




新旧「レベッカ」&デュ・モーリアの原作本 :: 2023/02/12(Sun)

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ヴァン・ホッパー夫人に雇われ、南仏のリゾート、モンテカルロにやってきた“わたし”は、そこでイギリス人の富豪マキシム・ド・ウィンターと出会い、求婚される。
イギリスにもどったマキシムと、マンダレーにある広大な屋敷で暮らし始めた“わたし”だったが、多くの使用人のいる屋敷の女主人としてやっていく自信がなく、何より屋敷には1年前に亡くなった前妻レベッカの面影が濃く残っていた・・・。亡きレベッカを慕い続ける家政婦のダンヴァース夫人の存在にも怯え、しだいに追い詰められていくのだが・・・・。

イギリスの作家ダフニ・デュ・モーリアが1938年に発表した『レベッカ』。モーリアの代表作のひとつとされるこの小説をいっそう有名にしたのは、なんといってもヒッチコックによる1940年の映画化だと思う。
ヒッチコックのアメリカ進出第1作目である映画「レベッカ」は第13回アカデミー賞の作品賞も受賞♪

今回Netflixでリメイク版の「レベッカ」を観て、改めてまた1940年のオリジナル版、そしてものすごーーく久々に原作も再読しました。2作品&原作本、ひとつぶで3度美味しい♡楽しみました(*^-^*)

レベッカ

Netflixで観たリメイク版は、2020年イギリス映画。リリー・ジェームズ&アーミー・ハマー主演♪
このリメイク版、何といっても映像の美しさが抜群!!マンダレーのお屋敷の美しさ、広大すぎる庭に咲く花々に見惚れましたよ~。
そして“わたし”を演じるリリー・ジェームズの可憐なこと細身の彼女の着こなすファッションも見ごたえたっぷりでした。
アーミー・ハマーも秘密を抱える夫役が似合う!!

ダンバース
そしてなんといっても「レベッカ」といえば、ダンバース夫人でしょう!!彼女の存在感なしには語れない、影の主役と言ってもいい夫人を演じるのは、クリスティン・スコット・トーマスでしたよ。納得の見事な怖さ~、触ったら凍らされるんじゃないかと思うくらいの冷たさを感じました(>_<)

リリー・ジェームズといえば、可愛く溌剌としてしっかり者!というイメージを持っていたのですが、前半は世間になれていない若さ、お屋敷を上手く仕切っていけないことやダンバース夫人に慄く姿をしっかりと演じているので、思わず我慢、ガマンよ~、リリー!!なんて応援してしまうのですが!(^^)!夫から秘密を打ち明けられて以降の彼女は、本来の彼女の持つ溌剌さやしっかりとした強さが輝やきます。
輝きすぎてロンドンの医者の家にひとりで乗り込むという原作改変には驚きましたヨ
原作やオリジナルと違って仮面舞踏会での彼女の登場シーンが、招待客が一堂に揃った中でのことというのも、より劇的に見せる効果でしょうか。
ダンバース夫人の最期もリメイク版ならではのオリジナル設定となっていました。
ただ、“わたし”の頑張りが強くて夫マキシムの存在感が薄く(互いに心を打ち明けあって)二人で支えあっていこうとする部分が弱くなってしまったのが残念かな。
ヒッチコック版がサスペンスタッチだったのと比べると、リメイク版は“わたし”の大人への成長物語をより、強調して見せていたように感じました。


レベッカヒッチコック

こちらはオリジナルのヒッチコック版。1940年のアメリカ映画です。
何度か観ているのですが、何度観返しても見入ってしまいますね。
映像的な部分ではもちろんリメイク版に軍配が上がりますが、モノクロならではのこの怖さと言うか、ヒッチコックお得意のサスペンスタッチにゾクゾク~。
“わたし”が初めてマンダレーを訪れるシーンを雨にしたのもオリジナル版のサスペンスムードをより強く感じさせました。原作では(雨にならなくて良かった)“雨は悪意の予兆”とありますから、敢えての雨シーンにすることで、先行きの危さを漂わせています。

ヒロインを演じたのは、当時全く有名ではなかったジョーン・フォンテイン。その清楚な初々しさは“わたし”役にぴったりでした。

マキシム
マキシム役はローレンス・オリヴィエ。前年の「嵐が丘」のヒースクリフの方が私の中では輝いているのですが押しも押されぬ大スター、美男子です

こちらのダンバース夫人はジュディス・アンダーソン。一見普通っぽい見た目なのにジワジワ~~と恐い。落ち込んだ“わたし”を窓際に追い詰めるシーンの怖さときたら・・・(>_<)あと、(歩いてくるシーンとか無しに)いつのまにかヒロインの後ろに立ってる!!亡霊的な現れ方はさすが、ヒッチコックの見せ方ですネ。
驚いたのはヒッチコック版って、レベッカの死因を(原作とは)改変していたのですね・・・。映画の方を何度も観ていたのでてっきり原作もそうだった・・と勘違いしていました。
ダンバース夫人については(原作よりも)ショッキングな最期にしたのに、レベッカの死因については(批判を恐れて?)ソフトにしたのがちょっと不思議な気がしました。


さて、原作本ですが、確か「レベッカ」を読んだのは高校生の時でしたよ~。はるか昔過ぎ
あまりに昔過ぎてまるで初めて読んだかのように、この小説ってこんなに面白かったんだ~!とのめり込みました。

ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た。


この謎めいた書き出し~!!
全てが終わった今、“わたし”が回想するマンダレーの記憶から物語は始まり、マキシムとの出会い、そして忘れえぬマンダレーでの日々へと引き込まれていく。
お屋敷に今なお残るレベッカの気配が、少しづつ、少しづつ、じわじわ~~と“わたし”に影を落としていく…この辺の書き方も上手いよねぇ。

今回読み返して改めて驚いたのは、マンダレーを彩る季節ごとの花々の描写の美しさ!!
燃えるような真っ赤なツツジ、アザレア、そして五月のブルーベル♪
マンダレーの地を美しく彩る、(時にはヒロインに恐怖を感じさせる)こうした自然描写の豊かさの見事なこと。
そして、食いしん坊としては、スクランブルエッグ、ベーコンで始まる豪華な朝食や、クランペットにスコーン、バター付きパンにTea、完璧に用意されるお茶のシーン。“わたし”が全く楽しめないこうした美味しいものたちもこっそりと楽しみました!(^^)!

↑に魅力的な書き出しを載せましたが、実はこの小説、最後の一文にも唸らされてしまいます。映画を観ていたら、まさかこれで終わるとは予想もしないラスト1行、簡潔でありながら、その絵が浮かんで消えることはない。
小説ってこういうことが出来るんだ・・・と改めて感動しました。


図書館で新潮文庫の上下巻を借りましたが、巻末に恩田陸さんの解説が載せられています。これがとても面白かった!お勧めです。
  1. 映画タイトル(ら行)
  2. | trackback:0
  3. | comment:8
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comment

瞳さん、こんばんは。
私「レベッカ」のあらすじは何かで読んで知っていたものの
ヒッチコックの映画も実は見ていなくて
原作も読んでいないのです。
瞳さんの記事を拝見して、新旧作、原作、全部見て
読んでみたくなりました。
まずは新作映画から見るのがよさそうですね。
Netflixにあることに気がつかなかった!!
可憐なリリー・ジェームズ、そして
怖~いクリスティン・スコット・トーマスも見たい!!

恩田さんの解説つきの原作もよさそうですね。
私も図書館をチェックしてみます☆
  1. 2023/02/12(Sun) 23:51:36 |
  2. URL |
  3. セレンディピティ #.usTzc9U
  4. [ 編集 ]

>セレンディピティさん

こんばんは。

オリジナルとリメイク&原作本と長い記事になってしまったのに・・・読んでくださってありがとうございます(*^-^*)
オリジナルはプライムで観れたのでラッキーでした♪

Netflixのリメイク版はとにかく映像が美しいですよ~!!
クリスティン・スコット・トーマス、最後の最後まで怖かったです。
書き忘れたのですが、原作の夫人は結構泣くシーンもあって人間味を感じたのですが、リメイク版の彼女は涙も超越してる?感じでした(>_<)
信じていいんだろうか?と不安になる夫役のアーミー・ハマーも良かったです。

原作は上下巻なのですが、物語の運びがすごく上手いので途中でやめられないくらい面白かったです。
お時間ありましたら、観て(読んで)みてくださいね。

  1. 2023/02/13(Mon) 20:14:35 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

瞳さん☆
「ヒットマンズ~」が無料配信なくてこちらの「レベッカ」見ましたよ~!
最初から最後まで、ぞくぞくざわざわドキドキしちゃいました。2転3転しながら翻弄される自分が居て、いったい誰を信じたら・・・と主人公になりきって見てしまいました。
瞳さんが、主人公の”わたし”と書いていたので余計にサスペンスが盛り上がってしまいましたよ♬
途中何てホラー?って思っちゃいました。ヒッチコック版も気になります~
  1. 2023/02/13(Mon) 21:12:35 |
  2. URL |
  3. ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2
  4. [ 編集 ]

>ノルウェーまだ~むさん

こんばんは。
「ヒットマンズ~」プライムは無料配信じゃないんですよね~~。「イニシェリン島」の公開に合わせて会員特典で見せてくれたらいいのにね。
おお!!「レベッカ」ご覧になったのね、お話できて嬉しいです。
そうですよね、名前のないヒロインっていうのもドキドキするし、夫マキシムも信じていいのか?って思うし。ダンバース夫人は怖いし!(^^)!

原作でも“わたし”と書かれていて名前はないんですよ、これについてはかのアガサ・クリスティまでが作者に問い合わせた・・という話があるくらいなんですって。

「ヒッチコック」版も良かったら観てみてくださいね。
  1. 2023/02/14(Tue) 20:30:14 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

リメイク!

こんばんは。

Netflixのリメイクの「レベッカ」面白そうですね!
現代の感覚と映像でのリメイク、いつか是非見てみたいです。

私、ヒッチコック版ではジョージ・サンダースが演じてたジャックがけっこう好きなんですよね。
陰鬱な雰囲気の中で、彼がでてくるとちょっと明るくなって。
今回のジャックはどんな感じかな〜〜。

あと、原作面白そうですね。ネトフリ映画はDVD待ちになっちゃうけど、小説は近々に読みたいです。(^O^)
  1. 2023/02/15(Wed) 01:33:23 |
  2. URL |
  3. ごみつ #-
  4. [ 編集 ]

>ごみつさん

おはようございます。
リメイク「レベッカ」後半のヒロインの活躍ぶり(一人で行っちゃう!)は、まさに現代的!だと感じましたよ。
マンダレーのお屋敷や庭が見事なこと♪いっそう、もったいない~~(>_<)って思っちゃいます。

>陰鬱な雰囲気の中で、彼がでてくるとちょっと明るくなって。
そうでしたね!!
オリジナル版見返して驚いたんですよ、原作では不快な笑みって書かれてたのに、こんな明るめのキャラだったんだ!って。ごみつさんは彼、しっかり覚えてるんですね♪
リメイク版は、ジャックのキャラは原作寄りでした(>_<)

原作、ぜひぜひ~♪ものすごく久々に読みましたが、面白くて一気に読んじゃいました。





  1. 2023/02/15(Wed) 08:28:29 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

瞳さん、こんばんは。
新作レベッカ、見ましたよ~。とってもおもしろかったです。
やはりカラーということもあって、映像がすばらしく
美しかったですね。

そして、そうですね。リリーの成長物語になっていましたね。
最初は本作がもとはヒッチコックのサスペンスだということを
すっかり忘れていましたが、レベッカの秘密が明らかになる展開で
ようやくサスペンスらしくなってきました。

リリーがロンドンまで行くのは
リメイク版オリジナルの設定なのですね。
先日のアルフィーもでしたが、今の時代にあった
ヒロイン像に改変したのでしょうか。

ご紹介、ありがとうございました。
オリジナル版と原作もいずれ見て/読んでみたいです。
  1. 2023/03/05(Sun) 00:06:44 |
  2. URL |
  3. セレンディピティ #.usTzc9U
  4. [ 編集 ]

>セレンディピティさん

こんにちは。
新作レベッカ、ご覧になったんですね~♪
お話にきてくださってありがとうございます。セレンさんの感想、楽しみです。

映像、素晴らしかったですよね。マンダレーのお屋敷や庭、見惚れましたよ。

そうでしたよね!!
リリーはどちらかというとしっかり者なイメージなので、オリジナルの“わたし”よりも(最初から)芯の強さを感じるのですが、後半はそれがみごとに花開きましたね!(^^)!
ロンドンに行くのはマキシムの方なので、この改変には驚きました、
現代のヒロイン像なのでしょうね。ここでちょっとハラハラもありましたしね。

セレンさんと「レベッカ」のお話ができてとても楽しかったです。オリジナルと原作も、良かったら見て/読んでみてくださいね。

  1. 2023/03/05(Sun) 13:57:54 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

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