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Slow Dream

映画や本とのめぐり合いをひとつひとつを大切にしたい。




「猫」 :: 2008/01/13(Sun)

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「この本をもっと若いうちに読んでいれば
 結婚なんかしなかったのに。」
           都筑道夫


この帯の言葉に思わず手に取れば・・。


エミールとマルグリット、70歳を超える二人は、ともに再婚同士。
8年の結婚生活・・けれど、かれこれ4年前から二人は言葉を交わすこともない。
同じ屋根の下で暮らしながら無視しあい、互いを貶めることを最上の喜びとする・・。執念深いその駆け引きは、いつから始まったのだろう・・。
そう、それはエミールの猫が死んだ日から・・。

暖炉で薪が燃え、肘掛け椅子で編み物をする妻。
心温まる風景・・のはずが。
そこに立ち込めるたまらなく静かで重い沈黙・・。なぜならそれは筋金入りの沈黙だから。

朝の目覚めから就寝まで。二人の心にあるのはどうすれば相手を傷つけることができるのか。
その静かな・・執念深さときたら・・。

あまりの沈黙と静けさに押しつぶされそうになってくるのだけれど・・ページをめくるのはやめられない。

愛猫を妻に殺された・・と信じる夫が妻のオウムに手をかけて・・・。

猫を轢いた夫に妻が復讐する!っていう「ローズ家の戦争」っていう映画がありましたけど。
あの二人はまだまだ若く、その争いは露骨で激しいものでしたよね。

でもこの二人は違います。互いの体には決して触れることは無い、傷をつけるのは心だけ。
もっともっと深く・・もっともっと静かに・・恐い。
帯の言葉も無理ないことだわ~っと思いつつも。
でも決してこの滑稽で残酷な二人の行動。
全然理解できないわけでは・・ないところが私にとってはもっと怖い。

互いに幸せだった(と思っている)前の結婚を忘れることなく、再婚した二人。
ともに超えることが出来ない思い出を背負っていたことの悲劇なのでしょうか。
けれど。
意識し、相手のことを考え、憎む。
この行為は、イヤだったら出て行くし、お互いのことはどうでもいい・・というのとは違う。
二人が老年だということもあるのでしょうか・・。
相手を(残りの人生を過ごす上での)良き好敵手とみているような、どこか運命共同体のような二人・・といったらおかしいでしょうか。
不条理でも滑稽でも・・・何故か胸がぐっときてしまう・・ラストシーンにそんなことを思ってしまいました。


シムノンにこんな作品があったとは。
メグレ警部シリーズだけじゃないんですね。
その場の音や張り詰めた空気までもが伝わってくるかのようなこの筆力。
とても印象深く迫ってきて・・。
他の作品も読んでみたくなりました。


え?
結婚って怖いかって?

ええーー、そりゃあもう、とっても(笑)


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