
ドイツで吹き荒れるファシズムから逃れ、フランスにやってきた青年ゲオルク。
パリからマルセイユへと行き着いた彼は成り行きから、パリのホテルで自殺した亡命作家ヴァイデルに成りすますことになってしまう。
そのまま船に乗ってメキシコへ向かおうと考えた彼だが、マルセイユの街で何度もひとりの女性とすれ違う。
ミステリアスな雰囲気を漂わせる彼女、マリーこそが、ゲオルクが成りすましているヴァイデルの妻であることを知ったゲオルクは・・・・。
2018年製作/102分/G/ドイツ・フランス合作
原題:Transit
「東ベルリンから来た女」がとても良かったクリスティアン・ペッツォルト監督作品と知り、鑑賞しました。
ファシズムの嵐から逃れようとする人々・・・・えっ?でも時代は現代!?という、フィクションの世界.が舞台でした。
友人との再会から突然の逃避行・・・、主人公ゲオルクや世界の背景についても全く理解しないまま、たどり着いたのはマルセイユ・・・・。
祖国を追われ亡命先を探す難民状態の人々の姿や、思わぬ展開から作家ヴァイデル本人と間違えられたゲオルク・・・、
サスペンス歴史劇のような雰囲気に見入っていると、
マルセイユという海辺の町で何度もすれ違うゲオルクとマリーに今度は、男と女の物語の匂いに酔わされてくる~。
カフェのドアが開く音、靴音が響く・・・、黒いコート姿のマリーのなんて印象的なことか!!

予想もしていなかった、不思議な世界観を持つ作品。
どう感想を書いたらいいのかなあと難しい作品ですが、
逃れてきた場所から向かう先への、通過地点といえるマルセイユの街の魅力とそこに足止め?された人々の姿を独特の空気感で描いた、一種、チャレンジ的な作品でもあるように思いました。
途中で命を落とした友人の家族との触れ合い(ゲオルクが歌った子守唄はなんともいえない味わいでした)や、担当者との会話には、文学的な匂いも感じられますよね。
ナチス政権下のドイツから亡命した小説家アンナ・セーガースによる「トランジット」が原作になっているようです。

自ら別れを切り出し、他の男性といながらも・・・、夫の姿を探し続けるマリー。
複雑で難しいキャラクターを演じたのは「婚約者の友人」のパウラ・ベーラ。
哀愁すら感じさせて蓮っ葉な感じがしないのは、やっぱりクラシカルな雰囲気のある彼女だからこそなのかな~。
結局は、登場人物の誰もが、この中間地点から向かう先へと(さまざまな理由から)たどり着けない・・・。
このことも何か暗示的なことのように思えて、いろいろ考えてしまいます。
過去へも戻れず、未来へと進むことも出来ない人々・・・・、
まるでループしたかのような、ラストシーンのゲオルクの表情も印象的でした!!
- 映画タイトル(ま行)
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