クリスマス前のロンドンの街。
助産師アンナの勤める病院にまだ若い10代の妊婦が運び込まれた。
女児を出産後、息を引き取った少女の残した一冊の日記帳を手にしたアンナは、日記を頼りに身元を捜そうとするのだが・・・そこには恐ろしいロシアンマフィアによる人身売買の内容が描かれていた・・。
いきなりでしたねぇ・・・冒頭の床屋のシーンにショックをうけていたら。
どんどんと踏みこまれてゆくイギリスの闇の部分・・。ロシアンマフィアの実態には、やはり驚きと怖さをひしひしと感じました。
自らの辛い経験からでしょうか、女児にいとおしい視線を向けるアンナ。
母親と、いつも一言多いけれどいやいやながらも協力してくれる叔父(イヤなこと言うんだけど、どこか憎めない人物ですよね)・・と。
いたって普通の一般家庭であるアンナの家族と、かけ離れた、違う世界にあるロシアンマフィア。
けっして交わるはずのない、二つの世界・・。光と影・・というのでしょうか。不思議な気持ちになりました。
そんな中にひとり、さて・・光なのか、闇なのか・・、謎の人物なのが、ロシアンマフィアの主人の下で運転手を勤めるニコライ。
オールバックでサングラスのヴィゴが登場したときには・・あまりにぴったりとあげた髪型と大きめのグラスに思わず「つ・・鶴ちゃん!?」と心の中で叫んでしまった私ですが、いや、このニコライを演じるヴィゴの素晴らしいこと!
静かに淡々と仕事をこなし、シニカルな笑みを浮かべながらも、アンナにかける言葉に、どこかほかの人とは違うものを感じてしまう・・。
表情や、指先や・・からだ全体からニコライオーラ(?)が出てましたよね~!!
もちろん、あの話題のサウナでの全裸格闘シーンの迫力というか・・痛さというか・・。これは忘れられないものですけど、静かに立っているだけでも・・そこからただならぬ魅力が漂ってくるのでした。
マフィアのボスでありロシア料理店のオーナーを演じたアーミン・ミューラー・スタールは、穏やかな表情の下に隠した怖さが~~!!
いくらボルシチが美味でも・・近づきたくないですよ~(汗)
そして、そんな彼のひとり息子キリルを演じたヴァンサン・カッセル・・、いやはや・・彼にはやられました。
ダメダメ男に弱い私、いや、でもそんな私でもこんなにダメなのはどうだろう・・と思うほどの情けなさというか、衝動的で、激情型で、弱いのに強がったり、見栄を張ったり・・。
ヴィゴとのシーンの中で見せる、複雑な感情をあんなにも情けなく、見事に演じたカッセルに私なら助演男優賞をあげちゃうなあ。
そして、そんな闇の中に灯る明かり。ナオミ・ワッツも綺麗でした。
凛としたその表情と赤ん坊に見せる優しさ。
ロシア製のバイクの乗る姿も決まってましたね。
時折読み上げられる、少女の日記の言葉が悲しく響きます。
ロシアの地を捨てるしかなかった・・・そんな彼女たちを迎えた世界の醜さを思うと・・。
けれども、醜いだけでも決してない。
ロンドンの闇をリアルに描きながらも、一筋の光の美しさにも心打たれた作品でした。
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