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Slow Dream

縁あって・・・本や映画と巡りあう。




「ともしび」 :: 2019/10/10(Thu)

ともしび

ベルギーの小さな地方都市。
老年に差し掛かったアンナ(シャーロット・ランプリング)と夫(アンドレ・ウィルム)は、慎ましやかな暮らしをしていた。
小さなダイニングでの、煮込みだけの夕食は、いつものメニューだ。
会話こそないが、そこには数十年の時間が培った信頼があるはずだった。
しかし、次の日夫は、ある疑惑により警察に出頭し、そのまま収監される。

            <公式サイト ストーリーより>



突然の奇声と紅潮したアンナ(シャーロット・ランプリング)の表情に思わず固まってしまった冒頭から、背中を向けたラストシーンまで、
90分ほどの本編中ず~~~~~っと、シャーロット・ランプリングを追い続けた作品でした。

語らない、台詞の少ない映画は大好きですが、ここまで説明のない作品ってそうそう無い!!
出頭した夫の罪状も、
奇声を挙げていた謎のサークルも、彼女の仕事についてもなんら説明もないのだけれど、観ているうちにちょっとしたシーンなどから「どうやらこういうことらしい」と想像させられてゆく。
映像の片隅に小さな男の子の写真が見える・・・、クローズアップも何もない、本当にそっけない1シーン。
孫の誕生日に訪ねたアンナを追い返した息子の幼い日の姿。

夫が収監されてもアンナの日常はそれほど変わることはない。
演劇サークル(だよね、きっと)に通い、裕福な家庭で家政婦をつとめ、一人夕食を取り、ベッドに入る。
けれど、まるで何も変わってはいない・・・と思い込みたいような、そんなアンナの日常にもこれまでとは違うものが入り込んでくる・・・・。

こんなにも孤独を強く感じた作品ってあったかしら
追い続けたアンナの表情、その姿に、息が詰まるかのようでした。
「まぼろし」も「さざなみ」もヒロイン(シャーロット)の哀しみ、孤独を感じた作品だったけれど、ここまで・・・・すくい切れないほど深く寂しさを感じたことはありませんでした。
私が年をとったせいかもしれないけれど、きっとアンナが哀しみや寂しさを一度も口にすることがなかったせいかもしれない。
冒頭の奇声も、サークルで読み上げられる物語の台詞も、列車の中での若い女の子の怒りの声さえも・・・、
私には、発せられないアンナの心の声のように思えました。

驚いたのは、着替えのシーンがとても多かったこと。
とても、とてもゆっくりと服を着替える彼女の動きを追ってゆく・・・、プールで泳いだ後のシーンではなんと!堂々のヌードまで
(ごくごく普段当たり前にしている)こうした着替えや駅へ歩く足取り。
それは、まるでアンナという女性のこれまでと変わらないはずの日常を何度も確認しているかのようにも思えました。
そして、その日常がじわじわ~、じわじわ~~~と滲出されてゆく・・・・・。
ご飯を食べなくなった(夫の)愛犬、突然響き渡った女性の恨み声、タンスの後ろから出てきた封筒・・・・!!
封筒に入っていたらしい写真さえ!!見せてくれないのヨ、監督ったら

見事な百合の花束、どういう気持ちで買ったのかしら?
百合は花粉がとっても落ちるのよねぇ・・・・、もしかしたら、百合を買って飾ったのは初めてで(なんとなく、これまでの夫婦の暮らしに百合は想像できないような)落ちる花粉に閉口して花弁をむしり取ったのかしら・・??
などと、想像が膨らんでしまう・・・、これだから、何も説明してくれない映画が好きなのかも(笑)
黙って花弁をむしり取るアンナの不穏さにもゾクゾクっ。

観ていて息苦しくなってくるのに、それでもアンナから目が離せませんでした。最後の最後まで。
表情、その動き、背中・・・、シャーロット・ランプリングの見せるアンナという女性のあまりにもひそやかな感情。
戸惑いや回顧、哀しみや孤独、(夫との最後の面会になるかもしれないだろうシーンでの)静かな決別の思いも。
やっぱり、シャーロット・ランプリングはつくづくすごい。

ともしび2

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comment

瞳さん、こんにちは!

>もしかしたら、百合を買って飾ったのは初めてで(なんとなく、これまでの夫婦の暮らしに百合は想像できないような)落ちる花粉に閉口して花弁をむしり取ったのかしら・・??

これ、スゴイ!!
確かに!そうかもしれない、って思ったわ。
いやーー瞳さん、鋭い。

セリフが少ない分、音とかに敏感になる映画でしたよね。
息子にあんな風に冷たくされるなんて、悲しすぎるよね・・・
  1. 2019/10/12(Sat) 08:00:57 |
  2. URL |
  3. latifa #SFo5/nok
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

>latifaさん

こんばんは。台風、そちら大丈夫でしたか?
15号に続いてまた被害が出てるので心配です。


あの百合の花弁むしり?シーンは、いろいろ想像させられちゃうよね~。不穏な感じだったわ。

>これ、スゴイ!! 確かに!そうかもしれない、って思ったわ
わーーいい(*^-^*) 私自身が百合って花粉すごいなあと思ってたのでもしかしたら?と想像しましたよ。

>息子にあんな風に冷たくされるなんて、悲しすぎるよね・・・
そうよね・・(涙) 私も孫がいるのですごく気持ち分かって辛いなーーー。
父があんな風に収監されても母親にまで何故?って思うよね。
面会に行ったときにアンナの夫が「息子は許せん、お前も許すなよ」みたいなことを言ってましたよね。 それを聞いてもしかしたら、これまでにもそういう風に夫の意見に従ってきて・・、息子も父親と母親は考えも一緒だ・・みたいに思っていたんだろうか?とか、思いました。

この映画、説明がないだけにちょっとした台詞やシーンから、想像膨らみました。
  1. 2019/10/13(Sun) 23:40:39 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

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  1. 2019/10/12(Sat) 07:56:52 |
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