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Slow Dream

縁あって・・・本や映画と巡りあう。




「彼が愛したケーキ職人」 :: 2019/06/24(Mon)

彼が愛したケーキ職人

ベルリンのカフェで働くケーキ職人のトーマス(ティム・カルクオフ)。
イスラエルから出張でやって来るなじみ客のオーレン(ロイ・ミラー)といつしか恋人関係に発展していく。
オーレンには妻子がいるが、仕事でベルリンに滞在する限られた時間、ふたりは愛し合う。
ある日「また一カ月後に」と言ってエルサレムの家へ帰って行ったオーレンから連絡が途絶えてしまう。
実は交通事故で亡くなっていたのだった―。
エルサレムで夫の死亡手続きをした妻のアナト(サラ・アドラー)。
休業していたカフェを再開させ、女手ひとつで息子を育てる多忙ななか、客としてトーマスがやってくる。
職探しをしているという彼をアナトは戸惑いながらも雇うことに。次第にふたりの距離は近づいていき……

          <公式サイト ストーリーより>




※↓ 後半の展開を語っています、未見の方はご注意くださいね。


同じ男性を愛した男と女の物語。
しかも、男(ケーキ職人)は国を超え、彼が愛した妻と出会い、どんどんと接近していくのだから映画的にはいくらでも衝撃的にセンセーショナルに描けたと思うのだけれど、
なんて静かで繊細な作品だろう。
その静けさが、言葉少ない男女の表情が、二人の間に漂うかのような亡き人の思い出が・・・心に沁みて切ない。

オーレンの国へ渡り、彼が通ったプールでたたずみ(彼の水着を履いて)、彼の妻のカフェに通うトーマス。
やがて思いがけず、アナトのカフェで雇われ、2人の距離はしだいに縮まっていく・・・。
こうなると(トーマスが夫の恋人だったと)バレるのではないか・・・・とドキドキしてしまうのだけれど、
そんなハラハラする気持ちを忘れさせてしまうのが、トーマスの作るクッキーやケーキ、そして手作りのパン。

ケーキ職人

物静かな眼差し・・・、無口なトーマスは一心に粉を振るい、生地を捏ねる。
飾り気のない素朴なクッキー、デコレーションの青いアイシングがなんとも新鮮!!
アナトの息子と一緒にデコレーションしたり、キッチンでアナトと二人、生地を伸ばしたり・・・、
決して自分とオーレンのことを語ることはなく、ただ自分が出来ることで彼の家族を守りたいと思う、そんなトーマスの気持ちを彼の作るお菓子が雄弁に語るかのようでした。


カフェ

私は紅茶党だけど、この映画を観ていたらケーキには絶対カプチーノが頼みたくなるナーー。
それにしても驚いたのは、「非ユダヤ人はオーブンを使ってはいけない」(食物規定「コシェル」違反)とか、家でも肉と乳製品は分けておくとか・・・、イスラエルの常識は知らないことばかり。
「安息日」のシーンも多かったですね。

厳格な義兄に比べるとそうした慣習にあまり縛られたくないアナトだったからこそ、トーマスとの距離もどんどん近くなっていったのだと思うのだけれど、
正直、2人が愛し合ったのは驚き!
オーレンがかってトーマスに語った妻へのキスをまるでなぞるかのように彼女を抱くトーマス。
もしかしたら、トーマスは今自分がイスラエルでのオーレンになっているかのような・・・、そんな想いを抱いたかしら。
愛する人が住んだ国で、彼の愛した家族を守りながらケーキを焼いて生きていけるのならこのままでもいいのかもしれない・・・・と。
誰もが気持ちをはっきりと口にすることが無い映画なので、私の中ではどんどんと想像が膨らんでいく
(オーレンの母親も知ってたんじゃないかなあ~~と思っちゃうなぁ)

オーレンとのことがアナトの知ることとなり(発覚するきっかけとなったのがレシピのメモというところもこの映画らしい)
義兄さんから「帰れ!」と追い出されたトーマス。
初めて感情をあらわに涙するシーンが辛い。

けれど、この地で愛する人の面影を追い、彼の家族を見守り、まるで彼に同化するかのような日々はやはりずっとは続かなかった・・・。

トーマスはまたトーマス自身として、ベルリンのカフェで(オーレンが通っていたころのように)働く日々。
そんな彼をイスラエルからドイツへ渡り、そっと見つめるアナトの優しい眼差し・・・。
このラストシーンが好きだーー。
目をあわせることも、会話を交わすこともない。
最後の最後まで静かな映画が感情のひだを震わせて・・・なんともいえない余韻を残しました。


黒い森のケーキ

オーレンが笑顔で食べ、アナトがお皿まで舐めた(可愛いシーンでした)「黒い森のケーキ」、
シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテって言うんでしたっけ。
その昔、旅行先(日本です!)のホテルのカフェで頂きました。
ココアスポンジにキルシュのお酒とサクランボ、見た目よりも甘くない大人のケーキだった記憶が・・・。あぁ、また食べたい。

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comment

こんにちは

こんにちは。
余韻たっぷりのラストが素晴らしかったですね。
近ごろの映画って実話を基にしている作品が多いせいもあれますが、結論を出さねばならない!という感じのものが多い中で、この終わり方はとても好きなものでした。
ユダヤ教の戒律はこの作品で初めて知ったものも多く、興味深かったです。
  1. 2019/06/26(Wed) 12:58:55 |
  2. URL |
  3. ここなつ #/qX1gsKM
  4. [ 編集 ]

>ここなつさん

こんにちは。
コメント、TBありがとうございます。

そうでしたね!!観ているこちらにいろんな思いや余韻を残すラストシーンでした。
これから彼らがどうなるのか、何も語られませんが・・・いろいろ想像してしまいます。
2人が幸せになりますように~~~、そう願うばかりです。

ユダヤの戒律!!あんなにいろいろあるんですね!!
そして、「よりによってドイツ人!!」という言葉にも人々の中に残るものを感じますね。
  1. 2019/06/27(Thu) 14:35:46 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

瞳さん、こんにちは!
これ、瞳さんちで、知って気になって見て見たの。
いやーーー良かった。
なんだろ・・・ なんか好きな雰囲気だったのよね。
同時に6本まとめてレンタルしてるんだけど、これ、余韻があるというか、なんというか・・・
まだ感想書いてないんだけど、語りたくて、コメント残しちゃいました。

そうそう、お母さん、知ってたよね。私も思った。
多分私の想像では、彼は幼い頃からゲイだったんだと思う。でも子供が欲しくて、家族が欲しくて、無理して結婚はしたんだろうなーと。
お母さんが知ってたのは、何故なのか解らないけど、こっそり話していたのか・・・ それとも母の鋭いカンなのか・・・。

>サム・ワーシントン
そうそう!その人でした^^
  1. 2020/04/08(Wed) 15:37:52 |
  2. URL |
  3. latifa #SFo5/nok
  4. [ 編集 ]

>latifaさん

こんにちは。
わ~、嬉しい。私もこの作品の雰囲気、すごく好き。
あまり語らない主人公に、いろんな想像が膨らんだし、ラストも余韻がありましたよね~。

やっぱりお母さん、知ってたよね!!
その部分もはっきり見せないで想像させるのよね。
母親って子どもが隠していることも、分かるところがあるからなぁ~~って思いましたよ。

6本!!おお、すごい。
他に何を借りてるのかな。感想楽しみにしていますネ。
後で伺うわ~♪
  1. 2020/04/10(Fri) 14:40:48 |
  2. URL |
  3. 瞳 #-
  4. [ 編集 ]

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愛とは…。染み渡る切なさ。切な過ぎる。それは判っている。悪いのは全て、2つの愛の間を行き来して、死んでしまった男なのだと。いつもの調子の私なら、生きている者に悔恨だけ残して死んでしまったその男が全面的に悪いのだから、なんだかねー、などと言い、鼻白んでいたかもしれない。所詮は振り回されていただけじゃん、いい加減見限れよ、とかなんとか。だが、本作は…本作は何故か心に染み込んで仕方がない。セリフが...
  1. 2019/06/26(Wed) 13:00:36 |
  2. ここなつ映画レビュー

「彼が愛したケーキ職人」感想

余韻の残る映画でした。4つ★ちょい。
  1. 2020/04/09(Thu) 11:10:20 |
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